裁判騒動を乗り越えた『Dark and Darker』 “ダンジョン版タルコフ”はジャンル人気に火を点けるか

裁判騒動もあった『Dark and Darker』の現在

 6月初頭、突如Steamにて基本無料で販売を開始した『Dark and Darker(以下、DaD)』。「ファンタジーの世界観でダンジョンを探索する、FPS視点のダンジョンPvPvE」で、ダンジョン版『タルコフ』といえるような独自のゲームシステムが魅力の作品だ。

 無料化から1か月経った現在では、人気配信者によるプレイも増加しており、知名度を上げつつある本作。2024年内にはモバイル版のリリースも予定しており、そのβテストも8月に行なわれるとのことで、順調に展開を進めているように見受けられる。

 一方で、本作は正式リリースまでの過程で紆余曲折あったタイトルでもある。本稿では、そんな本作を紹介する。

Dark and Darker - Summer Game Fest 2024 Trailer

テストプレイで人気を博すも、裁判沙汰でStemページが消失

 そもそも、本作は2023年に正式リリースに向けたテストプレイを実施。その独自性やハードなゲーム性は好評を得たようで、Steamでの同時接続数が10万人を越えていた。

 しかし、そんな中で本作を開発するIRONMACEに対し、ネクソンの未発売プロジェクトである『Project P3』の開発メンバーがネクソンを退社後にIRONMACEを立ち上げ、同作の素材やアセット、コード等を流用しているという疑惑が浮上。後にネクソンが韓国と米国で提訴し裁判沙汰にまで発展した。

 この騒動で本作はSteamストアページも削除され、公式サイトのみで販売する形となったほか、『DaD』の開発者が裁判費用をクラウドファンディングで募ったことや、BitTorrent経由でベータ版を配布するなど、ゲーム内容とは異なる部分がたびたび話題となっていた。その後、ネクソンの訴えは米国・韓国双方で棄却、これが切っ掛けとなったのか今年6月にSteamとEpic Gamesにて突如基本プレイ無料として配信が開始された。

難易度は高いが成長を感じられるダンジョン探索ゲーム

 このように、リリースまで紆余曲折あった本作だが、ゲームの内容はハードで自分の成長を楽しむことができ、リプレイ性も高いものとなっている。

 本作では冒険者となってダンジョンに潜り、ダンジョンに生息するモンスターやほかのプレーヤーを倒したり、避けたりしながらアイテムを入手。脱出ポータルを目指し、無事にアイテムを持ち帰ることが目的となる。ダンジョンで倒されると集めたアイテムをすべて失ってしまうので、常に緊張感のある状態でダンジョン探索を進めていくこととなる。

ダンジョン内はかなり暗く、松明を片手に探索することがほとんどだ
ダンジョン内はかなり暗く、松明を片手に探索することがほとんどだ

 ダンジョン内にいるモンスター、ゴブリンやスケルトンといったものであろうと強敵で、慣れるまでは開始時に遭遇し、一瞬で倒されるなんてことも珍しくない。そのため、まずはモンスターの攻撃を回避し、そのスキに反撃するという一連の流れを死にながら覚えることになる。

 ダンジョンは狭いため、相手の攻撃を避けるのには慣れが必要なだけでなく、モンスターの戦闘中に横からほかのプレーヤーが襲ってくることもあるので、常に周囲に気を配る必要もある。

戦闘は基本的にヒット&アウェイで、モンスターの攻撃を回避して反撃することを繰り返すこととなる。盾は存在するものの、しっかりと攻撃がくる方向に向けて使用しなければ貫通してしまう。戦闘は死にながら覚えていくしかない
戦闘は基本的にヒット&アウェイで、モンスターの攻撃を回避して反撃することを繰り返すこととなる。盾は存在するものの、しっかりと攻撃がくる方向に向けて使用しなければ貫通してしまう。戦闘は死にながら覚えていくしかない

 プレーヤーはパークやスキル、装備できる武器・防具が異なるクラスからひとつを選んでキャラメイクを行ないダンジョンに挑む。クラスはバランスのいいファイターや、弓をメインに使用するレンジャー、歌で味方をバフするバードなどが存在する。本作は最大3人でパーティを組むことができ、パーティでプレイすればよりクラスの特性を活かした立ち回りが可能だ。なお、本作にはフレンドリーファイアもあるため、とっさの反撃で味方まで斬りつけたり、味方の攻撃魔法に巻き込まれて死亡したりといったことにならないよう、味方の位置にも気を使いながら戦闘をしなければならない。

