Netflix『あいの里』に見る、35歳を超えても恋愛をする意味 妥協しない究極の“すり合わせ”が重要に

Netflix『あいの里』に見る、35歳を超えても恋愛をする意味

 いわゆる“恋愛リアリティショー”とは一線を画した番組が今話題を呼んでいる。 Netflixの恋愛リアリティ番組『あいの里』だ。35歳以上の男女が、田舎の古民家で共同生活を送りながら「人生最後のパートナー」探しに臨む。

 35歳以上という年齢制限もあってか、『あいの里』の参加者には離婚歴があったり、その理由も死別や相手の浮気など実に様々。シングルファザーにシングルマザー、仕事も経歴もまったく異なる大人同士のぶつかり稽古のような恋模様に思いのほか泣かされた人も多いはずだ。様々なバックグラウンドを持つ参加者たちは、どのように大人だからこその恋をして、最後のパートナーを選んだのだろうか。

 見事自身の片想いを実らせる逆転劇を見せた女性メンバー「おかよ」から学ぶべきポイントは、恋愛にこそ他人との比較を持ち込まない、卑屈にならないということだろう。おかよは、意中の相手「じゅんぺい」が現れるなり、受け身の姿勢ではなく自ら動く。そして、彼の好みを聞き出しては服装やメイクを変え、努力する健気さや素直さを持ち合わせながら、それでもおかよの中でブレずに貫き通したことがあった。じゅんぺいが自分以外の女性に惹かれているのを知りながらも、“ライバルを意識したくない、自分のペースは乱されたくない”と、自身の力ではどうしようもないことにまで想いを馳せ気に病まないように意識していたのだ。自身の情緒を守り自分の機嫌は自分で取る。そして、相手の気持ちがどうであろうと、自分が側にいたいから近くにいる。これは大人のお作法とも言うべきところだろう。

 また、おかよは、片想いの相手と一緒にいられる貴重な時間も黙々と作業に打ち込み、ただ「近くにいてもいい理由になるから嬉しい」と相手にとって自身の存在が重くならないように努めていた。たとえ相手から確信めいたことや自分が期待するような回答・リアクションが引き出せなくても、不貞腐れず落ち込まず、自身の中でケジメをつけるために告白することを決めた。だからだろうか。強がらず面倒な駆け引きもせず本心を伝えたおかよには、清々しさが滲んでいた。大人の恋愛ほど自立が必要で、それがない恋愛というのは痛々しさが募り重々しくなってしまうのだということを、改めて思わされることとなった。     

 45歳で人生初告白を実らせたシングルマザーの「トッちゃん」も全く受け身ではなかった。特に若かりし頃にありがちな“察して欲しい”という相手に求めるばかりの行動はしない。自身の感情を言葉にして伝える努力を放棄しないのだ。口に出さずとも醸し出す雰囲気や空気感から相手が自身の望み通りの言動をしてくれたり、自分にとっての“正解”を叩き出してくれることを“相性”だと思いがちだが、話し合いの末何度でも互いのこだわりをすり合わせられる相手こそ“相性が良い”と言うのかもしれないと教えてくれた。

 この究極の“すり合わせ”の重要性を見せてくれたのは「ゆうこりん」と「たぁ坊」の2人だろう。ゆうこりんは、華やかな見た目から男性陣からの多くの支持を得るも、「もし望んでも子どもができなければどうするか」という現実的な質問を投げかけ、決して目的を見失わないという姿勢を貫く。家族行事が多く先祖を大切にするたぁ坊に対しても、自分ばかりが相手の家族に入っていくのではなく「私と一緒に家族を作ってくれる人」を求めているとはっきりと口に出していた。

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