任天堂とソニー、異なる「クラウドゲーミング」への向き合い方 話題集める『ペルソナ』新展開から考える

任天堂とソニー、対照的な「クラウドゲーム」への対応

 『ペルソナ』シリーズの人気3作品が、これまで未対応だった新たなプラットフォームへと移植される。

 6月13日の発表以降、話題を集めたこのトピック。開発・発売元のアトラスによると、クラウドゲームとしてストリーミングにも対応する予定なのだという。

 人気RPGシリーズの新展開から、ゲームカルチャーの未来を考える。

『P3P』『P4G』『P5R』リマスター版が現行機でリリース。プレイしやすい状況に

『ペルソナ』シリーズ リマスター版発表映像[日本語版] ーXbox & Bethesda Games Showcase 2022 ー

 今回新しい形での展開が発表となったのは、2009年にPSPで発売となった『ペルソナ3 ポータブル』(以下、『P3P』)、2012年にPS Vitaで発売となった『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』(以下、『P4G』)、2019年にPS4で発売となった『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』(以下、『P5R』)の3作品。オリジナルに手を加えて再販され好評を博した各移植版・完全版が、リマスター版としてあらためて現行機で蘇ることになる。先立って、最新のナンバリングである『P5R』のリリース日が、2022年10月21日となることも明らかとなった。まだXデーが確定していない『P3P』『P4G』も、2023年中には登場するものと予測される。

 『ペルソナ』シリーズをめぐっては一昨年、『P4G』がSteamで復刻した際も大きな反響を呼んだ。『P3P』に至っては、アーカイブとして展開されているダウンロード版もすでにプレイしづらい状況となりつつあるため、なにかしらの形での復刻がファンから待望されていた背景もある。

 シリーズの誕生から25周年を経ておこなわれる人気ナンバリングの再リリース。各プラットフォームにおけるサブスクリプションサービス・クラウドゲーミングサービスにも対応する予定(Xbox Game Passのみ公表済)であるため、リリース時には大きな盛り上がりを見せる可能性を秘めている。

広がるサブスクとクラウドゲーミングへの対応。消極的な任天堂にこそ眠る勝機

ペルソナ5 ザ・ロイヤル PV#01

 ゲーム業界では昨今、サブスクリプションサービス、クラウドゲーミングサービスが勢いを増している。去る6月2日には、ソニーがサブスクリプションサービス『PlayStation Plus』をクラウドゲーミングサービス『PlayStation Now』と統合する形でリニューアル。未対応だった新旧のさまざまなタイトルをラインアップに盛り込み、再スタートを果たした。こうした動向はおそらく、競合に対抗するためのものだ。Microsoftからは『Xbox Game Pass』、NVIDIAからは『GeForce NOW Powered by SoftBank』といった類似サービスが登場しており、こちらも日に日に守備範囲を広げつつある。

 一方、ここまでに紹介した各社とは異なり、冷静なスタンスを見せているのが、ゲーム業界におけるもうひとつの主要企業・任天堂だ。同社もまたサブスクリプションサービスを展開しつつ、一部の人気タイトルをクラウドゲームとして提供するが、「定額プランに加入すれば対応タイトルがすべて遊び放題」という競合のビジネスモデルとは距離を取る。任天堂プラットフォームにおける同サービスは、ダウンロードソフトのようにタイトルごとに購入する形が基本となっており、他社とはやや毛色の違う展開を見せている状況がある。

 同社で代表取締役社長を務める古川俊太郎氏は2021年2月、日経ビジネスのインタビュー記事のなかで、「クラウドやストリーミングといった新しい提供形態も出てくると思いますが、それはゲームを選ぶ上での最優先事項にはならない」と語っている。公開から約1年半という時間が経過しているため、現在も同じ考えであるかは不明だが、少なくともクラウドゲーミングのトレンドがすでに生まれていた当時、任天堂はそのような意識で新たな業界の動きを捉えていたようだ。

 しかしながら本来、クラウドゲーミングに向いているのは、(現時点において)スペック面で劣勢な任天堂プラットフォームなのではないだろうか。同仕組みは、クラウド上で起動したゲームの映像を、高速通信によってプレイヤーの手元の端末と同期させ、ある種、疑似的なプレイを最小限の遅延で実現するものである。ローカルではソフトを動かしていないため、ハードの性能は問われない。基準を満たすインターネット環境がありさえすれば、理論上はどのような端末でも高いスペックを要求するソフトが遊べてしまうという代物だ。だからこそ、最先端のソフトを難なく動かせるPlayStation 5や、Xbox Series X/S、高性能なPCではなく、それらと比較されるとき、スペック面が課題に挙げられやすいNintendo Switchに大きな可能性が眠っていると言える。これまで性能の都合で対応していなかったAAAタイトルを同ハードでプレイできるような環境が整えば、普及機であり、かつ携帯性に優れるNintendo Switchには、さらに大きな支持が集まっていくはずだ。

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