『ホグワーツ・レガシー』MOD対応で狭まるグレーゾーン 業界は“変革”の時を迎えるのか?

『ホグワーツ・レガシー』MOD対応で業界は“変革”へ?

 1月31日、『ホグワーツ・レガシー』PC版に向け、大型の無料アップデートが実施された。

 本稿では、今回のパッチに盛り込まれた公式によるMODの導入サポートへとフォーカス。同要素の過去・現在を踏まえながら、未来について考えていく。

1800年代のホグワーツをめぐるオープンワールド・アクションRPG『ホグワーツ・レガシー』

『ホグワーツ・レガシー』 公式 ローンチトレーラー

 『ホグワーツ・レガシー』は、ワーナー・ブラザースが開発/発売を手掛けるオープンワールド型のアクションRPGだ。舞台は、「ハリー・ポッター」シリーズの時代から100年も時間を巻き戻した1800年代のホグワーツ。プレイヤーは、ホグワーツ魔法魔術学校に通う生徒の1人となり、魔法界の運命を決定づける、闇の魔法使いとの戦いへと身を投じていく。

 特徴となっているのは、独創的な世界観と自由なキャラメイキング。あらかじめ用意された登場人物として物語を見つめるのではなく、ロールプレイによって自分自身がホグワーツの世界に入り込むという体験が、「ハリー・ポッター」シリーズのファンを中心に広く支持され、一躍人気のタイトルとなった。そのような好評も影響してか、2023年2月の発売当初は、PC(Steam)、PlayStation 5、Xbox Series X|Sといった現行のハイエンド機向けにのみ展開されていたが、その後、同年5月にはPlayStation 4、Xbox Oneへ、さらに同年11月には、Nintendo Switchへと移植されている。

 このたび配信されたパッチには、不具合の修正やレイトレーシング関連の機能拡張、MODに対するサポートなどが盛り込まれた。同作に大規模なアップデートが施されるのは、2024年7月以来、約半年ぶりのこと。興味深い内容となったことから、にわかに話題を集めている現状だ。

“グレーゾーン”にメスを入れた『ホグワーツ・レガシー』の最新アップデート

 PCでのゲームプレイが一般化しつつある昨今、MODの存在は、プラットフォーム選びの重要な基準となっている。MODとは、「修正」を意味する英単語「modification」を省略した言葉で、ゲームの界隈では特に、メーカーではない第三者によって製作/提供されている改変データを指す。もっとも有名なのは、『Minecraft』で利用されているものだろうか。同作では、システムの変更やアイテム/環境要素の追加など、プレイヤーに新たな体験をもたらすさまざまな機能が第三者によって提供されており、ことPC版のプレイにおいては、同要素の導入がなかば前提とされている節もある。

【ガーデン アウェイケンズ】 公式トレーラー

 とはいえ、ここまでを読んでわかるとおり、MODは非公式に製作された拡張要素である。現状、見て見ぬふりをされることが多いものの、ルール上は極めて黒に近いグレーであると言えるだろう。紹介した『Minecraft』に関しては、「改変データの販売、それを含むパッケージ化をしなければ、何をしても構わない」と公式にアナウンスされているが、全体を見れば、あえて言及していないケースが少なくないことも念頭に置いておかなければならない。文字どおり、“暗黙の了解”として浸透しているのが、MODという要素である。

 その意味において、『ホグワーツ・レガシー』の最新パッチに盛り込まれた、MODの導入サポートは、異例の対応であると言える。同タイトルではこれまで、髪型や服装、装飾品から、本編に含まれないクエスト、ダンジョンに至るまで、さまざまな要素が有志によって提供されてきた。従来は、個々のプレイヤーが必要なものを個別に探し出し、インストールしなければならなかったが、今回の対応によって、メニュー画面から簡単に導入できるようになった。ワーナー・ブラザースはおそらく、暗黙の了解となっていたMODを公式化することで、より良い体験をプレイヤーに届けようと考えたのだろう。SNSには、ファンからの好意的な声が多く寄せられている。

求められる安定性。業界動向に一石を投じる対応となるか

『ホグワーツ・レガシー』PC版MODの無料アップデートは今すぐご利用できます!

 公式によるMODの導入サポートは、今後のゲーム業界で定着に向かうだろうか。過去を振り返ると、ベセスダ・ソフトワークスが『The Elder Scrolls V: Skyrim』や『Fallout 4』などの人気作品を対象に、同様の対応を行った例がある。しかしながら、両作では最適化不足に起因するとみられる障害が発生。重大なログインエラーを引き起こしたことで、結果的にプレイヤーの体験が悪化してしまう事態となった。ネット上には、今回の『ホグワーツ・レガシー』の対応を、ベセスダ・ソフトワークスの例と比較する声もある。残念なことに、現時点では、同タイトルもソフトがクラッシュするなどの報告が一部で挙がっている。浸透のためには、少なくとも非公式と同等に利用できるだけの安定性が求められることになりそうだ。

 もしそのようなクオリティを担保できるのであれば、公式によるMODの導入サポートは、一般化に向かうのかもしれない。その先に、PC版だけでなく、CS版でもMODが利用できる未来もあるのではないか。そうなれば、プラットフォーム選びにおける現状の基準は、変化の時を迎えることになる。

 はたして『ホグワーツ・レガシー』の異例の対応は、業界動向に一石を投じるものとなるか。良い意味での前例となることを期待したい。

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