苦手部分を的確に克服! ASUSの進化した小型ゲーミングPC『ROG Ally X』

ASUSの型ゲーミングPC『ROG Ally X』

 ASUSから、ハンドヘルド型のゲーミングPC『ROG Ally X(RC72LA-Z1E24G1T)』が登場した。価格は13万9800円、7月より発売中だ。

 本機は2023年6月に発売された『ROG Ally』の改良版となっている。デザインはほとんど変わらず、メモリ(RAM)やバッテリー容量といった内面の性能は大きく向上。確実なパワーアップを遂げた一台だ。

 筆者は『ROG Ally』もレビューしており、製品のコンセプトや特徴などは<a href="https://realsound.jp/tech/2023/06/post-1347092.html">そちらの記事</a>も参考にしてもらいたい。本記事では『ROG Ally』と『ROG Ally X』の違いにも触れつつ、その仕上がりを確かめていく。

待望のブラックカラーをまとって


 外箱のデザインは『ROG Ally』が白色だったのに対して、こちらは黒色。その理由は…。

 本体カラーも白色から黒色に変化しているからだ。同梱物は本体の他に、マニュアル、充電アダプター、紙製の簡易スタンド。


 こちらが『ROG Ally X』。7インチのフルHDディスプレイにWIndows OS 11を搭載したハンドヘルド型のPCで、『Steam DECK』や『AYANEO 2』、『ONEPLAYER』などが競合となる。


 ゲーム機のようなサイズ感だが、この通りWindowsベースでブラウザやYouTubeなども起動する。タッチ操作が可能で、なおかつ左右にスティックを使ってカーソルを動かすことも可能。ソフトウェアキーボードで文字入力もできるし、ワイヤレスでマウスやキーボードをつなぐことも可能だ。

   
 専用のソフトウェアからは様々なゲームプラットフォームへアクセスが可能。定番のSteamはもちろん、Epic GamesやXbox Cloud Gamingなどにも対応している。ゲームをインストールするとライブラリに追加され、ゲームごとにキーパッドのアサインなども設定が可能だ。

『ROG Ally』の弱点をすっかり克服

前モデルの『ROG Ally』と、本機『ROG Ally X』は、極めて似たスペックをしている。性能に直結する変更点は以下の通りだ。

■CPU
Ally…Ryzen Z1とRyzen Z1 Extremeで選択可能
Ally X…Ryzen Z1 Extremeモデルのみ

■メモリとストレージ
Ally…メモリ16GB(LPDDR5-6400)、ストレージ512GB
Ally X…24GB(LPDDR5-7500)、ストレージ1TB

■バッテリー容量
Ally…40Wh
Ally X…80Wh

■重量
Ally…608g
Ally X…678g

要約すると、『ROG Ally』のRAMとストレージとバッテリー容量を増大させたのが『ROG Ally X』だ。他にもハードウェア面での細かな変更があるため、紹介していこう。

 Type-C端子の数が1口から2口に増加した。左側の端子はPD充電対応のUSB4となり、最大100Wでの給電が可能。これに伴い、前モデルで外部GPU接続端子として使われていたROG XG Mobile インターフェイスが廃止され、外部GPUの接続もUSB4で完結できるようになっている。

 

 


 充電しながらのゲームプレイでも十分な給電が可能になったのはありがたい。eGPUにも接続しやすくなったため、より重いゲームも守備範囲となった。

 十字キーの形状も変化しており、前モデルではやや押しづらかった斜め方向も入力しやすくなった。質感も以前は光沢とツルツル感がある素材だったが、本機は滑りにくくマットな素材に変わっている。こちらのキーの方が圧倒的に使いやすいと感じた。


 見えない部分にも変化が。前モデルと比較して冷却ファンは23%小型化、フィンは50%薄型化、エアフローは10%増大。これにより本体パネル温度を最大6度低下させる。前モデルよりも2〜3度温度が低くなった。


 SSDのフォームファクタは前モデルがM.2 2230だったところ、より汎用性の高いM.2 2280に変更している。本機のSSD換装は背面の6箇所のネジを外すだけで簡単に行えるが、M.2 2280になったことでさらに簡便になった。

