減少続く『Pokémon GO』スポンサー 吉野家の去就から考える“位置ゲー”長期運営の難しさ

減少続く『ポケGO』スポンサー “位置ゲー”長期運営の難しさ

 吉野家は10月28日、『Pokémon GO』との公式スポンサー契約を終了し、店舗に設置されていた「ポケストップ」「ジム」を2024年1月1日付けで撤去すると発表した。

 突如舞い込んできたスポンサーの去就に関連するニュース。ユーザーの反応のなかには、「不便になる」「いつかはこうなるだろうと思っていた」といった声も見られた。

 吉野家のスポンサー契約終了は、『Pokémon GO』にどのような影響を与えるだろうか。一連の動向から、位置情報ゲームを長期運営する難しさについて考える。

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 『Pokémon GO』は、『Ingress』などのタイトルで知られる米・Nianticと、「ポケットモンスター」シリーズの権利を持つ株式会社ポケモンが共同で開発する、モバイル向け位置情報ゲームだ。プレイヤーは、AR・GPSの活用によってリアルと連動した世界で、ひとりのトレーナーとして、ポケモンの発見や捕獲、育成、バトルなどに勤しんでいく。

 ゲーム内には、「ポケストップ」「ジム」と呼ばれるゲームの進行に不可欠なスポットが用意されている。前者では、モンスターボールやキズぐすりなどのアイテムとXP(トレーナー経験値)を獲得でき、後者では、ほかのプレイヤーとポケモンたちを介したバトルを行える。これらは現実世界に存在するさまざまなロケーションとリンクする形で設置されている。名所・史跡や美術館・博物館、役所、公園などがその中心だが、一部、公式スポンサー(オフィシャルパートナー)となっている企業が全国に展開する施設・店舗なども選ばれている。

 吉野家の発表は、この要素に関連するもの。同社と『Pokémon GO』との公式スポンサー契約が終了となることで、これまで店舗に設置されてきた「ポケストップ」「ジム」が撤去される。吉野家は2020年10月より約3年間、オフィシャルパートナーとして提携を続けてきた。『Pokémon GO』、さらにはユーザーにとって、重要な場所のひとつとして機能してきた同店舗だったが、2024年1月1日以降は、これまでのように利用できなくなる。

吉野家以外にも相次いできたスポンサーの撤退。2024年は正念場とも言える1年に

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 今回発表された、吉野家の『Pokémon GO』スポンサーからの撤退。この1件だけを見れば、いちスポンサーの去就にとどまる、取るに足らない話題かもしれない。しかし、少し広い視野で考えると、点のように同タイトルを取り巻いていた出来事が線としてつながってくる。

 2023年11月現在、『Pokémon GO』は7社の国内企業とスポンサー契約を結んでいるとされている(契約終了が発表された吉野家を除く)。そこには、ファミリーマートやソフトバンク、南海電鉄グループ、伊藤園など、名だたる大企業がラインアップされているが、もっとも多かった時期と比べると、その数は激減している。2018年以降、2022年末までに、TOHOシネマズ、ファミリーレストランチェーンのジョイフル、レンタルショップ「TSUTAYA」などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ、日本マクドナルド、イオングループ、セブン-イレブン・ジャパン、マツモトキヨシ、あきんどスシロー、はなまるうどん、小田急グループと、全国各地に施設・店舗を抱える企業が相次いで撤退しているのだ。もちろん先に紹介した南海電鉄グループや日本赤十字社など、その間に新たに契約を締結する企業もあった。しかし、パッと見て分かるとおり、かなりの規模縮小となっていることは間違いない。吉野家が撤退に至る過程で、『Pokémon GO』には向かい風が吹き続けてきたことになる。

 その背後には、ブームの収束やコロナ禍による影響のように、ある程度致し方のない事情もあったのだろう。しかし、双方にとってメリットのある施策が打てていれば、このような事態とはならなかったのではないかという見方もある。直近、『Pokémon GO』運営は、不具合への対応や仕様変更などで、ユーザーから強く糾弾されてきた。そうした一つひとつの行動の結果が、各企業のスポンサーからの撤退、さらには「ポケストップ」「ジム」の減少によるユーザーエクスペリエンスの低下につながってきたのではないか。このままでは、今後もドミノ倒しのように、スポンサーの撤退が続いていく可能性もある。2022年末以来となる大手の契約終了。2024年は『Pokémon GO』にとって、正念場とも言える1年となるのかもしれない。

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