確保、収容、保護――『CONTROL』などに影響を与えた、超常現象を保存するインターネット発の創作サイト「SCP財団」

インターネット発の創作サイト「SCP財団」とは

 多種多様な販売形態の登場により、構造や文脈が複雑化し、より多くのユーザーを楽しませるようになってきたデジタルゲーム。本連載では、そんなゲームの下地になった作品・伝承・神話・出来事などを追いかけ、多角的な視点からゲームを掘り下げようという企画だ。

 企画の性質上、ゲームのストーリーや設定に関するネタバレが登場する可能性があるので、その点はご了承願いたい。

 第13回は『CONTROL』『Lobotomy Corporation』などの元ネタとなった「SCP財団」について紐解いていく。

『CONTROL(コントロール)』 日本オリジナルトレーラー

SCP財団とは?

 SCP財団とは、特定の設定を共有した創作物を閲覧・投稿・編集できるネット上にあるコミュニティサイトだ。異常な物品、存在、現象を封じて抑え込むことを任務とし、世界各国の政府から依頼されているという設定であり、その手の異常なもの(アノマリー)をどう扱うべきかという架空の報告書が、ユーザーたちの手によって書かれ続け、『SCP – Containment Breach』という作品も作られている。

SCP財団:http://scp-jp.wikidot.com/

 これはもともと4chanという海外のネット掲示板に書かれた「クリーピーパスタ」に端を発する。クリーピーパスタとは、ネット上のあちこちにコピー・アンド・ペーストされて広まる怪談のことで、読んだ人を怖がらせるのを目的とした創作物だ。ちょうど一時の2chで流行った「コピペ」や「ネットロア」といったものに近い性格をしている。詳しくない方でも「スレンダーマン」は耳にしたことがあるかもしれない。

 世界観の共有という意味合いでは、第2回で取り上げた「クトゥルフ神話」に近しいものを感じるが、SCP財団は作家でなくとも誰でも投稿することができるのが面白い点だ(そもそも生まれた時代が100年ほどズレているが)。

『Bloodborne』から見る「クトゥルフ神話」 数ある“美味しいフレーズ”の排除が生んだオリジナリティ

本連載「ゲームの元ネタを巡る旅」では、そんなゲームの下地になった作品・伝承・神話・出来事などを追いかけ、多角的な視点からゲームを…

 投稿された作品は、投票によって審査され、あまりに否定的な評価が集まった場合は削除されることもある。また、投稿された作品から派生した孫作品なども生まれているため、サイトを巡っているだけでも時間が経つのを忘れてしまうほど楽しい。

 では、導入ということで、ここで2つほど有名な作品を紹介しよう。

SCP-096(通称:シャイガイ)

 2メートル以上の高身長。栄養失調を疑うほど痩身で、腕が異様に長いSCP。いつもは壁の横をうろうろしているだけだが、ひとたびその“顔”を見つめられると、叫び、泣き、支離滅裂なことを叫び始める。そうして凄まじい速度で顔を見た存在を追い詰め、殺してしまうのだ。恥ずかしがり屋にもほどがある……。

 彼から十分離れたところで写真を見ても、顔を見たという判定を踏んでしまうのだが、絵を見る分には問題がないらしい。

SCP-096:http://scp-jp.wikidot.com/scp-096

SCP-871(通称:景気のいいケーキ)

 食べないと倍々に増えていくケーキである。それだけだ。ドラえもんのひみつ道具「バイバイン」を思い出すSCPである。しかしながら、何もしないと80日で地球がこいつによって埋もれてしまうため、職員は必死になって食べる必要がある。SCP財団にはこういった変化球のホラーや、毛色の違った作品も数多く投稿されている。

SCP-871:http://scp-jp.wikidot.com/scp-871

 続いて、SCP財団の影響が特に強いゲームを2本紹介しよう。

『CONTROL』

 ジェシーという女性が、ニューヨークにある連邦操作局(Federal Bureau of Control)という組織を訪れ、狂った次元とおかしな現象に巻き込まれていくゲームだ。製作したのは「Alan Wake」シリーズでおなじみのフィンランドのディベロッパー、レメディー・エンターテインメント。

 基本的にはオーソドックスなスタイルのTPSだが、物を弾き飛ばす能力や、ヒスという異常な生命体の生態を調べる能力など、主人公も超常現象に目覚め、それを利用していくのがウリのゲームである。

 連邦操作局のあるオールデスト・ハウスという建物を歪めているのは、パワーオブジェクトという物体だ。パワーオブジェクトにまつわるロア(ゲーム内文章)がなかなか面白く、たとえば核ミサイルの発射コードが記録されたデカいフロッピーディスクであるとか、とあるモーテルに据えられていたダイヤル式の赤い電話機であるとか、そういった見たことのある(しかし少しレトロで、曰くありげな)物品に、超常的な力が込められているのだ。

 至るところで拾えるロアは、部分的に黒塗りがされており、そのあたりも非常にSCP財団を意識しているのが伺える。

『Lobotomy Corporation』

 Project Moonという韓国のスタジオが発売しているモンスター管理シミュレーションゲーム。本作は『Library Of Ruina』『Limbus Company』と世界観を共有している作品である。

 Lobotomy Corporationは、アブノーマリティという異常存在を収容し、彼らに作業をさせることでエンケファリンという物質を抽出している電力会社だ。とんでもない効率でエネルギーを作り出してくれる反面、アブノーマリティたちは危険極まりなく、特定の作業工程を踏まないと怒り出して脱走してしまう。鎮圧のために何人もの職員を犠牲に出しながら、今日も究極のブラック労働を続けるのだ……。

 施設の管理AIに倫理観を壊されながらも、主人公はどうにか作業指示を出し続け、綱渡りでアブノーマリティたちの機嫌を取っていく。すると徐々に施設の全貌や、彼らの陰謀の正体が見え隠れし始めて……といったストーリーである。

 それぞれのアブノーマリティの管理難易度がクラス分けされているあたりなどに、SCP財団からの影響を感じられる。

 あっちのアブノーマリティを怒らせないようにすると、こっちのアブノーマリティがおかんむり……といった具合で、筆者が遊んだなかでもぶっちぎりで難しい管理シミュレーションゲームである。一度挑戦してみてはいかがだろうか。

黄金変成、不老不死、世界の完成――「アトリエ」や「ウィッチャー」シリーズを彩る“錬金術”とは

多種多様な販売形態の登場により、構造や文脈が複雑化し、より多くのユーザーを楽しませるようになってきたデジタルゲーム。本連載では、…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる