VRゲームの“わずかな例外”がここに 妥協なしの大作『Asgard’s Wrath 2』先行レビュー

妥協なしの大作『Asgard’s Wrath 2』先行レビュー

 10月10日にMeta社の最新VRヘッドセット『Meta Quest 3』が発売された際、購入特典として付属していたのが、Oculus Studiosに所属するSanzaru Games社が手掛けるVRアクションRPG『Asgard’s Wrath 2』である。現状のMeta Questのストアラインナップや、12月15日というホリデーシーズンを見定めた発売日を踏まえると、同作がMeta Quest 3におけるキラータイトル的な位置付けであると考えるのは自然なことだろう。

 筆者は前作をプレイしたことはないのだが、その評判については以前から(特に海外の)VRコミュニティからよく聞いていた。2019年にOculus Rift向けに発売された初作は、当時人気のあったVRゲームの多くが既存のゲーム体験をVR向けに最適化したものや、短時間で楽しめるアーケードライクな作品であったのに対して、25時間以上に及ぶボリュームを誇る重厚かつ壮大なアクションRPGであり、よく語られていたのは「やっとVRでもAAA級の体験が味わえるようになった」というものだった。

 そんな前作から4年を経て、遂に登場した『Asgard’s Wrath 2』。本作はMeta Quest 3とMeta Quest 2向けのタイトルとなっており、これで筆者のようなカジュアルにスタンドアロンの環境でVRを楽しみたいというプレイヤーでもその世界に飛び込むことができるようになったというわけだ。そうなると、PCVRを前提としていた前作よりもコンパクトな仕上がりになるのではないかと予想してしまうのだが、本作のメインストーリーの想定クリア時間はまさかの60時間以上。さらに、それ以外にも探索要素やサイドクエスト、ランダム生成のダンジョンを攻略するローグライト的なモードといった膨大なコンテンツを用意しているというのだから驚かされる。

 今回はありがたいことに、発売前にプレビュー用にゲームの序盤をプレイする機会を頂くことができたのだが、その体験を通して実感したのは、本作がまさにMeta Questの、あるいはVRゲーム全体における新たなキラーソフトとなりうるという、異常なまでのポテンシャルの高さだった。

まさにVRゲームのフルコース。北欧神話をベースとしたド迫力の世界観に没頭

 『Asgard’s Wrath 2』、あるいは同シリーズが物語のベースとしているのは、「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズや近年のMCU作品(ドラマ『ロキ』、映画『ソー:ラブ&サンダー』など)でもおなじみの北欧神話であり、どちらかの作品に触れたことのある人であれば、きっとすぐにその世界観になじむことができるだろう。前作で起きた出来事のあらすじは、ゲーム内でも起動直後にリッチなアニメーションを通して追体験することができるため、筆者のような前作未プレイ勢でも安心である。「悪戯の神ロキに裏切られ、牢獄に閉じ込められてしまった主人公が、神々や仲間たちの力を借りて、彼が引き起こす世界の崩壊を食い止める」というあらすじもシンプルで分かりやすい。

 そんなあらすじを見て「ここでもロキは裏切るのか」と笑いながら、主人公が囚われている場所で空間の作り込みに関心していると、開幕からド派手なシークエンスとともに吹き飛ばされ、状況を整理する間もなく巨大なボスと対峙することに。文字通り目の前に広がる壮大な光景と、自ら手を動かして立ち向かうしっかりとしたアクションの感覚が生み出すVRならではのド迫力の体験に圧倒される。だが、これはあくまでデモンストレーションであり、『Asgard’s Wrath 2』はVRゲームのフルコースと言わんばかりに、序盤から惜しげもなく驚くような体験を次々とプレイヤーに与えてくれる。

 チュートリアルを終えて最初に訪れることになる「Atonの神殿」では、エジプトの遺跡をモチーフとした、トラップと謎解きとモンスターに満ちた、まさに『インディー・ジョーンズ』の世界に飛び込むような体験が待っている。内容自体はいわゆる3Dプラットフォーム系の慣れ親しんだものではあるのだが、実際に目の前に丸鋸刃が迫ってきたり、巨大なハエのような敵から毒々しい液体が飛んでくるのは話が変わってくる。ウォールランのような爽快感のあるメカニクスや移動のスムーズさ(左スティックで移動、右スティックで一定角度ごとに視点切り替え。いわゆる瞬間移動系ではない)も相まって、没入感が損なわれることなくしっかりと探索に没頭することが可能だ。VR酔い対策に関しても、大きく移動する時には視界を狭めるような処理が施されているため、筆者個人としては特に悩まされることはなかった。

 本作は探索、戦闘、謎解きのどれを取っても、VRゲームの良いとこどりのような仕上がりとなっており、探索中のナビゲーションは丁寧で分かりやすく、戦闘ではパリィなどを活用したしっかりと歯ごたえのある本格的なアクションを楽しむことができる。なんと言っても素晴らしいのが戦闘において剣や斧を振るうだけではなく、『ゴッド・オブ・ウォー』(2018年)のようにそれらを敵に向かってぶん投げて攻撃できるという点だ(このメカニクスは謎解きでも活用する)。しかも投げた武器は腕を構えることで持ち手に引き戻すことができるため、気分はまさにムジョルニアを手にしたソーである。しかも部位切断のモーションまで用意されており、敵をバッサバッサと切り刻む爽快感はかなりのものだ(とはいえ敵側も容赦なく複数人で向かってくるため、少しでも気を抜くと標準の難易度でも平気でボコボコにされる)。

 また、個人的に特に気に入ったのが謎解きにおけるユニークなシステムだ。一部の場所では通常の主観視点に加えて、空間全体をジオラマのように見渡す俯瞰視点(あるいは「神視点」と言うべきだろうか)に切り替えることが可能であり、たとえば、「主観視点で足場まで移動し、俯瞰視点で巨大な仕掛けを作動させてその足場を動かし、また主観視点に戻り、先へ進む」といった具合にパズルを解いていく。一般的にVRといえば主観視点のイメージが強いが、PSVRの傑作『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』や『DEMEO』が示すように、実は俯瞰視点との相性も非常に良い。主観と俯瞰を切り替えながらパズルを解いていくユニークな感覚は、ゲームにおける「神の視点と人の視点が交わる」物語とも呼応するものであり、単なるギミック以上に意味のあるものに感じられた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる