リメイク版『ロマサガ2』に感じた“成功例”の息吹 現代のリメイクに求められる要素とは

リメイク版『ロマサガ2』に感じた“成功例”の息吹

 9月19日、『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』(以下、『リベンジオブザセブン』)の無料体験版が各プラットフォームで配信開始となった。

 人気シリーズ第2作の満を持してのフルリメイクとして大きな注目を浴びる同タイトル。本稿では、体験版のプレイから受け取ったインプレッションをもとに、成功の可能性を考えていく。

「ひらめきシステム」を初実装したシリーズ第2作のフルリメイク版が登場

『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』アナウンスメントトレーラー

 『リベンジオブザセブン』は、「ロマンシング サ・ガ」シリーズのナンバリング第2作『ロマンシング サ・ガ2』を現行機に復刻したリメイクタイトルだ。プレイヤーはバレンヌ帝国の皇帝として、自らの能力を次の世代へと受け継ぎながら、伝説の七英雄との数千年にわたる戦いに身を投じていく。

 オリジナル版が発売されたのは、1993年のこと。当時はRPGの全盛期とも言える時代で、その前後には「ファイナルファンタジー」シリーズの第4作~第6作や「聖剣伝説」シリーズの第1作~第3作、『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』『真・女神転生』『真・女神転生II』『ブレス オブ ファイア 竜の戦士』『クロノ・トリガー』『テイルズ オブ ファンタジア』『スターオーシャン』『スーパーマリオRPG』といった、現代にもその名を轟かせるジャンルの名作たちが、おなじスーパーファミコンから誕生している。

 そのようななかにあって、『ロマンシング サ・ガ2』が画期的だったのは、「ひらめきシステム」を発明したことだろう。従来のRPGでは、レベルアップなどの決まったタイミングで新たなスキルを覚えるのが一般的だったが、同作では、バトルでキャラクターが行動する際に、適性や敵の強さといったマスキングデータを参照し、突然かつランダムにスキルを思いつく仕組みを採用している。同要素はその後、シリーズを代表するシステムとなった。もちろん『リベンジオブザセブン』にも同様に受け継がれている。

 公式サイトによると、同タイトルでは、バトルシステム、成長システムを再構築し、難易度設定など、初めての人でも遊びやすいような追加要素を盛り込んでいるとのこと。選択や行動が歴史に影響を与える「フリーシナリオ」システムも健在で、プレイヤーの数だけ異なる体験が楽しめるという。

 『リベンジオブザセブン』は2024年10月24日発売予定。対応プラットフォームは、PlayStation 4/PlayStation 5、Nintendo Switch、PC(Steam)となっている。価格はパッケージ/ダウンロード通常版が6,820円、フィギュアやサウンドトラック、復刻版攻略本を同梱したパッケージ・コレクターズエディションが22,000円(ともに税込)。ゲーム史にその名を刻むRPGの金字塔がまたひとつ、現代によみがえる。

現代のリメイクタイトルに求められるものとは?

『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』TGS2024 トレーラー

 今回の体験版の配信にともない、プロデューサーの田付信一氏はSteamプラットフォームのストアページにて、簡単なインタビューに応じている。同氏はリメイク版に含まれる新要素について、「七英雄の昔のエピソード」「連携で戦略性が増したバトルシステム」「アビリティで幅が広がった成長要素」「新クラス・新陣形・技術」「パワーアップした都市開発・武器開発」「帝国大学試験やせんせい探しのようなミニゲーム」「3つの難易度選択」「フルボイスになったイベントシーン」「オリジナルとアレンジが選択できるBGM」などが挙げられると語った。

 シリーズをプレイした経験がないフリークにとって一連の作品は、特にシステム面において複雑な構造を持ち、初心者に優しくない、コアなファン向けというイメージがあるのではないだろうか。田付氏の発言もまた、前半部分については、そうした先入観を強めるものだったように思う。

 一方で、同氏は他の設問で「ほかのシリーズ作品とは物語や世界観のつながりがないこと」「今作では、チュートリアルの充実、難易度の選択要素を盛り込んだこと」に触れ、シリーズ初体験でも気軽にプレイしやすく、誰でも楽しめると説明した。このようなアプローチは「ロマンシング サガ」シリーズにとって、間口を広げていくことにもつながる可能性がある。

 実際に体験版をプレイしてみると、そのインプレッションは田付氏の話すとおりであると感じた。同タイトルの難易度には、ストーリーを楽しみたい層向けの「カジュアル」、RPGに慣れている層向けの「ノーマル」、原作に準拠した「オリジナル」の3つが用意されている。私は中間の「ノーマル」で遊んだが、シリーズから連想されるような過当な難しさ・複雑さは存在していなかった。この程度であれば、RPG慣れしていない、もしくはシリーズ初挑戦のプレイヤーであっても、十分に楽しむことができるのではないだろうか。その意味において『リベンジオブザセブン』は、時勢に応じた現代的なリメイクであるとも言えるだろう。

 開発/発売を手掛けるスクウェア・エニックスは近年、人気RPGの復刻に力を入れている。『ロマンシング サ・ガ2』の前後に誕生したと紹介した上述の名作たちのうち、同社が手掛けたものはすべて、現行機を中心にリメイクやリマスター、移植といった形で生まれ変わっている。直近では『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のHD-2Dリメイク版も話題を集める。特にRPGジャンルにおいて、スクウェア・エニックスが最も注力するのが、往年の人気作品の復刻と言っても過言ではないかもしれない。『リベンジオブザセブン』の開発/発売もまた、同社にとってはその延長線上にある取り組みだ。

 一方で、そのように生まれ変わった作品たちのすべてが、期待どおりの評価を獲得できたかと言われれば、一括りに認めることはできない実態もある。「ロマンシング サ・ガ」シリーズのファンが『リベンジオブザセブン』に思うのは、「同タイトルが成功作と失敗作のどちらに類するものとなるのか」だろう。スクウェア・エニックスの経験が生かされたリメイクとなれば、意義深い復刻となるのは間違いない。そこには開発チームの原作に対するリスペクトや理解も大きく影響してくるはずだ。

『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』ファイナルトレーラー

 私はこれまで、スクウェア・エニックスの数々の復刻作品をプレイしてきたが、その経験に基づくと、『リベンジオブザセブン』のインプレッションは、『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』や『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』のそれに似ているように感じた。言わずもがなだが、両作品はどちらも同社が手掛けた復刻の成功例として名高い。原作の手触りをそのままに、映像や音楽、UIを現代風に作り直した丁寧なリメイクは、シリーズ/作品のファンが求めている形そのものだった。

 実は前者は、『リベンジオブザセブン』を手掛ける田付氏率いるチームが開発を手掛けている。同タイトルに盛り込まれた原作への理解やリスペクト、遊びやすさへの工夫は、田付氏ならではのアプローチとも言えるのかもしれない。

 『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』に続くシリーズの復刻作品として、さらには往年の名作『ロマンシング サ・ガ2』の満を持してのフルリメイクとして、是が非でも成功を手にしたい『リベンジオブザセブン』。今回配信となった体験版には、大きな期待を感じさせられた。同タイトルの発売までは、あと1か月ほど。2024年を代表するリメイクのひとつが今ここに誕生しつつある。

ロマサガ×佐賀県『ロマンシング佐賀TOKYO』開催 市川雅統氏「本当に多くのみなさんに助けられてきた」

佐賀県とスクウェア・エニックスの「サガ」シリーズとの連携事業である「ロマンシング佐賀」が今年10周年を迎えたことを記念して、10…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる