空前のビデオゲーム実写化時代 映像産業が“金のなる木”を探す理由とは
ここ最近、ビデオゲームの実写映像化が注目を浴びている。2023年1月16日より配信されているドラマ『The Last of Us』(ラスアス)は直近における好例で、配信初日に481万人の視聴者を獲得。この数字はアメリカのケーブルテレビ放送局HBO(ホーム・ボックス・オフィス)において、歴代2位の記録である(出典:IGN JAPAN)パンデミックによって崩壊したアメリカを丁寧に描き、なおかつ実写化に向けて施されたアレンジが新規層を取り込む要因になったのだろう。
世界的にヒットしたビデオゲームの実写映像はまだある。ソフト売上が4000万本を越えるオープンワールドRPGのドラマ版『ウィッチャー』。「ポケットモンスター」シリーズの看板キャラクターがハリウッドで3D化を果たした『名探偵ピカチュウ』。音速のハリネズミが世界を救う『ソニック・ザ・ムービー』……等々、これらは一例に過ぎず、銀幕デビューを飾ったゲームキャラクターはまだまだ存在する。くわえて、実写化がすでにアナウンスされている作品も含めると、その総数はさらに膨れ上がるはずだ。
なぜビデオゲームは実写化の対象に選ばれるのか。そして市場における注目度やセールス面での利益(興行収入など)はどうなっているのか。今回は具体例を踏まえつつ、ビデオゲームの実写化について考える。
ビデオゲームに向けられた”映像産業の熱い視線”
そもそもビデオゲームの実写化は今に始まったことではない。全編を通して色々と衝撃的な『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』は今から30年前に作られた映画だし、ミラ・ジョヴォヴィッチが主役を演じた『バイオハザード』も2002年の公開だ。ほかには『ストリートファイター』、『トゥームレイダー』、『青鬼』など枚挙にいとまがない。知名度がある程度高く、なおかつ利益が見込めそうなビデオゲームは、とりあえず実写化に向けて動き出している場合が多いと言えるだろう(もちろん実現しないケースも山ほどあるが)。
ビデオゲームは近年、映像産業から熱い眼差しを向けられている。その最大の理由は”制作サイドのネタ切れ問題”である。端的に言えば実写化に耐えうる原典が不足気味なため、拠り所となる作品を見つけるべく、映画業界などがビデオゲームから金のなる木を得ようと注目しているわけだ。
『ソニック・ザ・ムービー』など相次ぐゲームの実写化 変化する映画業界の行く末を考える
現在公開中の『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』は、人気ゲームの映画化であり、すでに続編とスピンオフドラマ企画…
実際に昨年の発表を見るだけでも、5月に『Horizon』、11h月に『ギアーズ・オブ・ウォー』の実写映画化が決定したほか、今年に入った1月にはプレイヤーの実話をベースにした『グランツーリスモ』の映画化が告知されており、作品の供給が数年単位で続くと思われる。こうした流れは動画配信プラットフォームのコンテンツ拡充を促すだけでなく、原作(ビデオゲーム)ファンを実写作品の視聴者として誘導する動きへと繋がっていく。ビデオゲームの愛好者から見れば、あらゆる作品が実写化を辿る状況にやや違和感を覚えるかもしれない。しかし、それだけ多くの人々が映像作品を欲している状況の証左と言えるのではないだろうか。