 他にも各部パーツの小型化やさらなるエルゴノミックデザインの改善が行われているが、ユーザーとして実感できる変化は上に挙げた要素が大きい。個人的にはType-C端子の追加や十字キーの変更などは使いやすさを大幅に向上させていると感じた。バッテリー時間増加も心強い。

 一方、気になったのは重量だ。608g→678gという変化はさほど大きくないように感じるが、いざ実機を持ってみると「意外と重い」と感じた。前モデルは軽い印象だっただけに、わりと重くなってしまったなというのが本音だ。重量だけでなく本体の厚みも約5mmほど増えているが、ここは気にならなかった。

 

性能面での満足度は確実に向上

       

 肝心のゲームプレイにおいての『ROG Ally X』の性能だが、快適度は前モデルから確実に改善している。『ゼンレスゾーンゼロ』を最高画質の60fpsでプレイしてみたが、ラグさは一切なし。ボタンの操作性も快適で、このコンパクトボディでZZZをサクサクプレイできるのはたまらなく楽しい…!

 エアフロー改善のおかげか、プレイ時の動作音も前モデルより静かになっていると感じた。本体の起動時間も30秒とかからず、メモリ増大による性能向上を実感できる。バッテリー時間についても確実に伸びており、ケーブルレス状態でプレイできる時間は前モデルより大幅に増えている。

 懸念があるとするなら、やはり重量。本体が重くなったことで前モデルよりも腕や手に疲れを感じやすい。参考までに『Steam DECK』のLED版の重量が669g、『AYANEO 2』が約660gなので、ハンドヘルド型PCとしてはことさら重いわけではない。あくまで前モデルと比較して重くなったという感覚だが、前モデルに軽やかな印象を抱いてた筆者にとっては違いを如実に感じた点でもある。


 最後はベンチマーク。『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』のベンチマークソフトを使い、高品質(ノートPC)設定で計測をおこなった。『ROG Ally X』はパフォーマンスモードにしてある。スコアは5249。


 パフォーマンスモードよりも処理速度を向上させたTurboモードで計測すると、5348となった。どちらも電源に繋がないバッテリー駆動で計測している。画質をやや落とせばさらに快適にプレイできるだろう。


 次は重量級のゲーム『サイバーパンク2077』のベンチをTurboモードで計測。プリセットは中、解像度はフルHDに設定してある。平均FPSは30とかなり健闘しているが、場面によっては10程度まで落ち込んでいる。快適度については前モデルと大きな差はなく、解像度をHDに落とせば現実的にプレイできるだろう。

最後は3DMARKのFire StrikeをTurboモードで計測。総合スコアは7,789と出た。『ROG Ally』のRyzen Z1モデルが4,470、より高性能なRyzen Z1 Extremeモデルが7,350程度出ているので、わずかに上回っているといえる。RAM増量の影響が出ているか。

新規購入者には『ROG Ally X』をオススメしたい

 前モデルの『ROG Ally』と、今回の『ROG Ally X』。コスパなどを鑑みてどちらがオススメかと聞かれれば、筆者としては『ROG Ally X』を推したい。

 主な理由は、十字キーが押しやすくなった点とType-C端子が2ポートある点だ。本機の購入を検討する人はよほどゲームが好きだろうし、ならばゲーム機としての操作性が洗練さた本機を選ばない理由はない。と言っても既存ユーザーが買い替えるほどの劇的な変化ではない(外付けGPUを見据えているなら買い替えの価値はある)。

 ネックと感じた本体の重さも、自宅でプレイするならクッションを置くなりでどうとでも対処できる。前モデルが軽さを優先した軽量二脚タイプとするなら、本機はバッテリーやRAMを増やした“重量二脚”タイプだと言える。持ち出しやすさやコスパを優先するなら、前モデルも選択肢になるだろう。

 どこでも自由にPCゲームを遊べる。その体験をより快適かつパワフルに楽しめるよう再設計された『ROG Ally X』は、ゲーマーにとってさらに手放せない一台に仕上がった。今はここが、ハンドヘルド型ゲーミングPCの最前線だ。

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