『風来のシレン6』に期待されるのはシンプルな“正統進化”? シリーズ13年ぶり最新作の発表に思うこと
9月14日、任天堂の新作情報番組「Nintendo Direct 2023.9.14」が配信となった。
同番組で情報が解禁され、話題を集めたタイトルのひとつが、『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』(以下、『風来のシレン6』)だ。シリーズから新たなナンバリングが誕生するのは、2010年12月以来、約13年ぶりとなる。
本稿では、『風来のシレン6』の発表を入り口に、同タイトルがいま発売される理由と、期待したい要素について考える。
和製ローグライクの金字塔「風来のシレン」シリーズ
「風来のシレン」シリーズは、チュンソフト(現スパイク・チュンソフト)が開発・発売を手掛けたダンジョンRPGだ。プレイヤーは、縞合羽に三度笠という旅人風の服装をした主人公・シレンを操作し、アイテムなどを駆使しながら、ランダム生成のダンジョンの踏破を目指す。ゲーム性における最大の特徴は、一度ゲームオーバーになると、進行度がゼロとなる点。近年になり、一般的となった「ローグライク」「ローグライト」といったサブジャンルに通ずる性質を持っている。
当初は『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』に続く「不思議のダンジョン」シリーズの第2作としてリリースされたが、その後、人気・評価を獲得したことなどにより、「風来のシレン」シリーズとして独立した。
シリーズのナンバリングが発売となるのは、『不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス』(2010年)以来、約13年ぶりのこと。発売日は2024年1月25日を予定している。
途絶えたかと思われたシリーズの歴史。なぜいまになって最新作が発表されたのか
先にも述べたとおり、「風来のシレン」シリーズは、「ローグライク」「ローグライト」と同様のゲーム性を持っている。
ローグライクとは、コンピューターゲームの草分けのひとつ『ローグ』に類似した(「like」という英単語には「似た」「~のような」という意味がある)性質を持つタイトルを一括りにしたサブジャンルのこと。本来はテキストベースのインターフェースで進行していくゲームを指して使われていた。しかし近年ではそれ以上に、ランダム生成のダンジョン、ターン制のバトルシステム、パーマデス(一度デスすると、振り出しに戻る)、リソース管理といった要素を重視し、同ジャンルに分類する傾向がある。また、上記のような重要と考えられている性質を部分的に取り込んだジャンルを、「ライトにローグを模倣した作品群」として「ローグライト」と呼ぶ向きもある。
日本国内では、当初「風来のシレン」が分類されていた「不思議のダンジョン」シリーズが国産ローグライクの草分けとされている。インターフェースには、時代に合わせたグラフィカルなものが取り入れられてきたが、根幹となるシステムにはすべて、ローグからの影響がありありと感じられるものが採用されている。
近年、ローグライクはトレンドジャンルとして台頭の気配を見せつつある。ここ数年で数えきれないほどのタイトルが、さまざまなディベロッパーから送り出されてきた。ことインディーにおいては、プリミティブな設計を持つ同ジャンルが、短期間・低予算でも作品として形にしやすいのだろう。直近では、『Vampire Survivors』なども話題を集めた。
『風来のシレン6』を開発するスパイク・チュンソフトによると、2020年にNintendo Switchに移植された『不思議のダンジョン 風来のシレン5 plus フォーチュンタワーと運命のダイス』の好評が、13年ぶりのナンバリングの制作につながっているのだという。一連の動向の背景には、近年のローグライクのトレンド化からくる影響があったに違いない。シリーズファンが待望していた新作の発表は、時代に後押しされたといっても過言ではないだろう。