イジられ役なだけじゃない、真摯なアーティストとしての姿 にじさんじ・甲斐田晴の“人を惹き付けるギャップ”を振り返る
同期とともにふざけ、さまざまな建築をおこない、周りからはイジられる……『Minecraft』にみる甲斐田の姿
そんな甲斐田晴は、アクションゲームを中心にFPSゲーム・RPG・シミュレーションゲームなどさまざまなゲームジャンル・タイトルを配信内でプレイしており、自分のことを「器用貧乏だ」とも評価している。とはいえ実際に彼の配信を見てみればわかると思うが、十二分に高いゲームセンスを持っていることは明白でもある。
彼が配信で数多くプレイしているタイトルでいうと『Minecraft』が真っ先に思い浮かぶだろう。にじさんじの『Minecraft』サーバーで活動しはじめた当初は、同期の長尾・弦月らと3人で行動を共にし、イタズラ合戦など多くの見どころを生み出していった。
とくに自宅(拠点)を平野に作っていたはずなのに、ログインしたら山の中にあった……というエピソードは、にじさんじ『Minecraft』史において屈指のイタズラ・ドッキリではないだろうか。
この「甲斐田の自宅を山にする」というドッキリを筆頭に甲斐田がおもにイタズラを仕掛けられることが多かったことで、2021年以降には「不憫でヘタレなイジられ役」というイメージが固まり、にじさんじのファン全体に浸透していくきっかけとなったといえるだろう。
また、数ヶ月先にデビューしていた先輩・イブラヒムの建築に影響され、彼から建築スキルを学ぶと、にじさんじ内に新たに作られたサーバーでさまざまな建物を建築していった。
もともと材料生成用のトラップなどを一人で作り上げるほどの知識を有していた甲斐田だが、高層タワーマンション、祇園の町並みや建物を模した「ネオ祇園」、モダンデザインな建築群、水族館、「ゴエモンインパクト」など、多種多様な建築物を数年にわたって建てていくこととなる。
気がつけば彼が普段遊んでいる場所は、さまざまな建築物が林立するオリジナリティあふれる空間となったのだ。
ちなみに「ネオ祇園」内にある神社に訪れたにじさんじのメンバーらが「願い事/ダジャレ/ドギツい欲望」を甲斐田の名前を騙って絵馬にして置いていくなど、ここでも「甲斐田イジリ」が発生している。
しかも日本のメンバーだけでなく、海外メンバーも訪れ、悪ノリに乗じていくようなシーンも見られている。ちなみにだが、この「甲斐田絵馬イジリ」の流れを作ったのは同期の長尾景であり、海外タレントを当地までアテンドし、「こういうノリだ」と説明しているのも、多くの場合長尾景である。
こうして「甲斐田イジリ」は、その後デビューしていった後輩らにも伝わっていき、にじさんじの先輩・椎名唯華は長年の友人でもあるホロライブ・猫又おかゆとの定期ラジオのなかで、「『Minecraft』内での名所」というテーマでトークをしていた際に甲斐田の建築をいくつも紹介しつつ、「甲斐田イジリ」についても猫又おかゆやホロライブリスナーに紹介するということもあった。
さわやかでフレンドリー、愛嬌を持ち合わせつつ、「イジリたくなる」ような隙をついつい見せてしまうことが甲斐田独特の立ち位置の基礎となったのかもしれない。すこし性質は異なるが、筆者が見る限りでは現在活動を休止中の舞元啓介にも似た空気感を持ち合わせているように思える。