クラス毎に異なるスキルやパークを設定し、ダンジョンに挑む
クラス毎に異なるスキルやパークを設定し、ダンジョンに挑む

 このように、本作は気を配らないといけない場面が多く、死に覚えゲーの要素も強いハードな内容ではあるが、死んだら直ぐにロビーへと戻ることができ、また15分以内に脱出しないといけない時間制限があるため、1プレイが短く気軽にプレイすることができる。

 敵の対処法やマップの構造を覚えれば、モンスターをスルーして宝箱を漁ったり、ほかのプレーヤーが通りそうな場所で待ち伏せしたりといったこともできるようになっていくので、自分の成長を実感しながら探索を楽しめる。もちろん、友人とワイワイ騒ぎながら探索をしたり、ほかのプレーヤーを倒すことだけに特化した立ち回りをしたりと、さまざまなスタイルでプレイすることも可能だ。

筆者は宝箱を漁っているときが一番楽しい
筆者は宝箱を漁っているときが一番楽しい
宝箱と思いきやミミックに襲われることも
宝箱と思いきやミミックに襲われることも

 見た目は地味なゲームで、動作も重いなど古臭く感じる部分は少なくないが、その古臭さもクラシックなファンタジー世界のダンジョンの雰囲気とマッチしており、プレイ時の緊張感にもつながっているように思える。総じて、プレイすればするほど味がでてくるゲームなので、コアなゲーマーには好まれるタイトルには違いないだろう。

慣れてくればモンスターと戦っている他のプレーヤーの位置を音で判断し、奇襲を仕掛けるといったこともできる
慣れてくればモンスターと戦っている他のプレーヤーの位置を音で判断し、奇襲を仕掛けるといったこともできる

キャラクター制作枠は無料だと少し窮屈

 このように、確かな魅力がある『DaD』だが、難点もいくつかある。特に無料プレイ時のキャラ枠の制限は重く、「無料体験版」的な立ち位置だとしてもやや窮屈に感じてしまう。

 無料版では、レアリティの高いアイテムがドロップするハイローラーダンジョンに潜ることができず、キャラクターの制作枠も1つしかない。また、持ち込んだアイテムもプレイヤー同士の市場に流すことも不可能となっている。潜れるダンジョンや市場への制限はまだしも、キャラクターの制作枠がひとつしかないことは、気になったほかのクラスを試すことができないことに直結しており、別のクラスをプレイするためには30ドルの有料版を購入するしかないというのが現状だ。

 『DaD』のリリース時はノーマルダンジョンに持ち込める装備品に対する制限が重く「コモン」しか持ち込めなかったが、ユーザーの声を反映する形で緩和され、装備が整っていないプレイヤーは専用のマッチに振り分けられるようになった。これと同じように、キャラ制作枠を別途販売するなど、課金手段を増やすような改修を行なうことに期待している。別のクラスを体験する機会があれば、それが有料版を購入する導線にもなるだろう。無料でも十分に楽しめるタイトルだからこそ、柔軟な対応を願っている。

「DaDライク」ゲームも続々リリース。モバイル版で勢いをつけられるか

 正式リリースまでの紆余曲折を乗り越えた『DaD』だが、現在は「DaDライク」と呼べるような類似タイトルも登場しており、今後はこうしたタイトルとの競争が激しくなっていくことが予想される。『PUBG』のヒットでバトルロイヤルゲームがブームとなり、『フォートナイト』や『Apex Legends』といった人気タイトルが登場したように、『DaD』を起点としたムーブメントが大きな広がりを見せるかもしれない。こうしたことを踏まえ、『DaD』や、「DaDライク」ゲーム全体の盛り上がりには注目したい。

 なお、冒頭でも述べたとおり、本作はモバイル版となる『Dark and Darker Mobile』を2024年内にリリース予定だ。こちらはPC版に比べてモンスターが弱くなり、恒久的な成長要素が追加されるなど、多くの人が遊びやすいタイトルになるようだ。本作は1回の探索が短いゲームなので、モバイルでのプレイにも向いているだろう。本作の今後を占うという意味でも、モバイル版には期待している。

 モバイル版が気になるという読者は、8月に行なわれるグローバルβテストに参加してみるといいだろう。こちらの参加方法は、今後SNS等で告知するとのことだ。

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