Netflix『あいの里』に見る、35歳を超えても恋愛をする意味 妥協しない究極の“すり合わせ”が重要に

Netflix『あいの里』に見る、35歳を超えても恋愛をする意味

 絶対に譲れないポイントと、譲歩できる部分を何度も自問自答し、はじめからピタッとハマる奇跡のピースを探し求めるのではなく、自分たちなりの最適解を探し続ける。今すぐにでも付き合える関係性であっても結婚相手に求める最重視ポイントについて斬り込むのは、今後の2人の関係性を大きく覆してしまいかねない相当勇気のいることだっただろう。その度に一呼吸置いて、自分がここに来た目的は“恋人”ではなく“生涯のパートナー”を見つけることであると立ち返り、折衷案を探ることを諦めなかったゆうこりんの根気強さと、言語化力、自律心、軌道修正力は見習うべきポイントだらけだった。

 その場しのぎの言葉に流されたり、小さな違和感を見過ごして、少しでも不安が残った状態でカップルとして成立し、後々「こんなはずじゃなかった」と相手のせいにするのではなく、自分の幸せを人任せにしないで自身の選択に責任を持ち続ける。自分の人生の舵取りは、パートナー探しの最中こそ自分でなければならないということを教えてくれた。

 60歳の「中さん」と「みな姉」の最年長カップルも同じで、このふたりは“生涯のパートナー”を最も具現化してくれたような気がする。自身の中で全ての懸念や不安がクリアになっていないという小さな違和感を見逃さなかったみな姉は、恋人としては理想的であった中さんからの告白を断る。しかしその判断があったからこそ、里を出た後の交友関係の中で、2人は腹を割って安心してパートナーとしての関係を育め続けたのだろう。自分にも相手にも嘘をつかないでいることは、ある意味逃げ場がなく相当な体力と気力を必要とすることだが、この行程こそが自分の選択への納得度、満足感を高めてくれるのかもしれない。

自分よりも年上の大人たちの、時に滑稽なまでの体当たりの恋愛を目の当たりにしたことで、人生の楽しみが増えたように思えた。いくつになっても人は恋ができるし、別々の経験を積んできたことが決して邪魔にはならず、相手とそれを持ち寄りシェアすることで自分を広げて変えていける。そんなことを教えてもらえた。

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