叫んだらやり直しなホラゲー『DON'T SCREAM』に見る、ゲーム実況との“意外なシナジー”
「ゲーム実況なのにしゃべってはいけない」という“理不尽”が生むユニークさ
『DON'T SCREAM』というタイトル通り、「声をあげて叫んでしまったらゲームオーバー」というのが本作のミソだ。ゲーマーの多くがマイクを所持しているというと言い過ぎかもしれないが、たしかに昨今のゲーマーの間ではボイスチャットの普及率が非常に高い。その点をしっかりを見定めて、作品コンセプトに組み込んでいることが何よりも重要だ。
「ゲームをしていて声を上げてはいけない」というのは、ゲーマーにとってはすこし難しいはず。何より「ゲーム配信にはまったく向かない内容」という点が、配信者やストリーマーにとってはむしろ挑戦状かネタ振りかのように読めてしまうだろう。
発売された10月28日には、ガッチマン、兄者弟者、レトルト、ポッキー、しゅうゲーム、加藤純一などゲーム実況者たちがこぞってプレイ。VTuberでもにじさんじ・壱百満天原サロメとましろの2人が早々とプレイし、注目度の高さを伺わせていた。その後もさまざまな配信者らがプレイしており、YouTube/Twitchともに多くのプレイ動画を見つけることができる。
配信や動画に綺麗にプレイ内容を収めようと、ゲームをまともにプレイすると、まったくの無言かささやき声でプレイせざるを得ない。設定がうまくいかないとリスナーへの説明やコメントとの会話だけでアウト判定になってしまう。そのためか「ASMRのようなホラーゲーム配信」とコメントされることもある。
さまざまな驚かし要素、ギミックを駆使してプレイヤーを恐怖に陥れる本作。見事にどん底にたたき落とされた配信者のひとりが、にじさんじ所属のバーチャルタレント、フレン・E・ルスタリオである。スタートした直前から「待って、すでに怖いんだけど」と言い始め、風のさざめきや遠くからの声を聞いただけでビクリと反応してしまうほど。
普段の配信ではハツラツとした言動でリスナーを笑わせてくれる彼女だが、この配信ではささやき声メイン、声を押し殺しながらゲームをすすめ、漏れる息もか細いものに。「ホラーゲームを怖がりながら進める」という、まさに典型的かつギャップも相まってのおもしろい配信となった。
では、フレンとは逆にホラーゲームに高い耐性をもつ者が『DON'T SCREAM』をやってみるとどうなるだろうか。おなじくにじさんじ所属で、指折りの“ホラゲ強者”である空星きらめは、まさに強者らしいプレイをみせた。
本作はプレイヤーが怖がったりして足を止めると進行の時間が止まるわけだが、彼女の場合は一切止まることなく歩き続け、さまざまな驚かしギミックにもほとんど反応すること無く、普段のようにリスナーと小ボケを挟みながら雑談を続けるという強心臓ぶりをみせてくれた。
驚かしポイントに出くわすと「まぁそういうなるよね、わかってた」とキッパリ言い切り、「うわぁーこわーい!」と棒読みで声を上げ、雑談中に訪れたギミックに対して「いまきらめが話しだそうとしてたのに驚かしに来るなよ。空気読めよ」とバッサリ。
加えて「このゲームさ……」とゲームに対して思うところをポツポツと話し、配信中盤からはゲーム内のマップを自由に探索しはじめるほど。空星きらめを「ホラゲ強者」たらしめるゆえんが際立つ内容になっている。
ホラゲ耐性の高さから配信の内容がゲーム攻略の方向へと向かっていくという点では、壱百満天原サロメもそのひとりだ。彼女がデビュー当初に大ブレイクしたきっかけとなったのが『バイオハザード7 レジデント イービル』だったことからもわかる通り、多少はホラーゲームに慣れていることは証明済み。
くわえて、彼女はやりこみ要素があるゲームに関してはしっかりとプレイしようとするタイプであり、多くの人が1回きりの配信で終わっているなかで、「未探索箇所の探索」と称して2度目の配信をするほどだ。
サロメといえばハイトーンな声とハイテンションなお嬢様口調を思い出すファンが多いかもしれないが、じつは深夜の遅い時間ではローテンションかつボソボソとした口調でゲーム配信をすることがある。
そういった配信で聴ける彼女の繊細かつしっとりとした声色を、相性抜群のホラーゲームとともに楽しめる。壱百満天原サロメのファンであれば要チェックな配信ではないだろうか。