2034年に流行するポーズをAIが予測!? 未来の自撮り文化が体験できる「セルフィー展」に行ってきた

「セルフィー展」で未来の自撮り文化を体験

 株式会社HYTEKがHAKUHODO I-STUDIO Inc.とコラボし、5月21日から6月2日までマイラボ渋谷にて開催中の『セルフィー展』。本展示では進化する「自撮り文化」の変遷やその未来についてフォーカスした展示が行われている。今回は、セルフィーに関する記事を多数執筆してきた筆者が、『セルフィー展』で未来の自撮りを体験してきた様子をお届けしていく。

 本展示の最大の特徴は、最先端の技術を用いたセルフィーを無料で体験できるということだ。会場には「検温」を思い出にする『Thermo Selfie/サーモセルフィー』や、声出し応援解禁を受けて「声援」を記念にする『Yell Selfie/エールセルフィー』など、様々なセルフィー装置が設置してあり自由に撮影を楽しむことができた。

コロナ禍とともに変化した″自撮り″と″盛り″

 2年前に筆者が執筆した「日韓で異なる″盛る″違い」では、韓国では画角で″盛り″を追求する一方で、日本では目元や輪郭など顔のパーツを加工することで″盛り″を追求している点について言及したが、本展示では日本においての「盛る」という感覚も、自撮り文化の進化とともに変化していると実感できた。


 まずは『Thermo Selfie/サーモセルフィー』を体験。本装置は、感染症対策として定着していた検温が事務的な作業にならないことを目指し開発されたという。一方、『Thermo Selfie/サーモセルフィー』では、検温と共に撮影した写真をフォトカードとしてその場で印刷してくれる。


 チェキ風のフォトカードには、実際に測定された体温も表示されているため、その日の健康状態を示す証明になる。実用的なだけでなく、検温を思い出として残すことができるというコロナ禍に生まれた妙案だが、2024年以降も活用できそうな気がした。

 次に体験したのは『Yell Selfie/エールセルフィー』。こちらは2023年に世界的に様々な会場で観客の声出しが解禁され、私たちが忘れかけていた「声を出す」という行動自体を可視化し、その様子を思い出に残すために開発されたという。


 「せーの!」の掛け声で画面に表示されたキーワードをカメラに向かって叫ぶと、その声援がカメラのシャッターの合図となり、叫んでいる瞬間を写真に収めてくれる。コロナ禍に限らず、撮影する機会が少ない瞬間の一つである「自分の叫ぶ姿」を写真で見るのは新鮮だ。広角カメラが装置の上部に設置されているため、″盛れる″画角で撮影を楽しめる。

 エールを叫ぶ瞬間は映像としても記録され、会場のビジョンやサイネージにも表示されるので、イベントの盛り上がりを可視化してくれる。


 社会の変容とともに生まれたセルフィー装置を体験し、ふと、高校時代の思い出が蘇った。緊急事態宣言が緩和され久々に登校した学校の玄関前に設置されていたサーモグラフィーに戸惑いを覚えたが、しばらくすると学生たちの自撮りスポットと化していた。コロナ禍でも新たな自撮り方法を生み出し、乗り越えようとする若者の前向きな姿が「自撮り文化」にも反映されているとするならば、これらの取り組みはテクノロジー側のアプローチとして、理想的なものといえるのではないだろうか。

 本展示で体験できる『Thermo Selfie/サーモセルフィー』や『Yell Selfie/エールセルフィー』では、日常では記録されないような瞬間を楽しむ姿をセルフィーにしてくれる。令和の日本では「日常を記録として収めたい」そんな思いが、日常にあるモノや声を利用した新たな自撮りを生み出し、″盛り″として定着しているのかもしれない。

10年後のトレンドポーズを一足先に体験?!生成AI技術を用いた最新セルフィー

 さらに驚いたのは、AIを活用した新たな“セルフィー”たちだ。未来のトレンドポーズで撮影ができる『未来プリ』は、まさにプリ機の中のようなブースが用意されており、音楽生成AIの『Suno AI』で新たに作成された音楽が、まさにプリ機で流れているようなBGMで、こちらのテンションも上がる。

 キュート・ポップ・クールの3つのカテゴリーの中から「撮りたい未来」を選択し、「好きなタイミングでストップ」を押し世界観を選ぶとAIが未来のトレンドポーズを生成してくれる。


 筆者は「2034年、人気アイドルグループ「Destiny」の新曲「Eternal Love」が大ヒットし、MVで披露されたポーズが話題になった未来」の「Eternal Loveポーズ」を一足先に撮影。10年後本当に流行したら、私がこのトレンドポーズの先駆者だ。


 ポーズのパターンはおよそ90種類もあるということなので、どれが出るかは体験してからのお楽しみ。撮影した写真はQRコードを読み取ることで保存も可能なほか、ブース内には自分の撮影した写真が“デジタルプリ帳”に反映される可愛らしいスポットも設置されている。


 次に体験したのは『履歴写』だ。名前や趣味、特技など、入力した項目からAIが架空の顔写真を自動生成してくれる。履歴書から読み取れる「自分」という存在をAIはどのように解釈するのか、俯瞰的に見ることができて面白い。


 筆者は「趣味・特技」の記入欄に「読書」と「愛犬との散歩」と入力してみた。果たして生成AIは私の姿をどのように認識するのか、期待しながら待つことわずか数十秒。出てきたのは、眼鏡姿から読書好きを連想できるような、動物に例えるなら犬っぽい知的な女性だった。

 近い将来、就職活動で提出する履歴書も生成AIで作成した写真を登録できるようになれば、自分のイメージをより分かりやすく表現できるのではないか。未来の就職活動に期待が膨む。


 なお、『Thermo Selfie/サーモセルフィー』、『Yell Selfie/エールセルフィー』、『履歴写』を体験すると貰えるフォトカードや写真は自由に持ち帰ることができる。記憶を記録できることがセルフィーの魅力だが、本イベントで体験した思い出は物理的なセルフィーに残しておけるのも嬉しいポイントだ。

 本展示では、紹介した以外にもメディア環境学者の久保友香さんや早稲田大学の長谷正人教授への自撮り文化をテーマとしたインタビューや、『全裸AI』、『アノニマスAI』などのユニークなセルフィー装置も展示されている。プリントシール機の聖地として“盛りの文化”が発展し、現在は自撮り文化が進化する街・渋谷の中心地で、一足先に10年後のセルフィーを体験してみてほしい。

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