瀬戸内の中心でレトロモダンに触れる 広島出身の声優・反田葉月と巡る「街・食・海」 

声優・反田葉月と巡る広島県の「街・食・海」 

 今年、広島サミットが開催される事でも世界的に注目を集めている広島県。海と山の幸に恵まれて名産物も多く、古くから栄えてきた地域。観光なども盛んであるが、まだまだ知られていない地域も数多くある。今回は広島県出身の声優の反田葉月をモデルに、ポートレート写真のスペシャリスト・魚住誠一氏が撮り下ろし。写真と共に知られざる広島のレトロモダンな魅力をご紹介したい。

■モデルプロフィール
反田葉月(Hazuki Tanda)。2001年生まれ、広島県出身。広島アクターズスクールを経てアイドルデビュー、現在は女優・声優として活躍。特技はギター、ダンス。カメラの魅力に高校時代に目覚め、バイト代を貯めてミラーレスカメラを買ったというエピソードもある隠れカメラ女子。

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古くからの街並み散策100年フードの魚飯を味わう

 平安時代から栄え、安芸の小京都とも呼ばれてきた竹原市。かつて製塩や酒造で栄えたこの地域には歴史的な建物が保存されており、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている。「まるで江戸時代に来たみたい!」と反田が感激したように、往時の建物が数多く残されている。石畳の道を歩けば竹原格子と呼ばれる独特の装飾を施した家々を目にすることができる。

 タイムスリップしたかのような街並みは大林宣彦監督の『時をかける少女』の舞台ともなっており、胡堂(えびすどう)や原田知世演じる芳村知子が駆け下りた西方寺の階段などは現在もその姿を留めている。しばらく歩くと竹細工が施された花挿しが目に留まる。

 これは訪れる旅人への住民たちのおもてなし。往時の面影を残す建物で、いまなお生活が営まれている貴重な場所でもあるのだ。通学の子供たちが駆け抜ける脇には豪奢な造り酒屋の竹鶴酒造が。ニッカウィスキーの創業者でもある竹鶴政孝の生家でもあり、連続テレビ小説『マッサン』のロケ地ともなった場所だ。

 「歴史ある美しい街並みを巡るのはもちろんですが、映画やドラマの聖地巡りとして楽しいです」と反田さん。そんな過去と現代が交錯する街にあって象徴的な存在が、大正時代の料亭をリノベーションしたルアンNIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町と、そこで供される魚飯(ぎょはん)だ。文化庁の100年フードにも選定された魚飯は、当地で江戸時代から祝いの席などで食べられてきた特別な食。こちらでは竹鶴家のレシピを再現した魚飯をメインに、前菜やデザートと共にコースとして味わえる。


 まずは運ばれてきた小箱を開ければ「本当にキレイ!!」と反田さんが感嘆するほどの彩り鮮やかな食材。当地の野菜などを使い、お猪口に盛られているのがお洒落。そしてメインの魚飯へ。竈炊きされた白飯を茶碗に盛り、コチや錦糸卵、太海老などの具材を乗せて特製の出汁をかける。「それぞれの食材の旨味を感じるのは勿論ですが、それをしっかりと出汁が纏めてくれる感じ。美味しいのは勿論ですけど、とても深い味わいです」と語るように、それぞれの旨味が渾然一体となる洗練された味わいだ。

 出汁は熟成させた地元醤油と同じく、当地の酒造によるみりんを使っているのが特長だ。最後は同ホテルのパティシエ特製スイーツが登場。「街歩きをしてこんな美味しい物が食べられるのなら最高ですね!」と反田さんも大満足だ。同ホテルは宿泊者はもちろん、魚飯はランチ単体でも注文できるので、竹原散策の際には訪れるといいだろう。

お土産のスイーツ探しに大崎上島に上陸!

 続いて目指すは大崎上島。竹原の対岸にある瀬戸内海に浮かぶ離島だが橋はなく、竹原港からフェリーで渡る。乗船すること約30分で接岸。瀬戸内海の中心地帯にあるこの島は風や潮を待つために立ち寄ったとされ、風待ち、潮待ちの島としても知られている。広島県出身の反田が「広島の自慢のひとつはレモンなんですよ!」と語るようにレモン生産県として全国一の広島にあって、瀬戸内ならではの温暖な地域でレモンをはじめとする柑橘類の生産も盛んだ。

 そんなレモンをテーマに名物土産を目指して訪れたのが『一正堂』、ここの名物であるレモンケーキを求めて島の中央部へと車を走らせる。島特有の長閑な雰囲気を楽しみながら海岸線を往く。フェリーには車も積載できるのでドライブがてらに大崎上島を訪れるのもありだ。島の中心部からやや奥まった所にある『一正堂』はレモンケーキの幟が存在感を際立たせている。

 元々、レモンケーキは広島県発祥のスイーツでもあり、その源流は大正時代にも遡るとされる歴史ある食べ物。かつて広島県で近所の贈答物としてレモンケーキは欠かせないアイテムでもあったそう。観光客だけでなく島の人々も買い求めるという同店のレモンケーキは銀色の包装紙に包まれた手の平サイズ。聞けば先代が考案したそうだ。包みを開けると「レモンの良い香り」と反田が感じたように、レモンの爽やかなフレーバーが漂う。


 レモン型のスポンジケーキは、ホワイトチョコレートでコーティングがされている。一口食べれば甘さと酸味、そして香りが優しく広がるほっとする味わい。反田が「レモンケーキは広島県人には日常的なスイーツのひとつですが、お土産でも喜ばれます」と解説するように、島だけで売っている絶品のレモンケーキはお土産として喜ばれることだろう。

 無事、レモンケーキが入手できたので、帰路のフェリーが到着するまでの時間、神峰山(かんのみねやま)の山頂を訪れる。この神峰山は瀬戸内の115の島々を見渡せる風景が自慢で、しま山100選のひとつとしても選ばれている。頂で島々を眺めていると黄昏へ。

 「広島生まれでも知らなかった景色で、とにかく感動しました」と反田さんが語るように、瀬戸内の大パノラマに加えて、茜色に染まる雲と青藍の海、そして深碧の島々の風景に心奪われる。大崎上島からはフェリーで再び竹原へ。翌日は尾道へと移動する。

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