にじさんじ・瀬戸美夜子、サブカルチャーへの愛と丁寧なコミュニケーションが醸し出す“ディープな魅力”

にじさんじ・瀬戸美夜子のディープな魅力

 現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。

 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。

 いまから4年前、2018年末に1期生・2期生・ゲーマーズ・SEEDs組と分かれていた流れが撤廃・統合され、2019年へと進んでいったにじさんじ。2018年11月16日には約5か月ぶりとなる「キャラ有り」オーディション、2018年12月26日からは配信経験・ストリーマー・歌手経験・クリエイター向けのオーディションをそれぞれに告知し、この年に非常に多数のメンバーがデビューすることになった。

 2019年1月8日に童田明治と久遠千歳が、1月17日に郡道美玲と夢月ロアが、約10日ほどの間隔でつぎつぎとデビューしてきた。

 彼女らに加えて1月28日には3名がデビューし、前回紹介した小野町春香やわずか3回の配信のみで現在まで活動していない語部紡に加え、今回書かせてもらう瀬戸美夜子の3人がデビューした。ここでいちど断らせてもらうが、語部紡に関してはあまりにも活動期間が短いため、ご紹介はしないまま進めようと思う。

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現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている…

 瀬戸美夜子は1月28日にTwitterに初投稿、1月30日にはYouTubeで初配信してデビューを果たした。初配信のときには特徴的な笑い方から「ギロを持ちながら配信している」と言われていたが、ファンと共に長く活動してきた影響からか、現在ではより豪快な笑い方をみせるときもある。

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 瀬戸美夜子の配信には、不思議な雰囲気・ムードが漂う。普段の配信・語り口調から漂ってくるのは、どこかアングラ感を持ちながらも自然体な姿だ。

 丁寧かつ淡々と続けていく彼女のトークは、女性としては太めかつ低い声と相まって、良い意味で女々しさや媚びた印象を感じさせることはない。配信のために椅子に座るとテンションがあがると語っていたこともある彼女だが、だからといってウケを狙ってしゃべろうという印象があまり強くなく、ダラっとした自然なムードがある。

 そんな声質もあって、見る人によっては「ボソボソと喋ってる」ように見えるかもしれない。だが、そんな淡々としたしゃべり口調は、ひとりの女性として日々感じたことを独白しているかのような印象を与えてくれる。かつてのニコニコ生放送やツイキャスなどで見られたムード・テンションだ。

 クールでサバサバとしていて飾り気がなく、いってしまえば見る・見られるということ状況にすら無頓着では?と思わせるほどの空気感は、好きな人にとってはたまらないはず。

 『VTuber最協決定戦 SEASON4 Ver APEX LEGENDS』に出場するための練習配信中に、「ワンピース」のセリフ「お前、船降りろ」をもじった批判コメントが大量に送られてきた際、おもわず返した言葉が彼女のメンタリティ・精神性・センスがハッキリと現れている。

「あのさ、これ触れちゃいけないかもなぁって思うんだけど、『おまえ、船降りろ』ってさ…あの~よくない言葉かもしれないけど、『ドロップシップ降りて戦え!』って言ってるみたいでさ。もうちょっとなんかひねった方がいいと思うよ?60人みんな船から降りて戦ってるんだよね。触れちゃいけないと思うんだけど!ツッコミどころがあるから!(笑)」

 普通の配信者ならば批判コメントがきてもほとんど触れることなく止むのを待つが、この時ばかりは彼女もツッコミつつ、ハッキリと「センスがない」とバッサリ切って捨ててしまったのだ。

 コメント相手を逆撫でしかねないが、秀逸すぎる返しにコメント欄も大盛り上がり。コラボ相手であった花芽なずなと橘ひなのの知らぬところで返事をしたので、2人と通話をつなぎなおしたときにはシレッとした顔をしつつ、通話をミュートにしては「いまからマッチ始まるけど、さっきの思い出しちゃって笑っちゃうよ!」とまた大笑いし始めた。

【 #V最協S4 2日目 】パニックになるとジャンプ多用する視点 【 橘ひなの / 花芽なずな / 瀬戸美夜子 】

 瀬戸はコメント・リスナーとのコミュニケーションにはかなり積極的なタイプであり、ちょっとした話題でもすぐに配信内の話題にあげる。そんな彼女は、いままさに配信内で盛り上がったネタを、コラボ相手にほとんど共有することなく、コメント欄に起こったことをリスナーとだけ共有して笑い合うのだ。

 インターネット上・YouTube上というオープンな場所でありながら、「アクセスしなければ知ることはない」という生配信にしか生まれない特有の密室性・特別感がここにはある。

 そこには、先に申し上げたようなニコニコ生放送やツイキャスなどの放送枠や昭和から続いている深夜ラジオのような、「パーソナリティとリスナーにしか理解し合えないノリ・テンション」が立ち込めてくるのだ。

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 「面白い」と思える配信にはいくつかの主因があるが、リスナーがどのようなコメントを送るか、どんなコメントを拾ってどう返すか、といった取捨選択は大きな要素になるだろう。

 「自分の推しに彼氏・彼女がいるのは喜ばしい」「自分の推しがこんな魅力があるのに恋人がいないわけがない」とでも言いたげなテンションは、冗談でもありながら半ば本気で幸せを願う声にもなる。ここまでの雰囲気・ムード作り、なによりお互いの信頼感を生んでいるのは、瀬戸美夜子の手際の良さがある。怒るときは怒り、悲しむときは悲しみ、喜ぶときは喜ぶ。そのやり取りは人肌を感じられるほどに近い。

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