4年ぶり開催のモンハン『狩猟音楽祭2023』レポート 感動と興奮が蘇った“音楽による狩猟の旅”

モンハン『狩猟音楽祭2023』レポート

シリーズ歴代の楽曲も多数演奏 「モンハン」の歴史を感じさせる

閃烈なる蒼光/ジンオウガ
閃烈なる蒼光/ジンオウガ

 後半は、『モンスターハンターポータブル 3rd』のメインモンスターとしてお馴染みのジンオウガの狩猟曲「閃烈なる蒼光/ジンオウガ」からスタート。オーケストラによる壮大なサウンド、HIDE×HIDEによる三味線と尺八の和の世界観。そこに加わる宮﨑大介によるエレキギターは、「雷狼竜」とも呼ばれるジンオウガにピッタリ。雷鳴のようなギターのサウンドは、まさしくジンオウガの咆哮のようでもあった。

 来年は「モンハン」シリーズが20周年であり、『モンスターハンター4』が今年10周年ということから、『4』で人気の「光蝕む外套/ゴア・マガラ」「光と闇の転生/シャガルマガラ」をはじめ、シリーズ歴代の楽曲も多数演奏されてファンを熱くさせた。

 「光蝕む外套/ゴア・マガラ」「光と闇の転生/シャガルマガラ」の作曲を担当した作曲家・鈴木まり香からのコメントも紹介された。それによれば、二体のモンスターは影と光という関係であることから楽曲も対で考えられ、「光と闇の転生/シャガルマガラ」には「光蝕む外套/ゴア・マガラ」のフレーズが使われていると言う。また、ゴア・マガラは「ワル格好良く重みのある特徴のある音」というオーダーがあったそうで、原曲ではオーストラリアの先住民族アボリジニの伝統楽器ディジュリドゥの音を使用。「シャガルマガラ」は、美しさや神々しさを脅威に感じる解釈で楽曲を組み立てたとのこと。続けて聴くことで意味が増すこの2曲。それらを元に生み出された『4』のエンディング曲「ひとつの唄」のメロディへと収束して行くような物語性が、集まったハンターたちの気持ちをさらにアツくさせた。

壮麗纏いし銀盤の貴人/イヴェルカーナ
壮麗纏いし銀盤の貴人/イヴェルカーナ

 『モンスターハンター:アイスボーン』の凍てつく氷のフィールドで繰り広げられる過酷な狩猟が思い出された「壮麗纏いし銀盤の貴人/イヴェルカーナ」は、追跡時に流れる「The Chase」も含まれた本公演ならではのアレンジで演奏され、美しいピアノも実に印象的だ。また、『ポータブル3rd』のアマツマガツチの狩猟曲として約10年前に作られた「大風に羽衣の舞う 〜 嵐の中に燃える命」は、原曲にはドゥドゥクという民族楽器が使われているとのこと。他にも『モンスターハンターワールド』の楽曲など、シリーズを彩ってきた多彩な楽曲が演奏され、「モンハン」の歴史を感じさせた。

百竜ノ淵源
百竜ノ淵源

 本編の最後には『ライズ』に登場するナルハタタヒメの狩猟曲「百竜ノ淵源」が、加藤いづみと宮崎カナエによるツインボーカルで披露された。2人の歌声は、まるでイブシマキヒコとナルハタタヒメのようで、モンハン語による歌詞も、それぞれのモンスターを象徴したものになっているとのこと。民族的な歌い回しのボーカルがドラマチックなサウンドとも相まって、どこかヨーロッパの村で語り継がれる民話のような世界が広がった。

 アンコールの最後には、これを聴かずには終われないといった雰囲気で、初代『モンスターハンター』のオープニングテーマである「Monster Hunter」が演奏された。『モンハン』の代名詞とも呼ぶべき、あのお馴染みのファンファーレが鳴り響くと会場は拍手喝采に包まれ、音楽による狩猟の旅を大団円で締めくくった。

 ゲームにおいて音楽は必要不可欠な一大要素だ。こと「モンハン」シリーズにおいては、モンスターの数だけ音楽があり、時にはユーザーを鼓舞し、時には絶望にも陥れてきた。音楽を聴いた瞬間、ゲームをプレイしたときの感動や興奮が蘇り、会場に集まった観客の多くが脳内でゲームをプレイしながら演奏に聴き入ったことだろう。また本公演では音楽制作における苦労や作曲家の思いも聞くことができたが、こうした機会はなかなかないものだ。

 「モンハン」好きの、「モンハン」好きによる、「モンハン」好きのための『狩猟音楽祭』も15周年ということで、来年はさまざまな企画を立案中とのこと。「オケコンも、大阪と東京だけでなく、他の地域にも行けたら」と話した辻本氏。シリーズはもとより、『狩猟音楽祭』の今後への期待も高まるコンサートとなった。

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