10年以上の時を超え、ついに復刻。『P3P』リマスター化の意味を考える

『P3P』リマスター化の意味を考える

 1月19日、『ペルソナ3 ポータブル』(以下、『P3P』)のリマスター版が発売となった。

 本稿では、同作の復刻を入り口に、その意味を考える。『P5R』『P4G』のリマスター化にはない価値とは。

シリーズの分岐点となったナンバリング第3作『ペルソナ3』

『ペルソナ3』店頭PV(1)

 『ペルソナ3』は2006年、PlayStation 2向けにリリースされた、「ペルソナ」シリーズのナンバリング第3作だ。シリーズにとっては第1作『女神異聞録ペルソナ』や、第2作『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』からテイストを刷新した“分岐点”的作品で、最新ナンバリングである第5作『ペルソナ5』は同作のコンセプトを踏襲している。

 2007年には、オリジナル版にゲームバランスの調整と追加要素を盛り込んだ『ペルソナ3 フェス』がおなじくPlayStation 2向けに、2009年には、女性主人公の追加、バトルシステムの変更などをくわえた移植版『P3P』がPlayStation Portable向けにリリースされた。

 今回発売となったのは、同移植版をベースにリマスターされたもの。当時、PlayStation 2やPlayStation Portableでしかプレイできなかった『ペルソナ3』が、現行のあらゆるプラットフォーム(PlayStation 5、PlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox One、Xbox SeriesX/S、PC)で遊べるようになった。

 ダウンロード版のみの展開で、価格は1,980円(税込)。Xboxプラットフォームにおいては、月額のサブスクリプションサービス『Xbox Game Pass』にも対応している。

「もっとも風化しつつあった作品」の復刻。近年の国産RPGへの問題提起的な役割も?

『ペルソナ』シリーズ リマスター版 発表映像

 「ペルソナ」シリーズをめぐっては、第5作の完全版『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』(以下、『P5R』・PlayStation 4)が2022年10月21日に、第4作の移植版『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』(以下、『P4G』・PlayStation Vita)が『P3P』と同日の2023年1月19日にリマスター化されている。両作とも『P3P』同様、今回の復刻でさまざまなプラットフォームへと間口をひろげ、より多くのフリークたちが手に取れることとなった。

 しかしながら、『P5R』『P4G』と『P3P』のそれぞれのリマスター化のあいだには、明確な価値の差がある。その差とは、「原作が手に取りやすい環境にあるか」だ。

 『P5R』がリリースされたのは、いまから3年ほど前の2019年10月。『P4G』がリリースされたのは、約10年半前の2012年6月となっている。発売日だけを見れば、登場からは長い年月が経過している(約3年を「長い」とするかは個人差がある)が、その間、両作が対象にしたプラットフォームは、ほぼ世代交代がなされていない。PlayStation 4は次世代機の流通の遅れもあり、SIE製・据え置き型ハードとしていまだ現役であるし、PlayStation Vitaは同社の携帯型ハード市場からの撤退もあり、後継機が出ていないのである。

 また『P4G』については、外部出力専用モデル・PlayStation Vita TVの登場(2013~2016年)や、あまり普及しなかったにしては長かったハードの生産終了までの期間(前述の撤退の影響とみられる)、2020年のPC(Steam)への移植などもあり、手に取りやすい状況が続いていた。プレイヤーにしてみれば、遊ぶにあたっての物理的・精神的な障害が、原作発売からの年月の割に小さかったといえるのだ。『P5R』はもちろん、『P4G』もまた、遊びたいと思えばいつでも遊べる作品だった背景がある。

 対して、『P3P』が発売されたのは2009年11月。対象としたプラットフォームがPlayStation Portable(2014年に生産終了)だったこともあり、タイミングを逃したフリーク、特に『ペルソナ5』でシリーズのファンとなったプレイヤーには、遊びたくても遊びづらい状況だったに違いない。『P4G』とのあいだには、小さくて大きい「2年半」という時間が横たわっているのだ。

 『P3P』は、「3つのなかでもっとも風化しつつあったコンテンツ」だといえる。国産RPGを代表するシリーズとなった現在の「ペルソナ」の原点をたどることができる作品でありながら、触れたくても触れられなかったのが同作だ。そこにこそ『P5R』『P4G』の復刻にはない、リマスター化の価値を見いだせるのではないだろうか。

 シナリオに散りばめられた含蓄のある表現は、商業主義に根ざした昨今の成功タイトルにはなかなか見られないものだ。あえていま『P3P』をプレイすることからは、近年の国産RPGから失われつつあるものを見据えることもできるのかもしれない。

 次にファンが期待するのは、『女神異聞録ペルソナ』や『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』の復刻か、はたまた、『ペルソナ6』の発表か。日本の人気RPGでは数少なくなってしまった次作に期待の持てるシリーズ。「ペルソナ」には次代の旗手としてジャンルを牽引してほしい。

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