アヒル探偵が“消えたサラミ”を追う! 良質な短編ミステリーADV『Duck Detective: The Secret Salami』レビュー
Happy Broccoli Gamesというとてもかわいらしい名前のディベロッパーが送る『Duck Detective: The Secret Salami』は、2時間程度で終わる短編ミステリーアドベンチャーだ。
アヒルの私立探偵であるユージン・マクワックリンは、通称ダック・ディテクティブ。世の中のあらゆる事件を解き明かしてきた凄腕だ。彼を操作して、とあるバス会社で起きたサラミ消失事件を追い掛けよう。
海外ではすでに高評価を受けていた本作だが、このたび『ボルカルス』『ペーパーテイルズ』などで知られるボードゲームデザイナーである上杉真人氏が日本語化MODを用意してくれた。そちらをありがたく使用させていただきつつ、本作を遊んだ感想を述べていこう。
消えたサラミはいずこ? 2時間で終わる良質なミステリー体験
上述したとおり、主人公はダック・ディテクティブ。凄腕の探偵だが、案の定素寒貧で、パン一切れ買うにも困っている始末。とうとう妻にも逃げられてしまったようだ。
まずは身の回りに起きたことを整理するチュートリアルパートが始まる。本作は推理アドベンチャーであり、周囲を巡って手に入れた情報を、メモにまとめていくことでゲームが進行する。メモには推理の大枠が書かれており、そこに手に入れた情報を当てはめていくのだ。この点は『Return of the Obra Dinn』や『The Case of the Golden Idol』に近い。
自分で自分用のパンを買って金がなくなった……というあまりにも寂しすぎる結論に至った直後、ダック・ディテクティブに電話が入る。どうやら事件のようだ。
到着した先はベアバスというバス会社。どうやらここでとある従業員のランチであるサラミが盗まれてしまったらしい。ダック・ディテクティブは早速犯人を捜すことにした。
本作はいわゆるコージーミステリーというもので、殺人はおろか出血描写すらない。その手の表現が苦手な人でも安心して楽しめるだろう。
しかし、コージーミステリーだからといって単純なわけではない。舞台はバス会社の小さなオフィスだけだが、そこにはなかなか濃密な人間関係があり、ランチの盗難事件は思わぬ方向に発展する。全体が見えたとき、面白いミステリー小説を読んだようなさっぱりした気持ちが味わえることだろう。
また、キャラクターたちにも非常に愛着が沸いた。ボロボロのトレンチコートと悲壮感をまとう主人公ダック・ディテクティブはもちろんのこと、エナジードリンクでワンオペ業務を支えているローラや、誕生日を祝ってもらえなかったことを根に持っているソフィー、探偵オタクだが仕事はからっきしのフレディなど、とてもわかりやすいが、ゆえにひと目見たら好きになるようなキャラクターばかりだ。
グラフィックも「ペーパーマリオ」シリーズを意識したようなパリパリした質感なのが、かわいい。
(まったく役に立たないどころか)おそらく事実と反する謎のロード画面のTIPSもクセになる。たった2時間で終わるゲームなので、気になったらぜひとも遊んでみてほしい。若干、日本語のニュアンスが伝わり切らなかった部分もあったが、そこまで詰まることはないだろう。『Duck Detective: The Secret Salami』、オススメだ。
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