VTuberからガチャピン、名門校の吹奏楽部まで……YouTubeに巻き起こる『【推しの子】』“アイドル旋風”ーー
『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載中であり、2023年4月よりアニメ放送が開始された『【推しの子】』。4月13日に本作のアニメオープニング主題歌であるYOASOBI「アイドル」のMVがYouTubeに投稿されると、36日で1億再生を突破。同ユニット最速での到達となった。
作品と共に話題を呼んでいる主題歌を題材に、YouTubeでは“歌ってみた”や“踊ってみた”動画が多数投稿されている。本稿ではその一部を紹介したい。
VTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」のメンバーである星川サラ。彼女の「アイドル」を“歌ってみた”動画は投稿から2週間ほどで150万回以上の再生数を記録した。
日英ハーフの女の子である星川は、日々の配信活動にくわえて自身のYouTubeチャンネルで“歌ってみた”や“踊ってみた”などの動画も積極的に投稿している人物だ。2023年4月には1stアルバム『きみとのShining Days』をリリースし、6月10日にはソロライブ『星くず Shining Day -きみがみつけた一番星-』の開催を控えている。
金色の長い髪を束ねた姿にオッドアイという特徴的な瞳など、星川の容姿は『【推しの子】』の登場人物・ルビーと重なる部分が多い。オリジナルMVで映る星川の姿は、アイドルを目指すルビーの将来像を目にしているかのような感覚を覚えるだろう。
『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ系)など数多くのTV番組で活躍してきたガチャピンも「アイドル」“歌ってみた”動画を投稿している。コメント欄にはガチャピンの歌声を称賛する声が多く投稿されており、運動ができて歌も歌えるガチャピンは、まさしく歌詞の通り“完璧で究極のアイドル”であろう。
しかし、ガチャピンも星川と同じくアイドル的存在であるものの、“歌ってみた”動画の雰囲気は少々異なる。
長年子ども向け番組に出演してきたガチャピンが〈洒落臭い/妬み嫉妬なんてないわけがない/これはネタじゃない/からこそ許せない〉という歌詞を歌う姿は、動画の演出もあいまって「親しみのあるガチャピンの姿」とのギャップを感じさせるものであろう。ゆえに底抜けに明るい星川の“歌ってみた”動画とは異なる、独特の不穏さを覚える。
ただ、思い返せば1975年にリリースされたガチャピンの1stシングル「たべちゃうぞ」では〈いたずらするこは/たべちゃうぞ〉や〈ジャンケンポンよ/かったらたべろ/まけたらにげろ〉と歌うガチャピンの姿があった。リアルで生々しい感情も描かれる「アイドル」を歌うことは、ガチャピンにとってある種の原点回帰と言えるのかもしれない。
“歌ってみた”動画だけでなく「アイドル」を演奏した動画も投稿されている。そのひとつとして紹介したいのが、大阪桐蔭高校吹奏楽部による動画だ。
2005年に創部し「全日本吹奏楽コンクール」では金賞に輝くなど、数々の高い評価を獲得してきた大阪桐蔭高校吹奏楽部。YouTubeチャンネルには流行曲を題材とした動画を数多く投稿しており、YOASOBI「夜に駆ける」を演奏した動画は800万回以上の再生数を記録している。2021年にはYOASOBIがおこなった配信ライブ『SING YOUR WORLD』にも出演するなど、同グループとの親和性も非常に高い。
そんな大阪桐蔭高校吹奏楽部による動画は演奏のクオリティもさることながら、サイリウムを持ちながら指揮をしたり楽器を叩いたりと、遊び心も満載だ。
原作漫画では白色のサイリウムがキーアイテムとして登場しており、ときに白色にも見えるサイリウムの光からコミックス4巻の第三十八話で描かれた有馬かなの姿を思い出した原作ファンも少なくないはず。YOASOBIだけでなく『【推しの子】』とも親和性の高い演奏動画といえるだろう。
本家を無限ループした後に、派生系であるカバー動画を漁る面白さもある。そのため、まだまだ【推しの子】及びYOASOBIの「アイドル」は視聴者を楽しませてくれるだろう。