この冬、『進撃の巨人』のアクションVRゲームが爆誕 気鋭の開発者が語った「バーチャル世界への“無垢な憧憬と狂気的な情熱”の根源」とは?

『進撃の巨人』VR開発者が語る“憧憬と根源”

 今冬『Meta Quest 2』『Meta Quest Pro』向けの本格ハンティングアクションVRゲームとして『進撃の巨人VR: Unbreakable』がリリースされる。開発・運営を手掛けるのは、これまでに『BE THE HERO』や『リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを』を制作してきたUNIVRSだ。同社通算3作目、既存のIPをもとにした作品としては2作目にあたる本作で、プレイヤーは『進撃の巨人』の世界へと入り込み、調査兵団の一員となって人類の存亡をかけた巨人との戦いに挑む。

進撃の巨人VR: Unbreakable | コンセプトPV | 今冬 発売予定

 筆者は同社の過去作『リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを』をプレイ済みだ。レーシングゲームの形式を採用していた『リトルウィッチアカデミアVR』は、プレイヤーのゲーム体験がひとつの画角の中でほとんど完結する。スピード感溢れるホウキでの飛行体験は、さながらアッコたちと夜空を滑空しているような感覚を覚えた。

リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを

 UNIVRSは、バーチャルワールドにおいては一日の長がある。同社がオリジナル作品『BE THE HERO』のプロトタイプ版を無料配信したのが2017年12月で、そこから今日に至るまで、この業界において約6年ほどの歴史を築いてきた。コロナ禍によって「メタバース」や「VR」といった言葉がある種のバズワードとして注目されるはるか以前より、同社はこの領域でコンテンツ作りに取り組んできたということだ。筆者もパンデミックをきっかけにXRの分野でコンテンツを制作しているのだが、3日に1回は心が折れる瞬間がやってくる。そんな一筋縄ではいかない分野において、6年もコンテンツ作りに向き合い続けるのは、狂気に近い情熱がなければなかなか難しい。

 一体何が彼ら/彼女らを駆り立て、どこへ向かわせているのか。『進撃の巨人VR: Unbreakable』のリリースを機に、VRへの期待と“情熱の根源”を確かめるべく、UNIVRSのCOO・小路 直哉氏に話を聞いた。

「アニメや漫画、ゲームの世界に行きたい」という夢を“大真面目に追い続ける”

ーーまずは、本作を制作するに至った経緯からお伺いできればと思います。

小路 直哉(以下、小路):弊社は元々、「VRのテクノロジーとエンタメの力で世界中の人たちの夢を叶えたい」との思いから創業した会社です。もう少しその夢の内容を具体的にお話しすると、「アニメや漫画、ゲームの世界に行きたい」という、誰もが子供の頃に一度は考えたことのあるものでして。ですが、我々は大人になった今でも本や映画やアニメの世界に行って、自分も登場人物と同じ体験を味わいたいと大真面目に考え続けています。そして、それを実現するためにVRでコンテンツを作り続けているんです。

 そして、数あるゲームジャンルの中でも「アクションもの」にチャレンジしたいと思い、選んだ題材が『進撃の巨人』でした。我々は元々完全にユーザー側の人間で、漫画もアニメも大好きでずっと見てきた作品です。その上、我々と同じようにこの作品を愛する人が世界中にいる。そんな作品の中にVRを使って入り込めるなら、やりたいじゃないですか(笑)。「『進撃の巨人』のVRゲームが出たらプレイしたいか?」という質問を100人にしたとして、全員が「イエス」と答える作品だと思うんですよ。

ーーそれは間違いないですね。

小路:そうしたアイデアをずっと抱えていたところに、ちょっとしたご縁が繋がって、本作の企画を講談社さんに提案する機会をいただいたんです。ならばとプレゼン資料を作ってみたのですが、どれも言葉ではイマイチ伝わらないと感じてしまい、「じゃあ実物を作ろう!」ということで、「プレイヤーが調査兵団の一員として立体機動装置で飛び回る」という体験をメインコンセプトとして考えていたので、それが伝わるような簡単なデモ版を制作して持って行きました。担当の方が「『初めまして』の段階で試作品を持ってきた会社さんはほかにいないです」と仰っていたので、良い意味で熱量が伝わったのかなと思います(笑)。

ーー並々ならぬ覚悟と熱量を感じますね。ゲームを作ってゆく上で、版元の講談社さんとの間にはどのようなやり取りがあったのでしょう?

小路:こちらの提案に対して、ひとつひとつ丁寧にフィードバックをいただきました。我々のコンセプトや制作物が『進撃の巨人』の世界観に則しているかどうか、その点を判断し、監修していただけたので、ありがたかったです。もうひとつ開発者として本当にありがたかったのは、講談社さんが我々のこだわりに付き合ってくれたことです。「VRゲーム」という新しい表現の中では、原作に存在しなかったものや、バーチャルな体験になったことで初めて分かることも出てくるんですよ。そのときに、我々が新たに定義したものに対して「そのほうが面白いんでOKです!」と言ってくれたんです。原作サイドとしては本来難しい判断だと思うんですが、枠からはみ出ることに真剣に向き合って下さいました。作り手としてこんなに幸せなことはないです。

ーー具体的にはどういった要素がはみ出てしまったのですか?

小路:いまお話できる範囲ですと、『進撃の巨人VR: Unbreakable』には原作に描かれていない武器が出てきます。昨年出したプレスリリースでも何枚か武器に関する画像を発表したんですが、デザインなども今回新調しています。やはり今作はアクションゲームなので、戦闘や移動に関連する要素を深く追求する必要がありました。なかでも、調査兵団に扮したプレイヤーの動きに幅を持たせるために、やはり武器は非常に重要な存在なのです。原作ではブレードと雷槍が主な武器ですが、それ以外の選択肢が本作にはあります。その制作過程で、「この武器のデザインは、原作の時代背景を考えるとオーバースペック気味なので少し抑えて下さい」といったフィードバックを講談社さんからいただきました。

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