中島美嘉が語る「クラシック音楽」の魅力と、“役割と意思”の間で戦うことの大切さ

中島美嘉が語る“クラシック音楽”

 2021年配信予定のスマートフォン向けアプリゲーム『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』の主題歌「SYMPHONIA」は、クラシックとJ-POPを融合させた壮大なナンバーだ。

 作詞・作曲は、アニメ、ゲームなどの楽曲を数多く手がけているrionos。ベートーベンの交響曲第5番「運命」のフレーズをサンプリングし、壮大な世界観と繊細な感情を共存させたこの曲は、“クラシックの楽譜の力を得た少女たちが、音楽を取り戻すために戦う”という『takt op.』のコンセプトをしっかりと際立たせている。

 リアルサウンド テックでは、「SYMPHONIA」を歌う中島美嘉にインタビュー。楽曲を歌うにあたって意識していたこと、『takt op.』の印象、クラシック音楽への愛などについて語ってもらった。(森朋之)

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※インタビューは新型コロナウイルス感染症対策を徹底して実施しています。
※マスクを外した撮影も、空間内を最小人数かつ適切な距離を取った形で行いました。

『takt op.』と中島美嘉の共通点

アプリゲーム『takt op.(タクトオーパス) 運命は真紅き旋律の街を』PV

ーーアプリゲーム『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』の主題歌「SYMPHONIA」は、クラシックをモチーフにした楽曲。中島美嘉さんだからこそ表現できる楽曲だと思います。

中島美嘉:ありがとうございます。私も「すごくいい曲だな」と思ってます。ただ、最初にこの曲を聴いたときは、「自分が歌っていいのかな」という気持ちだったんですよ。今までいろんな曲を歌ってきましたが、こういう雰囲気の楽曲は初めてだなという印象があって。すごく広がりがある曲で、自分の声が乗ったときにどうなるのか想像できなかったんです。

ーー実際に歌ってみたときの手応えはどうでした?

中島:正直に言うと、レコ―ディングは大変でした。パートごとに、「どう歌えば効果的に聴こえるだろう?」とスタッフと話し合いながら、何度も試して。たとえば「出だしのフレーズ〈“透明な夢を/そっと抱き寄せた/いつか崩れゆく星の上”〉をしっかり押し出そう」とか「次のブロックはきれいに沈むようなイメージで」とか。感情が自然に入ったときは、みんな何も言わなくなるんですけどね(笑)。

ーー壮大なスケールと真摯なメッセージ性を含んだ歌詞も印象的でした。

中島:まず、風景や色がバーッと頭のなかに浮かんできて。歌詞に込められた意味については、まだ上手く説明できないとうか、もっと考え尽くさないといけないなと思ってますね。(歌詞をじっくり読みながら)すごく大きい世界なんですよ。そのなかに入り込んで歌っているような感覚ですね、今は。

ーーベートーベンの交響曲第5番「運命」の旋律が取り入れたアレンジについては?

中島:本当に申し訳ないんですけど、歌う事に集中し過ぎていて最初はどこに「運命」のメロディが入っているのか気が付かなかったんですよ。ディレクターが「ここだよ」と教えてくれても、歌ってるとスッと飛んでいっちゃって(笑)。もちろん、クラシックが好きな方はすぐにわかるだろうし、幅広い年齢層のみなさんに楽しんで聴いてもらえると思います。

ーーアプリゲーム『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』についても聞かせてください。クラシックの楽譜の力を宿して戦うキャラクターたちは、求められる役割と自分自身の意志の間で揺れ動いています。中島さんも似たような経験があるのでは?

中島:そうですね。「え、そんなふうに思われてたんだ?」というオファーが来たりするので。自分が持ってないものを求められた場合は、新たに身に付けるか、ちゃんと応えられるように違うところから引っ張って来なくちゃいけないでしょ? そういう意味では、ずっとオーディションを受け続けているような感覚は今もありますね。

ーー苦手なことを望まれても、出来る限り対応する?

中島:ウソをつくのは良くないから、どうしてもダメなときは、ちゃんとお断りしますよ。「何でもやります」は違うから。ただ、求めてもらえることは嬉しいし、出来る限りのことはやりますけどね。どちらかというと、やりたいことをやらせてもらっているほうだと思いますし。

ーー音楽性もそうですけど、メイク、ファッション、ヘアスタイルなどを含めて、ビジュアルでもしっかり個性を打ち出してきていらっしゃいますよね。

中島:そうですね(笑)。音楽のことで言えば、デビューから2年くらいで、あらゆるジャンルの曲を歌ってきたと思っていて。あの時期の経験があったから、いろんな曲を歌えているんでしょうね。メイクやファッションに関しては、本当は皆がいちばん好きなスタイルにしたほうがいいんだろうけど(笑)、今はあまり(外部の評価は)気にしてないですね。いろんな意見があるのは知りながら、見ないようにしてるので。何ていうか、「ずっと一緒でおもしろいのかな?」と思っちゃうんですよ。私としてはその時歌う曲に合わせて考えているので、「曲のイメージに合わせたら、こうなったんです」としか言えなくて。

ーー音楽性の広がりによって、表現の幅も大きくなっていると。歌を歌うことで、中島さん自身が強くなれている感覚もありますか?

中島:それはすごくあります。だから、『takt op.』のキャラクターが(音楽の力を宿して)戦ってくれてるのも嬉しいんですよ。私も似たような感じだなって(笑)。

ーーキャラクターにシンパシーを感じている、と。

中島:はい。といっても、私はすごく臆病なんですけどね。ライブでも、会場に来てくれた人たちに「このなかで一番弱虫だと思います」と言っているんですよ。こんな私でもステージに立ってるんだから、みんなも大丈夫よって。ヘンな褒め方をしているんですけど(笑)、本当にそう思っているんですよね。『takt op.』にも似たようなところがあるというか、女性が戦っている姿を見ると嬉しくなっちゃうんです。

ーー中島さんにとっては、ステージで歌うことが戦いなのかも。

中島:もちろん。そうじゃないと立つ意味がないと思ってます。みなさんの悲しさや苦しみを受け取って、目の前で代弁するというのかな。いつもそういう気持ちで歌っているので。以前はそんなこと考えていなかったし、歌うことだけに必死だったんですよ。でも、デビューから10年くらい経った頃に「こんなに怖がりの自分が歌い続けているのは、どうしてだろう?」と考え始めて。自分に長けているところがあるとすれば、人の気持ちを汲み取って、それを表現することかなと。

ーー『takt op.』は、キャラクターたちが葛藤を抱えながらも、仲間と一緒に戦っていますよね。

中島:そこもちょっと似てるんですよね。自分自身のステージなので、責任という意味で座長ではあるんだけど、“みんなで作って”という感じが強いんですよ。バンドはもちろん私のライブにはダンサーやバレリーナにも参加してもらっていて、彼女たちが踊るときは「私が一歩引く方がカッコよく見える」みたいなことをステージ上では常に考えていて。最近はダンスやバレエを楽しみにしてくれてるお客さんもいるし、みんなと一緒に続けてきてよかったです。最初の頃は「コンサートにバレリーナって、何?」という反応もあったので。

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