「Amazon発のゲームは撤退続き」の流れを変えられるか 健闘するMMORPG『スローン・アンド・リバティ』に高まる期待感
Amazon Gamesは10月2日、『THRONE AND LIBERTY』(以下、『スローン・アンド・リバティ』をリリースした。
Amazon発の作品として発表時から話題を集めてきた同タイトルは、撤退続きの流れを変え、成功を手にできるだろうか。
NCSOFTとAmazon Gamesによる本格MMORPG
『スローン・アンド・リバティ』は、「リネージュ」シリーズや『ブレイドアンドソウル』などで知られる韓国・NCSOFTと、Amazonのコンピューターゲーム開発部門・Amazon Gamesがタッグを組んで送り出す、完全新作のMMORPGだ。プレイヤーは、広大なオープンワールド・ソリシウムを舞台に、仲間たちと協力し、悪の脅威である征服の亡者・カザールを倒すための冒険へと出かけていく。
特徴となっているのは、装備する武器によって使用キャラクターの役割が決まるクラスフリーシステム。ゲーム内には、剣と盾、両手剣、長弓、弩、ワンドと魔導書、杖、短剣といったさまざまな装備品が登場し、それぞれに独自の戦闘スタイルを持っている。これらのなかから自身に合ったひとつを選択し、攻城戦やダンジョン、税金輸送といったコンテンツへと挑んでいくことが同タイトルのゲーム性だ。
基本プレイ無料・アイテム課金型となっており、PC(Steam)、PlayStation 5、Xbox Series X|Sに対応する。各プラットフォームでは、ゲーム内通貨と限定特典をセットにした追加特別パックも展開されている。
ユーザーの7割が高評価。20~30万の同接を維持し、大健闘と言えるスタートに
世界的な大企業・Amazonによるタイトルということもあり、かねてから注目を集めてきた『スローン・アンド・リバティ』。リリースから2週間ほどが経過し、各ストアにはプレイヤーの声が集まりつつある。
Steamプラットフォームでは、4万件弱のユーザーレビューのうち、67%が「好評」とし、9段階あるランクのうちのちょうど中央にあたる「賛否両論」へと分類されている。一見すると、芳しくない評価のようにも映るが、好評の割合があと3%上昇すれば、ひとつ上のランクである「やや好評」の範囲となる。そのため、実際のところは“悪くない評価”とするのが適切だろう。
また、プレイヤー人口の観点では、リリース直後に30万超の同時接続数を獲得。現在もピークタイムには20〜30万のユーザーがアクティブとなっている。サービスの開始から2週間以上が経過してもなお、人口が著しく減少している様子は見受けられない。並み居る人気タイトルと肩を並べ、いまだ上位10傑に名を連ねていることを考えても、大健闘と言えるスタートになったのではないか。
こうした実態を鑑みるかぎり、『スローン・アンド・リバティ』が一定水準以上、少なくとも及第点と言えるクオリティを持ち合わせたタイトルであることは間違いない。今後、どのような推移をたどるのか。目が離せない状況にある。
Amazon Gamesの撤退続きの流れを変え、成功を手にできるか
2012年に設立されたAmazon Gamesはこれまで、母体の巨大な資金力を背景に、いくつかのタイトルを世に送り出そうとしてきた。しかし、その大半は道半ばでの撤退を余儀なくされている。古代ローマを舞台にしたMOBA『Breakaway』(2018年3月に開発中止)や、Twitchを活用した視聴者参加型の多人数シューティング『Crucible』(リリースから5か月でサービス終了)などはその一例だ。当初、中心メンバーとして参画したキム・スウィフト氏、クリント・ホッキング氏も同部門を離れ、2018年には大規模なレイオフも行われた。
直近では、上述の2タイトルとともに発表されたサバイバルMMORPG『New World』がサービス開始を迎え、リリース直後には90万以上の同時接続数を獲得したが、その後は右肩下がりの推移をたどっている。『スローン・アンド・リバティ』と同等の評価を集めてはいるものの、事前の注目度どおりの経過であるかと言われれば、首肯しづらい現状がある。
その意味においても、『スローン・アンド・リバティ』は、Amazon Gamesにとっての試金石となっていくのではないか。先にも述べたとおり、現時点では評価、プレイヤー人口の両面で、一定の成果を出している。同社の代表作となれるかは、今後数か月の動向にかかっていると言えるだろう。
また、2024年10月15日には、『New World』に大型アップデートが施され、名称が『New World: Aeternum』へと変更になった。こうした動向が同タイトルの復権への起爆剤となるのかにも注目が集まっている。
両タイトルのあいだには、MMORPGであるという共通項がある一方で、『スローン・アンド・リバティ』が外部開発のライブサービスゲーム、『New World: Aeternum』が自社開発の買い切りパッケージという相違点も存在している。どちらがよりマーケットにインパクトを残せるのか。結果如何によっては、Amazon Gamesの今後の方針にも大きく影響してくるだろう。
当たれば大きいMMORPGのジャンルだが、マーケットはレッドオーシャンと言える状況にある。このことは裏を返せば、偉大な先達からさまざまな点を学べるということでもある。『スローン・アンド・リバティ』は現在の勢いを維持し、マーケット/カルチャーに爪痕を残せるか。今後の動向に注目したい。
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