ブラウンが12年ぶりに刷新した最上位シェーバー 日本での気づきが影響を与えた「シルクシェーバー」の発想

深剃りしたいが、肌にはできるだけ負担をかけたくない。電動シェーバーを使う男性なら、一度は感じたことのあるジレンマではないだろうか。
深剃り性能を高めれば肌への負担が気になり、肌へのやさしさを優先すれば剃り残しが気になる。特に日本では、ヒゲを完全に剃り切るスタイルが主流であることから、この2つをどう両立するかは電動シェーバーにとって大きなテーマになる。

そんな課題に対して、ブラウンが新たな答えを提示した。2026年7月31日に発売されたばかりの『ブラウン NEVO シルクシェーバー』は、約12年ぶりに登場した新たな最上位モデル。世界初をうたう「シルクタッチ網刃」、医療用ステンレスを採用した一体型ボディ、アルコール洗浄器など、随所に新しい技術が盛り込まれている。その背景をたどると、単なるフラッグシップモデルの刷新とは異なる、ひとつの開発ストーリーが見えてくる。

それは、日本での生活者調査から得られた気づきが、本国の開発チームへとフィードバックされ、新しいシェーバーの発想へとつながっていったというものだ。
なぜ、ブラウンは12年ぶりに新しい最上位モデルを作ったのか

ブラウンによれば、日本では86%の男性がヒゲを完全に剃り切るスタイルでシェービングしている。一方、電動シェーバーを選ぶ理由として大きいのが「深剃りできること」「肌にやさしいこと」「持ち運びや洗浄などの使いやすさ」だという。
つまり、日本の男性が求めているのは単純な「深剃り性能」だけではない。しっかりとヒゲを剃りながら、できるだけ肌への負担を抑えたいという、相反する要求なのである。ここで興味深いのが、日本市場を起点とした今回の開発アプローチだ。
P&Gによれば、ブラウンの本国であるドイツの開発チームは今回の製品開発にあたって実際に日本を訪問。消費者へのインタビューだけでなく、自宅を訪れてシェービングの習慣や悩みを確認するなど、日本の男性がどのようにシェーバーを使っているのかを細かく調査したという。その背景には、日本人特有の肌とヒゲの特徴がある。

「日本人は角質が薄い一方で、ヒゲは西洋人に比べて硬い」と江寺氏は説明する。そのため、海外の市場では高く評価されている製品でも、日本の消費者からは「もう少し深く剃りたい」「もう少し肌への負担を減らしたい」といった声が出てくることがある。
ここで重要なのは、NEVOが「日本人のためだけに作られたシェーバー」ということではない。むしろ、世界市場に向けた次世代の最上位モデルを開発するなかで、日本という市場を実際に調査し、そこから得られた生活者の声や気づきを本国の開発チームへフィードバックしたことに意味がある。
日本での調査は世界ブランドのブラウンが新しいシェーバーを考えるためのひとつの重要な材料になった。そして、そこで見えてきた大きなテーマが、「深剃り」と「肌へのやさしさ」の両立だったという。
この課題に対してブラウンが出した答えは、単純に刃を増やしたり、パワーを高めたりすることではなかった。肌に直接触れる部分そのものを見直すことだった。
「刃を増やす」から「摩擦を減らす」へ、サメ肌に着目したシルクタッチ網刃

電動シェーバーの進化というと、刃の枚数やカット性能、ヘッドの動きなどに目が向きがちだ。しかしNEVOでは、「肌へのやさしさ」を実現するために、肌に直接触れる網刃に着目した。それが世界初という「シルクタッチ網刃」である。

網刃の表面に微細な凹凸構造を設けることで、肌との摩擦を抑えるという発想だ。従来のように表面を均一に仕上げるのではなく、あえて微細な構造を持たせる。これにより、『シリーズ9 Pro+』と比較して肌への摩擦を24%低減したという。
この発想の着想源として江寺氏が説明したのが、サメの肌だ。サメの表面には微細な凹凸があり、それによって水の抵抗を抑えながら泳ぐことができる。この構造から着想を得て、肌との接触面に応用した。

説明会では、目玉焼きがこびりつきにくいフライパンの表面や、空気抵抗を抑える飛行機の構造なども例に挙げられた。いずれも「表面をただ滑らかにする」のではなく、微細な構造によって抵抗をコントロールするという考え方だ。
シェーバーの場合、その相手となるのは肌。だからこそ、肌に触れる網刃の摩擦を抑えることが、シェービング後のしわや突っ張り感を軽減しながら、深剃りを追求することにつながる。

もちろん、NEVOは肌へのやさしさだけを追求したモデルではない。PROスイング密着ヘッドや250枚のダイヤモンドカット内刃を採用し、肌下最大-0.12mmというブラウン史上最高峰の深剃り性能も掲げる。
つまり、「深く剃るために肌に負担をかける」のではなく、「深く剃ること」と「肌へのやさしさ」を別々の要素として考え、その両方を高めようとしている。ここに、NEVOという新しい最上位モデルの最大の特徴がある。
本体から洗浄器まで、毎日のシェービングそのものを見直した

NEVOの新しさは、網刃だけにとどまらない。本体には、世界初という医療用ステンレスを採用した一体型ボディを搭載。高い耐久性と質感を両立しながら、振動を抑えることで、朝のシェービング時の使い心地にも配慮した。
江寺氏は耐久性を説明するなかで、「トラックで踏んでも壊れない」というユニークな実験結果にも触れた。シェーバーにそこまでの強度が必要なのかと思うほどだが、それだけ本体の耐久性にブラウンが自信を持っているというエピソードともいえる。

さらに、毎日の使い勝手を左右する洗浄器も進化している。ブラウンが採用するアルコール洗浄器は、ボタンひとつで洗浄・乾燥・充電まで行えるワンボタン仕様。シェーバーを常に清潔な状態に保ち、「毎日、新品のような剃り心地」を目指している。ここでも日本市場での調査が生きている。欧米と比べて日本の洗面台はスペースが限られるケースが多いことから、洗浄器の接地面積を従来比10%削減。置き場所まで含めて、毎日の使用環境を考えた設計となっている。
こうして見ていくと、NEVOは単に「新しい刃を搭載したシェーバー」ではないことが分かる。日本での生活者調査によって見えてきた「硬いヒゲと繊細な肌」「限られた洗面スペース」といったリアルな使用環境。それを本国の開発チームが受け止め、グローバルな製品開発へフィードバックする。その過程で生まれたのが、摩擦を抑える網刃やステンレスボディ、コンパクトな洗浄器だった。
そして、ブラウンは今回の製品を「シルクシェーバー」という新しい言葉で表現した。約12年ぶりに登場したブラウンの新たなフラッグシップ。その誕生の背景にあったのは、「日本向けに特別な製品を作る」という発想ではない。世界のブラウンが次の最上位シェーバーを考えるなかで、日本の生活者と向き合い、そこで得られたリアルな気づきを開発へと戻していくプロセスだった。

だからこそNEVOが挑んでいるのは、日本人だけの課題ではない。「深く剃りたい。でも、肌にはやさしくありたい」。これはシェーバーを使う多くの人が抱える普遍的な願いでもある。刃の枚数を競うだけではなく、肌との摩擦そのものを見直す。そして、本体の素材や洗浄器まで含めて、毎日のシェービング体験を再設計する。「シルクシェーバー」という言葉が新しいカテゴリーとして定着するかどうかは、これからユーザーの肌と毎日のシェービングが答えを出していくことになるだろう。























