『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』は、クラシック音楽がエンタメと文化をつなぐ“新時代のRPG作品”だ 各要素が高次元で調和した同作をレビュー

『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』は“新時代のRPG作品”だ

 6月28日、スマートフォン向けRPG『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』がサービス開始となった。

 アニメと連動するメディアミックスプロジェクトとして、発足当初より注目されてきた同タイトル。ようやくのリリースを迎え、界隈は大きな盛り上がりを見せている。

 今回、『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』のサービス開始にあたり、先行プレイの機会を得た。本稿では、プレイから受け取ったインプレッションを、主に「ゲームシステム」「シナリオ」「音楽」といった観点から紐解いていく。

トップクリエイターが集結 モバイル向けRPG『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』

『takt op.(タクトオーパス) 運命は真紅き旋律の街を』ファイナルトレーラー

 『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』はスマートフォン向けRPGだ。舞台となるのは“黒夜隕鉄”の襲来によって人類が滅亡の危機に瀕した西暦2067年の地球。主人公・朝雛タクトは、音楽を力に戦う兵器・ムジカートを統率するまとめ役・コンダクターとなり、音楽を忌み嫌い、人を喰らう獣・D2の掃討を目指す。

 登場するムジカートたちは、実在するクラシック楽曲をモチーフにデザインされている。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲した「運命」、グスターヴ・ホルストが作曲した管弦楽曲「木星」、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲したピアノ曲「きらきら星変奏曲」、リヒャルト・ワーグナーが作曲した劇曲「ワルキューレ」、ジョルジュ・ビゼーが作曲したオペラ「カルメン」などが主要メンバーとなり、同作の物語を彩っていく。

 制作スタッフには、各分野の第一線で活躍してきたクリエイターたちが集められた。原作に、「サクラ大戦」シリーズ、「天外魔境」シリーズ、「魔神英雄伝ワタル」シリーズなどで知られる広井王子氏、キャラクターデザインに、イラストレーターとして専門学校HALのCMアートワークやエナジードリンク「ZONe」のキービジュアル、九条林檎・馬犬といったVTuberデザインを手掛けてきたLAM氏、シリーズ構成・脚本に、TVアニメ『PSYCHO-PASS』『魔法使いの嫁』などで知られる高羽彩氏、音楽に、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』のメインテーマなどの代表作を持つ坂本英城氏、キーピアニストに、YouTuberとしても活動するピアニスト/作曲家のまらしぃ氏がクレジットされている。主題歌『SYMPHONIA』を歌うのは、説明不要のトップシンガー・中島美嘉だ。

 『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』は、メディアミックスプロジェクト『takt op.』を構成するひとつのコンテンツ。2021年10月には、TVアニメ『takt op.Destiny』も放送され、こちらも好評を博している。ファンの大きな期待が寄せられるなかでリリースされたのが、『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』だ。

捨てキャラなし、全キャラクター強化可能なゲームシステム

 プレイを通じてまず感じたのは、グラフィックの美しさについて。LAM氏が手掛けたムジカートたちのキャラクターデザインが魅力的なのは言わずもがなだが、それ以外にも、アンティーク的なタッチで描かれたイベントスチルや背景が秀逸だった。クラシック音楽を題材にしたゲームということもあり、ムジカートたちの衣装や、彼らが暮らすシンフォニカの街並み、建物の各部といったビジュアルパーツはすべて、中世ヨーロッパを感じさせるデザインとなっている。その美しい世界に目を奪われるプレイヤーはきっと多いはずだ。

 ゲームは、スタミナ要素である「指揮力」を消費しながら、メインクエスト、サブクエストに取り組んでいく仕組みとなっている。メインクエストの「ストーリー」ではその進行度に応じて、プレイヤーレベルにあたる「指揮レベル」や、サブクエストのひとつ「自主訓練」で入手できる「探索の証」が一定数必要となる。一般的なモバイル向けRPG同様、序盤は行き詰まることなく進められるが、ある程度物語が展開すると、こうした要素などにより進行が制限されるため、バランスのよい攻略が肝要となる。

