2023年最も検索された『スイカゲーム』から、“配信者発”ブームの共通項を考える

『スイカゲーム』から“配信者発”ブームの共通項を考える

 2023年は、ゲーム豊作の年だった。『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を筆頭に、『ホグワーツ・レガシー』、『バイオハザード RE:4』、『ストリートファイター6』etc……。挙げればキリがないほどの名作たちがリリースされた。

 そんな今年のヒットタイトルはどれも、リリース前から期待を寄せられていたタイトルばかりだが、例外となるタイトルも存在する。それはAladdin Xによるパズルゲーム『スイカゲーム』だ。

 『スイカゲーム』は、2021年12月にリリースされたタイトルで、もともとはプロジェクターの内臓アプリだったものを、Nintendo Switchに移植するという異例の形で登場した。

 そんな本作が2年の時を経て突如注目され、日本でのGoogle検索ランキング1位・300万ダウンロード達成・ニンテンドーeショップのダウンロードランキングでも1位など、数々の記録を打ち立てるほどの人気を獲得した理由を考察する。そこから2024年のゲームについて、見えてくることもあるだろう。

シンプルなゲーム性が魅力

 まず、『スイカゲーム』のルールについて簡単に説明しておこう。本作はいわゆる「落ちものパズル」で、プレーヤーはランダムに手元に出てくる果物を箱の中に落としていくこととなる。果物はサイズの異なる11種類が存在し、同じ果物をくっつけることで合体、一段階大きな果物へと進化する。積みあがった果物が箱からはみ出ないように果物をくっつけていき、最終的に最も大きな果物であるスイカを作ることと、スコアを稼ぐことが目的となる。

 このように本作のルールはとてもシンプルなものとなっており、それに加えて操作も落下地点を決めて果物を落とすだけで制限時間もない。かわいらしく描かれた果物も相まって非常に触りやすいタイトルとなっている。

 一方で、果物を考えなしに積んでいくと、合体してどんどん大きくなっていく果物によって箱のスペースがなくなっていき、合体できない果物が増えていってしまう。また、落とした果物が予想外の方向に転がっていったり、合体の衝撃で果物が思いがけない位置へと飛んでいってしまったりと、物理演算にせっかくのプランを壊されることも少なくない。

 このように本作はシンプルながら、果物の「ツモ」と物理演算が生み出すランダム性とうまく付き合いながら、どう果物を落とすかを考える必要があり、連鎖が決まって次々に果物が合体していく爽快感もあって高い中毒性を持っている。

 このように本作は遊びやすさと中毒性が両立したタイトルで、それが240円と安価で手に入ることが、本作を多くの人が手に取った理由の一つなのは間違いないだろう。

2023年を牽引したゲーム配信の力

 本作のポテンシャルは確かなものだったが、無名で小粒のタイトルがここまで注目を集めたのは、人気配信者によって「発見」されたことに起因するのではないだろうか。「火付け役」となった配信者については諸説あるが、配信者の布団ちゃんが本作を配信し、そこから著名な配信者や人気VTuberへと波及していったとする説が有力だ。

 上述のゲーム性もあって、本作は配信で人気を獲得。攻略法に関する動画や、高得点やランキング上位を目指すものなど、さまざまな動画・切り抜きも投稿されていき、それらを視聴した人の間でもどんどんと広がっていったというわけだ。

 こうした配信者を起点としてブームとなったゲームは今年だけでもかなりの数がある。たとえば、線を引くだけのパズルゲーム『Q REMASTERED』や、漢字の読みを答えるクイズゲーム『漢字でGO!』、直近では、『8番出口』『Refind Self: 性格診断ゲーム』といったタイトルも配信で話題となっていた。どのゲームも見ていてルールが分かりやすく、それでいて頭を使ったり、どうプレイするか悩んだりと、視聴者も一緒になって楽しめたり、配信者の人となりが見えたりといった点が共通している。

 また、安価で手に取りやすく、かつランキングや共有機能など視聴者自身もプレイしたくなる仕組みを実装しているタイトルが多いのも特徴的だ。『スイカゲーム』はこれらのタイトルの中でもキャッチーで、攻略しがいのあるタイトルだったからこそ、突出した成功を納めたのではないだろうか。

大きくなり続けるストリーマーの影響

 昨今では、ゲームの面白さだけでなく、ストリーマーの力を借りることでより大きな成功を収めるゲームも少なくない。2023年には『ストリートファイター6』が配信者とプロゲーマーがチームを組んで戦う『CRカップ』で話題を呼び、伸び悩んでいた格闘ゲームジャンルに再び火をつけたことからも分かるように、小粒なタイトルだけでなく、すでにある程度の地位を確立しているゲームでも、配信をきっかけに新たなユーザーを獲得することが可能だ。

 すべてのタイトルがそうでないにせよ、小粒なタイトルや停滞気味のジャンルのゲームでヒット作を生み出すためにも、ストリーマーにプレイしてもらうことと、それを見た視聴者にもプレイしてもらえる仕組みや取り組みが、より一層重要になってくるだろう。

 2024年には『ファイナルファンタジーVII REBIRTH』『鉄拳8』『ペルソナ3 リロード』などの注目作がリリースされる。これらのタイトルも気になるところだが、ストリーマーの影響力が時間と共に大きくなっているからこそ、彼らがプレイする『スイカゲーム』のようなタイトルの活躍にも注目していきたい。

スイカゲーム ®

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