連載:エンタメトップランナーの楽屋(第11回)

クロちゃんが大事にしている“島田紳助からの言葉” FIREBUG 佐藤詳悟に語った「芸人としてのスタンス」

島田紳助の言葉で奮起 「面白がられる」から「面白がらせる」への転換期

佐藤:アイドルになりたいクロちゃんが、芸人を始めることになって、いままで続けてこられたのはなぜですか?

クロちゃん:最初は、「売れたら好きなことができるようになるよ」って言われたんです。だから、ちょっとやってみようかなと。芸人をやっていくうちに応援されるようになって「かわいいね」「面白いね」とか言ってもらえるようになって、それは嬉しかったです。でも、違うって気づいたんですよ。

佐藤:違う、とは?

クロちゃん:笑ってもらってたのって、自分の信念でやっていたことを「面白がられてる」だけだったんです。「面白がらせてる」わけじゃなかったから。

 たとえば昔、足を鍛えたいから「昔の人は裸足で歩いてたから足が強くなったんだ」と思って僕も裸足で学校に行ってて、それを面白いと言われていたけど、別にボケているわけじゃなかったんですよ。

 だから芸人をやってても、ひと言目はウケるけど、そこから会話のキャッチボールができない。朝起きてからやってたことを聞かれて「目を瞑って5時間くらい生活してました」とか言って、それはウケるけど、「五感のうちのひとつを潰すことで感度が良くなると思ったから」とか言っちゃうと、僕とみんなの常識が違うから、理解されなくてスベっちゃう。

佐藤:たしかに常識が違って、目的を聞いても理解できないですね。


クロちゃん:当時付き合っていた彼女から「あのころは『もうやりたくない』って言って毎日泣いてたね」って言われました。僕はもう忘れちゃってたんですけど。

 でもあるとき、(島田)紳助師匠から言われたんです。「お前らみたいなのが普通にバラエティとかでセンス出して普通に言ってきてもなんとも思わない。けど、死ぬ気でかかってくるやつには『おっ』と思う」って。

 それを聞いて、死ぬ気でやれてないって思ったんです。会話がうまくいかなくてスベったくらいじゃ、死ぬ気でやれてないから。

佐藤:そこから芸人としての取り組み方が変わってきたと。

クロちゃん:そうです。僕がなにか言って変な空気になっても、すぐまたなにか言って、何度も発言していくようになりました。そしたらどんどん動けるようになって、発言を使ってもらえることも多くなって、楽しくなってきましたね。それが2006年ごろかな。

佐藤:いまはもうあんまりくじけないですか?

クロちゃん:くじけないっていうか、なんとも思わない。その仕事が最悪の時間だったとしても、終わればお金がもらえるんだと思ったら、楽になりました。ヘコむことはありますけどね。

クロちゃんが誹謗中傷を浴びながらも“Xを続ける理由”

佐藤:反省とかはするんですか?

クロちゃん:たまにします。

佐藤:反省したときは「こうしたほうが良かった」とか書き出すとか、メモをしておくとか、どうやって反省するんですか?

クロちゃん:いや、頭の中で。

佐藤:頭の中で。

クロちゃん:あ、すみません。反省しないです。ごめんなさい。基本的には反省しないです。「もうちょっとできたかも」とか思うことはありますけど、反省しすぎると、また一歩が出にくくなるから、あんまりしないです。

佐藤:冷静に受け止めて次に生かすような考え方はするけど、むやみに落ち込んだりはしないと。

クロちゃん:落ち込むことは別に悪いことじゃないと思うんですけど、調子乗るのも同じで、長い期間それが続くと、戻ってきにくくなるんですよ。

佐藤:戻ってきにくくなる?

クロちゃん:たとえば落ち込みすぎたとき、最初のうちは周りが心配してくれるけど、だんだん「あの人といても楽しくないよね」とかなって、周りに人がいなくなる。調子に乗るのも、だんだん「あいつ本当に天狗になってるよね」とか言われて、人がいなくなる。いつからか、そう思うようになりました。

 僕はSNSをよく見るんですけど、特にXが好きなんですよね。僕のことを悪く言ってくる人が多いから。だって、自分にとって良い意見を言ってくれる人ばかりだったら、間違えちゃいそうじゃないですか。イエスマンばっかりに囲まれてミスをする人が多いし。

佐藤:でもSNSを見ていると、あまりにもクロちゃんに対する誹謗中傷が多いじゃないですか。それでもエゴサーチはよくするんですか?

クロちゃん:そうですね。なるべく全部見るようにしています。たとえば「もうテレビ出ないでください」とか言われたら「出なくなったらお金稼げなくなるし」とかツッコむ感じで、「これは違う」「これは合ってる」って冷静に判断しながら見てますね。

佐藤:なんでそこまでして見るんですか? SNS自体をやめる選択肢もあると思いますけど。

クロちゃん:やめることも考えましたよ。それこそ一番怖かったのは、僕がそこで変な選択肢を選んじゃうこと。でも冷静にひとつずつ意見を見てみたら「ほとんど勝手なこと言ってるだけだな」って思ったから、SNSは続けることにしました。

 「歩く」って言ってタクシーに乗ってたとしても、僕からすれば次の日の仕事が早かったから早く帰りたかっただけだし、断片的な情報だけ見て理由を想像もしない人が言ってることなんて、僕には関係ないじゃないですか。そう考えたら、全然傷つかなくなりました。

佐藤:糧にする判断ができるようになったんですね。

クロちゃん:その意見を生かさないと僕が損をすると思ったら生かすようにしてます。書いた人たちに「ありがとう」なんて言わないですけど、勝手に勉強してます。

佐藤:僕はまだクロちゃんを理解し切れていないんですけど、ブレないための判断軸を何か持っているんですか?

クロちゃん:僕は絶対に損をしない! 絶対に得をしてやろうと思っています。いまは損かもしれないと思うことも、続けていれば特になるんじゃないかと思うと、できるんです。だからどんなことを言われても、最終的には絶対に僕が得してやろうと思ってます。

関連記事