 リリース時点で用意されている「ストーリー」は10章まで。その半分の5章ほどまで進むと、「指揮レベル」や「探索の証」とは別に、戦力面も課題となってくる。バトルシステムとして面白くなってくるのはこのあたり。難易度が上がるにつれて編成を考える必要が出てくるため、俄然やりがいが生まれてくる。

 ムジカートたちには、それぞれにクラスが割り振られている。その内訳は、敵の攻撃を一身に受け、パーティーの壁的役割を担う「ディフェンダー」、攻撃と防御のバランスが取れた「アタッカー」、攻撃力と行動速度に長けた「トリッカー」、味方のサポートと遠距離物理攻撃を得意とする「シューター」、複数体の敵を巻き込む特殊攻撃がおこなえる「ブラスター」、味方の回復をメインの役割とする「ヒーラー」の全6種。それぞれの特性を踏まえ、うまくパーティーを編成し、強力な敵へと立ち向かっていくことが、『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』の醍醐味である。

 ここで気になってくるのが、攻略にレアリティの高いキャラクターが必須であるかという点。『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』には、ベースとなる能力・スキルの強弱によって、ムジカートたちにランク1~3までの初期レアリティが設定されている。ガチャにあたる「読譜」を介さずパーティーに加入するキャラクターはほとんどがランク1であるため、手っ取り早くレアリティの高いキャラクターを手に入れるためには、ガチャを回すのもよいだろう。だが、同作はランク1のキャラクターだけでもきちんと戦っていけるシステムになっている。

 キャラクターのレアリティは、「ノーツ」と呼ばれる各ムジカート専用の強化アイテムを集めることで、ランクアップが可能(最大はランク5)。ノーツは「読譜」による重複や、クエスト報酬、イベント報酬から入手できる。レアリティが高いほど、より多くのノーツを求められるため、ランクアップが難しい。一方で、自動加入するメンバーや読譜で重複しやすいランク1のキャラクターは素材が集まりやすく、容易にランク2、さらにはランク3へと成長させられる。そのため、肌感覚では、初期レアリティの差はそこまで強さに影響しない。これが『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』のゲームシステムがよく練られている点だ。

 この長所を後押しするのが、豊富なキャラクターの育成要素だ。『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』には、ほかのモバイル向けRPGにもあるキャラクターレベルや、「音源楽装」と呼ばれる装備、さらには装備ランク・装備レベルの概念のほか、「スコア」や「音素」と呼ばれるオリジナルの育成要素が盛り込まれている。

 前者の「スコア」は、全12ステージ・各5段階のランクを持ち、1ステージから順に素材を集めることで、ステータスの底上げ・スキルの習得がおこなえる仕組み。ムジカートの個性にあわせ、あらかじめ道筋が用意されている一本道の育成要素だ。

 他方、後者の「音素」は、各キャラクターに用意された7つの空きパネルを自由に組み合わせ、決まった形の「音素結合」を作ることで、個人、またはパーティー全体にパッシブのステータスバフを付与する仕組みである。各パネルにはクエストの報酬として入手できる音素アイテムをはめ込める。同素材はそれぞれに、「物理攻撃+〇〇」といったステータスの上昇効果が割り振られており、かつそれらを固有の強化アイテムを使ってレベルアップさせることもできる。先述の「スコア」に対し、ムジカートの個性による差を生まない、自由度の高い育成要素が「音素」となっている。

 キャラクターレベル、装備、装備ランク・装備レベル、「スコア」、「音素」といった豊富な育成要素があるおかげで、『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』では、単純なレアリティのみによってムジカートの強さが決まらない。ともするとpay-to-win(※)になりがちなモバイル向けRPGの弱点を補うシステムを持っているのが、同タイトルなのである。

 私の実感では、少なくとも7章まで攻略した段階において、高ランクのキャラクターが有無を言わせないほどの戦力となることはなかった。ゲームシステムには過去の同ジャンルタイトルたちの反省がうまく生かされているように感じた。

※基本プレイ無料(一部アイテム課金あり)のゲームにありがちな、課金によってゲームの進行が大幅に有利になる特性のこと

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