空前のビデオゲーム実写化時代 映像産業が“金のなる木”を探す理由とは
ビデオゲームの実写化は天国と地獄?
とはいえ、ビデオゲームの実写化は当たり外れがかなり大きい。成功を収める作品はわずか一握りに限られ、それ以外は目を背けたくなるほど大コケする場合か、傷は浅くても微妙な結果に終始することが多い。
例えば『Alone in the Dark』や『Dungeon Siege』など数々のビデオゲームを実写化するも、なにかと失敗に終わることが多かったウーヴェ・ボル監督の場合、数千万ドル単位で制作費を用意したのにも関わらず、数百万ドルほどしか興行収入を得られなかった作品がいくつか見受けられる。上述の『バイオハザード』は12億ドル、『名探偵ピカチュウ』は4億3300万ドルと驚きの興行収入を誇るが、そうしたヒット作品は幾多もの奇跡が重なって生まれたと言える。
ボル監督はやや珍しいケースと言えるが、入念な準備と資金調達を進めたものの、蓋を開けてみれば駄作だったという事例は珍しくない。このようにビデオゲームの実写作品が興行面で失敗する理由は色々と考えられるが、「原作をあまりにも無視したアレンジ」「物語の運び方が稚拙」といった不満は、批評の観点から見ても真っ先に指摘されることが多い。大前提として「制作サイドが原作を深く理解していない」のは恥ずべき問題であり、まずは制作サイド側が原作をよく知り、そのテイストを映像内でどのように再現するのかを考えなければならない。これは原作の物語とは別に、実写化に合わせてオリジナルストーリーを採用する場合でも同じだと言える。
実写作品がどう転ぶかは世に出てみないと分からないし、また時世に左右されるということも考えられる。くわえて、「元ネタがどれだけ世間で知られているか」といった知名度の問題も含まれる。それでもなおヒットする実写作品は、映像を通して原作に対する制作サイドのリスペクトが感じられる場合がほとんどだ。
ビデオゲームの実写化はもはやトレンドを通り越し、映像産業が生き抜く上で必要不可欠な手法なのかもしれない。ノベルやマンガを含めた他媒体のコンテンツが実写化を迎える際、「キャストは誰が務めるのか」「原作に悪評がついてしまうのではないか」などと今後を憂う声がつきものだが、そうした状況下で称賛を浴びた作品、原作の市場展開に新たな可能性を生み出した作品もある。いずれにしても、ビデオゲームの実写化は今後も期待と不安の眼差しで見つめられ、映像産業で注目を集め続けることだろう。
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