「トイレにスマホを持っていくか問題」にみる、現代のリアルな恋愛観 Z世代が語りたい『恋と知った日』の繊細な描写

『恋と知った日』Z世代のリアルな恋愛観

 最近、“恋の始め方”がどんどん変化しているような気がする。というのも、筆者(1996年生まれ)が学生だったころは、恋人が欲しいとなればだれかに紹介を頼んだり、社交の場に足を運んだりするのが主流だった。

 そのなかで、SNSを通して出会いを求めるのは、いわゆる“出会い系”と呼ばれており、身近なクラスメイトがやっていると「危なくないの?」なんて心配になったものだ。

 しかし、大学を卒業した2019年あたりから、マッチングアプリで恋を探す人が急増し始めた。いまはもう、アプリを使っているのは特別なことじゃない。隠さなければならないものでもないし、みんなフランクに打ち明けている。だからだろうか。『恋と知った日』(ABEMA)のマッチングアプリから始まった恋を、どこか身近に感じることができたのは。

 短編映画制作プロジェクトのMIRRORLIAR FILMSとABEMAが、始めてタッグを組み制作した短編映画『恋と知った日』は、“Z世代が語りたくなるラブストーリー”をテーマにした作品だ。大学2年生の渚(南沙良)が、マッチングアプリを通して啓太郎(板垣瑞生)と出会い、恋をして、別れを告げるまでが描かれる。

 ギリギリZ世代の私にとっても、本作には“語りたい”と思った部分がたくさんあった。たとえば、「トイレに行く時にスマホを持って行くか問題」。これは実際に、カップル間でもたびたび話題にあがる問題だ。

 常にそばにスマホがないと不安なZ世代が、“肌身離さず持っておきたい”と思う気持ちは分かる。実際に私もトイレの場所が少し離れている時は、スマホを持っていくことが多い。

 だけど、スマホを置いてトイレに行く人は、一緒にいるすべての時間を自分に使ってくれているような気がしてうれしくなる。「それだけのことで?」と思われるもしれないが、なんだか心が温まるのだ。

 だから、マッチングアプリで出会った人に心を開けなかった渚が、啓太郎のことはあっさり信用してしまったわけが、痛いほどよく分かる。

 渚が以前に会った男性は、スマホをフラッシュ通知に設定していた。そのため、裏返しにしていても、通知が来たのが分かる。そのフラッシュに反応した男性は、「ちょっとトイレに行ってくるね」とスマホを持ってトイレに。ほかの女性からの連絡かな? と勘繰ってしまうのも無理はないだろう。

 その一方で、啓太郎は堂々と渚の前にスマホを置いてトイレに行った。しかも、画面を上向きにして。もしかしたら、すべての通知をオフに設定している用意周到なタイプだったのかもしれない。だけど、スマホに自分のすべてが入っているZ世代にとって、画面を上にして置いてどこかに行くというのは、犬がお腹を見せているのと同じような無防備な行為なのだ。

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