iPhone 15 Pro MAXで『共創自治区CONCON』と『郭巨山会所』を撮影してみた

『iPhone 15 Pro MAX』で建築撮影

 通勤や通学、買い物や娯楽、日常的に何気なく利用する建物や街。意識して訪れてみれば、設計者や施工者による様々な考えや工夫に気付いたり、建築当事者も気付いていないような新しい魅力を発見するかもしれない。

 カメラという道具はこれらを手軽に捉えるのにピッタリで、身近な建物を『建築』として見方を変えるツールである。建築設計に携わりながら、新旧様々な建築に普段から足を運ぶという建築家・水谷元氏が、自身の撮影のコツを交えながら、撮影した写真を通して建築や街を紹介していく。あなたもカメラを片手に建築の魅力に触れてみよう。

 第3回も、今では高性能となったスマートフォンのカメラを利用した建築の楽しみ方を紹介したいと思う。コンパクトデジタルカメラから一眼レフ、現在でも人気のあるフィルムカメラまでそれぞれ魅力があるが、スマホの手軽さは街歩きでも被写体にいつ出会ってすぐに撮影できるという利点がある。最新機種である『iPhone 15 Pro MAX』を片手に京都府京都市中京区に位置する『共創自治区CONCON』と下京区に位置する『郭巨山会所』(カッキョヤマカイショ)に足を運んだ。

 どちらも京都を拠点とする建築家・魚谷繁礼氏の設計監理によるものである。魚谷氏は都市の歴史的文脈をリサーチしながら、建築だけでなく路地や町割、その街の構成の継承をテーマに活動している。今回は京都に足を運ぶ際に事前に魚谷さんに連絡し、『魚谷繁礼建築研究所』スタッフの宮田氏に直接ご案内頂くことができた。貴重な建物を撮影しつつ、その解説をしていこう。

京都の旧市街地に建つ、街をアップデートする建築

 京町家の建て替えが進む京都の旧市街地、二条城南東の式阿弥町に位置する『共創自治区CONCON』は既存の町家と中古のコンテナを3つの大きな屋根で包んだ建築である。消えていく町家や京都の街並みを保存しながらアップデートする計画と言えるだろう。外観は木製のルーバーや軒、鉄骨の錆止め塗装が京都の街並みに寄り添っている。


 建築の裏側にも路地が残り、ここから眺める『共創自治区CONCON』は町工場のような不思議な佇まいをしている。

路地空間を縦に延長した都市の異空間

 京都の街らしく元々の路地空間を生かして計画されているので、建築全体を捉えることはできない。しかし、高さの異なる新たに設置された床を繋ぐ3つの階段を上り下りしながら建築全体を巡る感覚は、路地空間に迷い込んだような感覚を得られる。既存の町家の外側に新たなフレームと床と屋根を設置するというシンプルな構成にも関わらず、不思議である。

改修と補修で保存された京町家とそれを支える鉄骨フレーム

 敷地に当時から建っていた京町家は内外部共に補修や改修がおこなわれ、保存されている。既存の町家の屋根を貫く鉄骨のフレームは、既存の町家の揺れを抑える役割を担っている。町家の屋根の上に設置された各コンテナに電力を供給する配線も露出したままのシンプルな作り。

建築だけではない、施設内での活動が街をアップデートする

 施設内のコンテナは14個で、それぞれ飲食店や貸事務所や物販店などとして活用されている。コンテナ自体は床に置かれているだけで建築扱いではないので、今後改修や配置換えで建築の雰囲気も変わるかもしれない。「共創空間」というだけあり、フリーランスや専門家が集まる場所として賑わっている。

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