横浜流星が背負う傷…母親との過去が明らかに『わかっていても the shapes of love』最終話

『わかっていても the shapes of love』最終話

#8 永遠なんてないとわかっていても

 漣のなかにある「永遠なんてない」という強い影は、遡ると母・美月(霧島れいか)との関係性から生まれていた。漣は小さいころからなにをするにしても1番だったという。しかし、本当に1番になりたかったのは、美月にとって「1番大切な存在」だ。

 美月は、世界中で公演を行なっているコンテンポラリーダンサー。漣が幼いころにはすでにシングルマザーとなっていたが、直情的な性格は変わらず、仕事を愛し、パートナーとの恋愛にも情熱を注いできた。そんな母親に振り向いてほしくて、漣はどんなことでも1番になろうと取り組んできたのかもしれないと思うと、胸が詰まる。

 一方で、慕ってくれる千輝の1番にはなってあげることもできなかったという歯がゆさも。どんなに望んでも、どんなに努力しようとも、決して思い通りになんてならない領域がある。そんな不安定な感情に振り回され、そのたびに心をすり減らしていくくらいなら、最初から真剣に求めなければいい。そうして漣の「誰とも深い仲にならない」スタイルが確立していったのだった。

 もちろん、漣にとってそれがなにかに蓋をしている状況であるということはわかっていた。けれど、それ以上に傷つくことを恐れていたのだ。どんなに振り向いてほしいと願っても、叶わなかったときの絶望が、それほど大きく彼のなかに心に穴をあけたということ。その穴を悟られまいと小器用に振る舞い、自分になにが求められているのかを察して過不足なく提供していく、そんなテクニックばかりがうまくなってしまった。

 そんな漣の限界を見透かしていたのが、恩師の善一(村上淳)だ。漣の才能が評価されているのを喜ぶ一方で、どこか感情を失ったような最近の様子が気になっていた。そんな矢先に、千輝のことが重なったのだ。幼少期から漣を見つめてきた善一ならいま、漣が越えがたい大きな壁に直面していることがなにも言わずともわかったのだろう。

 全力で漣の創作を求めてくれた千輝がいなくなり、なんのために創るのかが見えなくなった漣に、善一は「モノを創るって、いまそこにある感情に形を与えて、ずっと残しておきたいって欲求」だと伝える。みんないつかは消えてなくなる。形あるものはすべて。

 でも、だからこそ「永遠にとどめておきたい」と願ってやまない感情がある。自分を信じて突き進む覚悟。理性のブレーキが壊れてしまうほどの渇望。とにかくそばにいたいという願い。手のひらからこぼれ落ちるように見送ることになった命……。ずっと忘れたくない。決してなかったことにはしたくない。だからこそ、形にせずにはいられない。それが創る理由になるのだと。

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