8万円のTWSはまさに“異次元のワイヤレスイヤホン”だ 格別の音質とカッコよさのHIFIMAN 『Svanar Wireless』を聴いて
いま、イヤホン製品はワイヤレス、そのなかでもTWS(完全ワイヤレスイヤホン)が主流となっている。価格も3000円程度のものから10万円近い超高級モデルまで登場し、ますます活況の様相を呈しているが、保守的な思想の人が多いのか、意外と似たようなイヤホンをしていたりもする。
しかし他人とは違う一目置かれるようなTWSが欲しい、デザイン的にかっこいい製品が欲しい、また有線イヤホンに比類する良サウンドのTWSが欲しいというユーザーもいるだろう。そんな人々のニーズにしっかり応えてくれる新製品が登場した。それがHIFIMANの『Svanar Wireless』だ。
HIFIMANはプラナー振動板(平面磁界型や平面駆動型)を採用する高級ヘッドホンで有名な新進気鋭のポータブルオーディオブランドだが、実はワイヤレスヘッドホンやTWSもラインアップ、幅広い製品をリリースしていたりもする。そんなHIFIMANから新たに発売された『Svanar Wireless』は、同社のTWSのなかでもフラッグシップに位置づけされるモデルとなる。音質パートに関しては、他社には真似できない、こだわりの詰まった内容を持ち合わせているが、それにも増して魅力的なのが、ズバリ、デザインの格好良さだ。
イヤホン本体は、“バータイプ”と呼ばれているデザインを採用しているが、造形が細やかさがまったく違う。音質とともに上質さや使い勝手が徹底追求されたデザインは、ちょっとしたシルバーアクセサリーのよう。名前の由来となった「Svanar」と同じエルゴノミックデザインを採用するインナーハウジング(耳側の部分)は、カーボン素材を採用することで実現した軽量さともあいまって、ピタッとした軽快なフィット感をもたらしてくれる『Svanar Wireless』には高級モデルのお約束であるANC(アクティブノイズキャンセリング)機能が搭載されているが、高精度なシステムに加えデザインの秀逸さも手伝ってか、最大-35dBもの騒音低減能力を持ち合わせている。
いっぽう、専用ケースにも注目だ。まるでジュエリーケースのような他に類のないデザインを採用するとともに、クラムシェル型にオープンする蓋を持ち上げると、シルバーカラーのイヤホン本体が登場する。なかなか憎い演出だ。また、(専用ケースは)ワイヤレス給電に対応していたり、大柄なイヤーピースを付けてもしっかり収納&充電できたり、イヤホンが取り出しやすかったりと、使い勝手についても細部まで配慮されている。イヤホン本体も専用ケースも、所有欲を充分に揺さぶってくれる、そしてなによりもストレスなくスマートに使いこなせる、デザインとユーザビリティの両面から、完成度の高い製品に仕上がっている。
とはいえ、音質に徹底したこだわりを持つHIFIMANだけに、オーディオパートについては唯一無二の高音質技術が幾つも投入されている。まず、驚きなのが同社独自のR2Rラダー方式のDACシステム「HYMALAYA DAC」と、独立したバランス出力ヘッドホンアンプが搭載されていることだ。R2Rラダー方式? バランス出力?と言葉そのものに疑問が浮かぶかもしれないが、まずは順を追って説明させてもらおう。
一般的なTWSは、Bluetoothチップに内蔵されているDACやアンプを利用して、あのように小さいイヤホン本体に纏め上げられている。音質を追求するため独立したアンプモジュールを搭載する製品も存在しているが、あくまでも少数派だ。そんな状況のなか、HIFIMANは+-それぞれにパワーアンプ部を配置する(念のために書くが一般的なTWSは+のみ)バランス出力アンプを採用するとともに、DACまで独立させているのだ。
しかも、R2Rラダー方式という“どうやったらそんなものがTWSに積めるんだろう”と疑問に思ってしまうものだ。ちなみに、R2Rラダー方式のDACシステムとは、1bitごとに精密抵抗を配置することでマルチビットDACを実現しているもので、音のよさとDACチップの供給不足から近年採用が増えてきているタイプ。多数の精密抵抗を並べたり、前段にFPGAチップを配置するため、広いスペースが必要となってしまうことから、ヘッドホンアンプなどの据置型製品を中心に採用されている技術となっている。HIFIMANの『HYMALAYA DAC』も「『EF400』や『EF600』などの据置型ヘッドホンアンプで採用されているが、いっぽうでワイヤレスヘッドホン『Deva Pro』付属のBluetoothモジュールにも採用しており、小型化のノウハウはある程度持ち合わせていたりする。とはいえ、TWSに搭載してきたのには驚いた。既存のTWS製品とは一線を画す、特別な製品といえるだろう。
こういった音質のよさを活かすため、『Svanar Wireless』にはユニークな設定が用意されている。それは「HIFIモード」だ。
一般的なANC搭載イヤホンにはANCのオンオフ、外音取り込みモードへの切替などが用意されているが、『Svanar Wireless』はこれに加えてHIFIモードなるものを用意。音質最優先の動作を行うことで、ベストなサウンドを楽しむことができるようになっている。その分、バッテリー駆動時間は約4時間になってしまう(ANCモードで約6時間、通常モードで約7時間)が、専用ケースからフル充電3回がおこなえて16時間使えること、専用ケース自体がワイヤレス充電に対応していることなどから、日常的な仕様では特に不満を感じることはないはずだ。ちなみに、BluetoothコーデックはSBC、AACに加えてLDACにも対応。ハイレゾ級の良質なサウンドを楽しむこともできる。
ここまで徹底した音質追及を行っているだけあって、そのサウンドは格別といっていいレベル。一聴しただけでは有線イヤホンを聴いているのかと錯覚するくらい、良音質のサウンドが楽しめる。音色としては、明朗快活さとナチュラルさが絶妙にバランスしていて、歌声も生楽器も、とてもリアルに感じられる。たとえば『BADモード』の宇多田ヒカルはちょっとハスキーで大人っぽい歌声を聴かせてくれるし、サラ・オレインの声も伸びやかで活き活きとした歌声を楽しめる。米津玄師も高域が伸びやか、かつ深みのある歌声が楽しめる。歌声的には「M八七」がオススメだが、演奏は「KICK BACK」もなかなか。締まりのよい低音のおかけもあって、ノリノリのサウンドが楽しめる。音場の広がり感もよいため、安月名莉子「かたち」も楽しい。
このように、『Svanar Wireless』は音よしデザインよしの優秀機に仕上がっている。みんなが持っているありがちなイヤホンでは満足できない人、TWSといえど音質にこだわりたい人にオススメしたい、一聴の価値ある製品だ。
■商品SPEC
周波数特性:10Hz - 35kHz
ワイヤレス接続:Bluetooth 5.2
HIFIモード: 約4時間
ANCノイズリダクションモード:約6時間
トランスペアレントモード:約7時間
充電ケースの追加充電:3回まで
ANCノイズリダクション:約35db
充電ケースのみ重量:83.7g
イヤホン単体重量:8.0g
防水性能:IPX5
通信範囲:15m(障害物のないオープンスペース)
◎参考情報
https://store.hifiman.jp/shopdetail/000000000103/
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