ラッパーが料理番組? ほのぼの&アングラが独自のギャップを生む「漢 Kichen」の魅力
ひとつのレシピを司会者と一緒にゲストとつくっていく。『キユーピー3分クッキング』(日本テレビ)、『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』(テレビ朝日)、『男子ごはん』(テレビ東京)などに代表される料理番組は、テレビ番組のなかでも王道のジャンルのひとつだ。
このようなセッション形式を取りつつも、王道とはちょっと外れた要素をスパイスにまぶし、人気を博す料理系のYouTubeチャンネルがある。それは、「漢 Kitchen」だ。MCを務めるのは、フリースタイルダンジョンなどでも活躍し、自身が経営するカフェのキッチンに立つこともある漢 a.k.a. GAMI 。ゲストはHIPHOPアーティストだ。登録者数は、2024年4月22日時点で19.8万人になる。チャンネル開設から1年半が経った2024年5月には、番組でつくったレシピを掲載した書籍も出版される。
着実にファンからの支持を集める同チャンネルは、どのような点に魅力があるのか。その理由をひもといてみたい
テレビ番組のような凝ったつくりの料理番組
YouTubeの料理チャンネルは、クリエイターが家庭用のキッチンに立ち、料理をする姿のスタイルが多く、感想はわかりやすい言葉で説明されることが多い。カメラの前に立つ人と見る人の距離感が近く、親近感を覚えやすいのがYouTubeにおける料理チャンネルの特徴だ。
一方で、「漢 Kitchen」は、見ている人を引きこむテレビ番組のような特徴を持つ。キッチンは広くて豪華。動画はゲストとの対談方式で進行する。つくる料理も本格的だ。これまでに「タコライス」「いちごタルト&いちごジュース」「フェイジョアーダとガカモレ」など、ゲストにゆかりのあるレシピをつくってきた。企画、画角、進行、編集に力が注がれているため、動画の見応えは十分だ。
料理番組では見られないアングラなスパイスが利いている
「漢 Kitchen」の魅力のひとつは、動画構成の高低差にある。お昼に映し出されそうな料理番組の構成を使いつつ、アンダーグラウンドなHIPHOPがうまく組み込まれている。そのギャップがおもしろいのだ。最初に投稿された動画「【ゲスト:ralph】漢 Kitchen ~漢 a.k.a. GAMI の料理番組~」を見てみよう。
まず、その特徴がわかる代表的な部分がサムネイルだ。キャップをかぶったガッシリとした男2人が整然としたオープンキッチンに立った下に、ポップな字体で「ralphさんのオーダー マカハニー入り ホットケーキ」と文字が入っている。クールさとかわいさが組み合わさったギャップは大きく、つい目を引かれる。
また、料理が完成すると、これまでの昼間に放映されるようなテレビ番組のような画面が反転。深夜に放映されるカルチャー番組のようなクールな絵がカットインする。テロップは、「Ready to Eat」。料理番組ではあまり見たことのない演出にギャップを感じてつい笑ってしまう。
音楽バラエティチャンネルとしての楽しさもある
かつて平成のテレビ番組では、タレントの司会のもと、ミュージシャンがトークを広げるバラエティ番組が人気を博していた。実際に、「漢 Kitchen」にも同じようなテイストを感じる。ただ、かつてのミュージックバラエティ番組と異なる部分もある。それは、大きな演出がなされないことだ。
あくまでも淡々と番組は進行し、MCとゲストは自然体でトークを広げ、そのなかでちょっとした違和感が現れ、それがおもしろさにつながる。関係性にはリアルな雰囲気が漂い、YouTubeと非常にマッチしているように感じる。キャラクターが濃く、関係性もあり、トークの上手いラッパー同士のかけ合いだからこそ生まれるおもしろさだ。
2024年4月18日、漢 a.k.a. GAMIは自身のInstagramにて扁平上皮がんの手術による、2か月の活動休止を発表。YouTubeチャンネルの方も、書籍発売について語った2024年4月3日を最後に、一旦投稿をストップしている。
入り口は広く、中身の詰まった「漢 Kitchen」。漢 a.k.a. GAMIが無事に表舞台に戻ってくることを祈りつつ、今後の広がり方に注目していきたい。
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