RAGE王者×キャスター・友田一貴対談 1000万円を獲得した19歳の“頭脳”に迫る

RAGE王者×キャスター・友田一貴対談

 『RAGE Shadowverse 2023 Winter』で優勝し、19歳で賞金1,000万円を手にしたeスポーツプレイヤー・Thx|さけまん選手。彼の“頭の中”はどうなっているのか? 

 優勝直後、ゲームキャスター・友田一貴氏とThx|さけまん選手の対談インタビューを決行。追いつめられた時の思考術、チームや仲間の重要性などについて、思う存分に語ってもらった。(小川翔太)

優勝直後の選手に直撃インタビュー

友田一貴(以下、友田):まずはお疲れ様でした。どうですか? 優勝の実感は。

Thx|さけまん(以下、さけまん):全然実感が湧かないですね(笑)。いつもの練習が終わった後みたいな感じです。

友田:今回はどれくらい練習しましたか?

さけまん:毎日3〜4時間くらいですね。普段はもうちょっと少なめですが、今回の大会に備えて少し練習時間を増やしました。

友田:勉強方法としては、ひたすらにやるのか、誰かのプレイ動画を見るのかっていうどちらが多いですか?

さけまん:その両方を組み合わせています。ファイナリストになってからは自分で練習することの方が増えましたね。

友田:RAGEはいつから参加されているんですか?

さけまん:2022年の『Autumn』からですね。今回で6回目のRAGE出場です。

友田:6回目でRAGEチャンピオン!? すごいですね。競技としてシャドバに挑戦してみようと思ったきっかけはなんですか?

さけまん:RAGEに出始める3年ぐらい前からシャドバ自体はやっていて、高校を卒業して(大学受験が終わってから)競技シーンに挑戦しました。それが2022年の『Autumn』だったんです。

友田:なるほど。ちなみにいま、おいくつなんですか?

さけまん:19歳です。

友田:とんでもないですね(笑)。ということは、中学3年生~高校1年生くらいから始めていたんですね。始めた当時はRAGEの配信やプロの試合は見ていましたか?

さけまん:見ていなかったですね。友人と遊んだり、ランクマッチを楽しむぐらいの感じでしたね。

友田:いわゆるライト勢として遊んでいたところから「賞金ももらえるし、せっかくだからガチってみた」って感じでしょうか?

さけまん:そんな感じです。

友田:2022年の『Autumn』は1人で出場したんですか? それとも友人の方々とみんなで?

さけまん:みんなで一緒に出場しました。

友田:その時の戦績はどうでしたか?

さけまん:プレーオフ決勝敗退です。

友田:RAGE出場1回目で!? これはちょっと天才ですね(笑)。

 1回目で惜しいとこまで行ったじゃないですか、それによって火がついたり、悔しいからもっと頑張ろうみたいなのはありましたか?

さけまん:いやぁ、負けたあとは1か月引きずりましたね……(笑)。「あぁもうだめだ、俺って下手だ」と落ち込みました。

友田:引きずってしまうほどの負けというのは、どんな負け方だったんですか?

さけまん:秘術ウィッチとラストワードネクロマンサーを使っていたんですが、プレーオフ決勝戦の対戦相手が指紋選手(RAGE Shadowverse 2022 Autumn ファイナリスト)で、秘術ウィッチと回復ビショップだったんです。

 当時、回復ビショップとの戦い方を何も知らなくて。勉強不足でした。そこで「また次の大会を頑張ろう」と気持ちを持ち直しました。

友田:そこから約1年で、RAGEの王者まで上り詰めたわけですが、勝てるようになったきっかけはなんでしょうか?

さけまん:やっぱりThx(アマチュアチーム)に入ったことですね。

友田:チームに入る前と入ったあとだと、知識量や練習量、質も含めて1人で練習していたときと変わりましたか?

さけまん:段違いでしたね。それまでも小さなアマチュアチームを転々としていたのですが「Thxは違うな」と感じました。

友田:すごいチームですよね。今回の自身のインタビューでも(以前、同じチームのThx|津島の塩選手が『RAGE Shadowverse 2023 Summer』で優勝した際に)「当時、自分が津島の塩さんの練習の手伝いをしていた」という話をされていました。自分が練習を手伝った人が優勝するというのは、当時どんな感覚でしたか?

