コントローラーを通じて感じるリアルな“重み”や“質感” 『Forza Motorsport』はカジュアルプレイヤーもレースの魅力を楽しめる作品だ

『Forza Motorsport』ハンズオンプレビュー

良好な“手触り”と豊富なアシスト機能 アクセシビリティも充実

 だが、なにより重要なのはゲームとしての手触りだろう。筆者個人の感覚としては、コントローラーで操作しているにも関わらず、アクセル/ブレーキの操作やコーナリングなどの一つひとつの動きにしっかりとした“車を動かす重み”や“アスファルトをなぞる質感”を感じられたのが強く印象に残っている。これは気軽に操作できた『Forza Horizon 5』と比較しても明確に違いを実感できるものであり、最初は慣れない操作感が故に操作ミスが頻発してしまったのだが、徐々にそれが手に馴染み、ついには病みつきになっていくのである。これは筆者が過去に触った、リアル寄りのほか作品では感じられなかったもので、あえてゲーム用に“強めの味付け”を施しているのかもしれない。直線を加速する時の爽快感や、急激なヘアピンカーブを切り抜けた時の達成感はもちろんだが、常にそのベースに車を動かすこと自体の直感的な気持ち良さが力強く表現されているために、ちゃんと“ゲームとして面白い”と感じられるのだ。

 そんな本作の“ゲームとしての面白さ”を文字通り支えてくれるのが、「Forza」シリーズの特徴でもある豊富なアシスト機能である。本作も過去作同様にブレーキングやスロットル、ステアリングなど、どこまで自動で制御してくれるのかを細かく調整することが可能であり、6段階あるプリセットを最大に設定すれば、アクセルを踏んでおくだけでゴールすることもできてしまう。また、視覚面においても、コースの端を強調したり、他の車両の接近をマーカーで知らせるといった機能が備わっており、まさに自分のスキルや環境に合わせてゲームを調整できるようになっているのだ。

 これは難易度設定についても同様となっている。本作では対戦相手のAI性能を8段階から調節することができる「DRIVATAR レベル」と、レース自体のペナルティなどを調整できる「ルールセット ボーナス」を選ぶことができるようになっているのだが、特に重要なのが後者であり、下記の3種類が用意されている。

・クラブ ルール : ボディ ダメージのみ/リワインド オン/ペナルティ(限定)
・スポーツ ルール : シミュレート済みの燃料とタイヤ/リワインド オン/ペナルティ(中)
・エキスパート ルール : 損傷、燃料、タイヤのシミュレート/リワインド オフ/ペナルティ(フル)

 各項目はそれぞれ「レース中における車のダメージの再現範囲」、「巻き戻し機能(リワインド)の使用可否」、「コースアウトや他の車と接触した際のペナルティタイムの発生量」を示す。たとえば、「クラブ ルール」を選んだ場合であれば、操作ミスによる車の損傷やペナルティを気にすることなくレースを楽しむことができるというわけだ。リワインドについては前作や『Forza Horizon 5』などと同様の仕様となっており、せっかく上位を走っていたのに終盤で取り返しのつかないミスをしてしまったという場合も、気軽に数秒前に遡ってやり直すことができるうえ、コースの難所を繰り返し練習するツールとしても活用することができる。筆者も、初めてのコースをプレイするときにはこれらの機能を活用して慣れるところから始め、徐々に緩和しながら自分のスキルに挑戦するという遊び方をすることで、少しずつ上達を実感しながらより深い魅力を感じることができるようになっていった。

 そんな“自分のスキルや環境に合わせてゲームを調整できる”という点において重要なのが、開発者自ら「これまでで最もアクセシブルなゲーム」と語る本作のアクセシビリティ機能である。詳細については公式の記事 が用意されているのでそちらを参照いただくとして、今回のプレビューでも実際にその機能を体験することができた。

参考:https://news.xbox.com/ja-jp/2023/05/11/forza-motorsport-accessibility-features-blind-driving/

 なかでも特徴的なのが全盲または弱視のプレイヤーのために作られた「ブラインド ドライビング アシスト」。これは音の位置や音声ガイド、音響キューといった音声を通して「どの方向へ向かえば良いのか(ステアリング ガイド)」、「今はコーナーのどの位置にいるのか(コーナー キュー)」、「どれくらいコースの端に近づいているのか(コース リミット キュー)」といった情報を伝えてくれる機能である。

 もちろん、これが実際にどの程度有効なのかについては当事者からのフィードバックが必要となるが、あくまで筆者が体験した感想としては、確かに音声情報のみで走行状況を確認し、さらには目を閉じた状態でレースを完走することができたことに強く驚かされた。とはいえ、レースゲームという特性上、アクセルを踏み込んでしまうと判断速度が追いつかなくなってしまうのと、システムに慣れるのに時間を要したこともあり、あくまでゆっくりと走り、アシスト機能やオプションを活用し、何度もリワインドしながら試行錯誤を重ねた末のゴールであることは強調しておきたい。また、本プレビュー時点では日本語音声に対応しておらず、メニューテキストの読み上げやコーナー ナビゲーション(今後のコーナーの方向と大きさを音声ガイドで示す)といった一部機能が英語のみの対応となっていたため、ローンチ時、あるいはアップデートによって反映されることを願いたい。

 『Forza Motorsport』におけるアシスト機能やアクセシビリティ機能の充実は、本作がマニアックなゲームではなく、むしろより多くの人々にモータースポーツの魅力を味わってほしいという開発者の想いが込められた作品であることを何よりも示しているだろう。実際、プレビュー前は「『Forza Horizon』は大好きだけど、『Forza Motorsports』シリーズは敷居が高いかも……」と不安を感じていた筆者も、レースを通してすぐにその手触りに魅了され、自分に合わせてゲームを調整しながら、何度もプレビュービルドをプレイしている。一刻も早く次のレースに進みたいところだ。

 『Forza Motorsport』はPC/Xbox Series X|Sで2023年10月10日に発売予定。発売日と同日にXbox Game Passでの配信も予定されている。

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