さけまん:自分のことのようにうれしかったですね。家の中で「おおぉ!!」って思わず叫んじゃうくらいに(笑)。

友田:『RAGE Shadowverse 2023 Summer』の津島の塩さんの優勝によって、Thxの名が売れたじゃないですか。

 Thxのチーム内で「さけまん選手を2番目の優勝者にさせるぞ」という士気も生まれたり、決勝に出ると決まったあと、チームのサポートはありましたか?

さけまん:めちゃくちゃありました。毎日練習に付き合ってくれて。

友田:今日の会場にもチームの仲間が応援に来てくれていました。やはりチームでの練習というのは、1人で練習するのとは違いますか?

さけまん:(チームの応援は)絶対、力になってますね、間違いなく。

友田:RAGEに挑戦するようになってから、プロシーンを見るようになったりとか、変化はありましたか?

さけまん:そうですね。(プロのプレイを)参考にするようになりました。

友田:今回のトーナメントでも、SGA|ふえた選手、まっつ選手と結構キツい連戦を超えてきて、さけまん選手自身、どんどん高揚していく感覚もあったと思います。

 決勝戦でWinter選手と戦うときの心境はどうでしたか?

さけまん:かなり疲労感がありました(笑)。ここまでの戦いがすべてフルセットだったので。

友田:ですよね。しかも全試合がフルセットなだけなく「この試合は勝てそう」って試合も逆転されてしまったり、精神的につらい場面は多かったように実況をしている身としても感じていました。

さけまん:そうですね。あと、いきなり2本負けたときには「これで負けたら終わりだ……」と追いつめられた気持ちで戦っていました。

友田:今回のRAGEは「ミスしたときにどう立て直すかどうか」がすごく大事だと感じたのですが、1戦目では「ちょっとミスった」というお話もされていました。ミスからの立て直しはどんなことを意識しましたか?

さけまん:練習と同じようにしてたら、自然とリセットできましたね。普段はチームメンバーと画面共有しながらプレイしていて、そのときにミスしたら「ごめーん!」ってみんなに言っていて(笑)。とりあえず本番でも(対戦用のブースで1人で)「ごめーん!」って謝って忘れていました。

友田:最後に個人的に重要だと感じた、試合中の選択について質問させてください。勝負の選択だなと感じたのが、準決勝での4ターン目の『巡りの大魔術師・レヴィ』置きです。

 本来、進化を切りたいフォロワーだと思うのですが、進化できないターンに出すっていうプレイをしたんですよね。あのターンで手札にキープしておいて『巡りの大魔術師・レヴィ』の進化で押して行く展開も考えられたと思いますが、あれは「相手に絶対『大翼の灯火』を置かせない」など、特別な意図はありましたか?

さけまん:盤面にスタックが足らなかったので溜めたかったのですが、でもあのターンにスタックを溜める動きをしたら、相手にプレッシャーが掛からなくて、次のターンに相手が自由にできてしまうのが悩みでした。

 そんなときに「あ! 手札に『巡りの大魔術師・レヴィ』いるじゃん! これで押していこう!」となりました(笑)。

友田:その場の臨機応変な判断で「最も相手にプレッシャーがかかる選択」を取ったということですね。本番の「負けたらやばい」「1本も落としたくない」というプレッシャーが掛かる状況で、あの選択を取れるのはさすがでした。

 もう1点、準決勝の『ドゥルガー』を置いて攻撃せずにターンエンドした場面もすごかったです。

 あの試合は、対戦相手のふえた選手がめちゃくちゃうまかったじゃないですか。

 追いつめられた状況で「練習で1度も経験しない」ような選択肢が浮かんだと思うんです。あの『ドゥルガー』を出して攻撃しないという、相手の盤面をロックする選択については、どのような思考過程でそこに至ったのでしょうか?

さけまん:そのターンが始まって30秒くらい考えて「(相手の盤面を)ロックできるのが最も強いんだけどな」と思っていたら「あれ!? 『ドゥルガー』なら守護が3体出せる!」と気づきました(笑)。

友田:あれはマジで素晴らしかったですね。必殺を持っている『ドゥルガー』で相手のフォロワーに攻撃するとか、いろいろな選択肢があったなかで、落ち着いて攻撃せずにターンエンド。

 「必殺&疾走持ちのフォロワーを出して殴らない」という、かなり珍しい選択肢でしたよね。自分としても「よく思いついたな」という感じでしょうか?

さけまん:(あのプレイは)一生褒めてほしいですね(笑)。

友田:(笑)。想定どおりに盤面ロックに成功して、次のターンで勝つ。素晴らしかったですね。あらためて、優勝おめでとうございます!

© Cygames, Inc.

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