Omoinotake 藤井怜央に聞く、創作のヒントになる“聴き方” 「カッコいいと思える間口が広がっている」

Omoinotake藤井怜央の“聴き方”

 2021年にアニメ『ブルーピリオド』のオープニングテーマ「EVERBLUE」を含むEP『EVERBLUE』でメジャーデビューを果たしたスリーピースバンド・Omoinotake。

 今回は同バンドでボーカル兼コンポーザーを務める藤井怜央に、制作のヒントになる音楽の聴き方などについてインタビュー。オーストリアのウイーンを拠点とするオーディオブランド・Austrian Audioのヘッドホンとあわせて、自身の音楽遍歴や音楽を聴く際に気をつけていること、リスナーにオススメしたい音楽の聴き方などについて話を聞いた。(編集部)

「リビングか制作部屋かで、音楽を聴くときの集中の仕方は全然違う」

ーーまずは藤井さんのリスニング遍歴やルーツをお伺いできればと思います。元々銀杏BOYZがお好きだったというお話は伺っていますが、そこからどういう風にOmoinotakeの音楽性やスタイルにたどり着いたんでしょうか?

藤井:銀杏BOYZを経由してパンク〜メロコアを聴くようになり、そこからメタルやポストロックも経由しました。一方で、高校生くらいのときはMr.Childrenもめちゃくちゃ聴いていたりもしたんですよ。東京に出てきてからは、これまで聴いてきた音楽を元に3人で曲を作ってたんですけど、元々僕がドラムをやっていたこともあって、キーボード&ボーカルとしてメロディを担う楽器でアレンジをするのがすごく苦手でした。

 この3人の編成でどういうものが活きてくるかを考えたときに、当時「シティポップ」という言葉が流行り始めて。それをきっかけにして、ブラックミュージックを聴くようになっていったんです。ジャズを習っていたドラムのドラゲに先導してもらいつつ、ロバート・グラスパー周辺のミュージシャンを掘り下げたりしているなかで、この編成ならピアノとドラムとベースでも良いんじゃないかと思い、現在の音楽スタイルに移っていきました。

ーーメタルからポストロック、J-POP、ロックからのブラックミュージックと、いまに至るまでの紆余曲折がすごいですね。

藤井:そうですね(笑)。でも、いわゆる横ノリの音楽は全然聴いてきてなかった印象があって。小学生の時に聴いていた平井堅さんは、後から振り返れば自分にとってブラックミュージックの原体験に近いものだったんだなと思いました。

ーーOmoinotakeの音楽はグルーヴも良いのですが、最終的なメロの良さや歌の良さが強いからこそ、削ぎ落とした構成でも良い曲として聴けるものが多いなと思っていて。改めて話を聞いて、そういった多様なジャンルのバックグラウンドがないと、ああいった音楽は生みだせないんだろうと思いました。

藤井:音楽のジャンルを決定づけるのって、結局はメロディの下にどういうビートがあるかだと思うんですよね。逆を言えば、メロディさえ良ければビートは自分たちの好きなようにいくらでも変えれるんじゃないかと思って曲を作り続けていますね。

ーーメジャーデビュー以降注目が集まるなか、タイアップを含めて制約のある曲作りも多くなってきていると思います。そういった状況を乗り越えるために、新たに工夫し始めたことはありますか。

藤井:昔より自分自身が「カッコいい」と思える間口が広がってきている、というか、広げなきゃいけないなと感じることが増えました。その意識を持ち始めてからは、タイアップで「こういう曲が欲しい」と言われたときも、そのお題に対して自分が「カッコいい」と思えるものがどんなものかを探せるようになったような気がします。

ーー裏を返すと、最初は葛藤のようなものがあったということですか?

藤井:葛藤というよりは、得意なものと苦手なものがハッキリしていたんですよね。自分としては「切なめなものが得意で、元気でアッパーなものは苦手」という意識があったんですが、「元気」と一括りにしないで「こういうアプローチだったらカッコいいものが作れる」という風に捉え方が変わっていったことで、自分の曲作りの幅が広がったと思います。

ーーそうやって自分なりの正解を見つけてきたんですね。ちなみに明確に「ここ!」というタイミングはあるんですか?

藤井:この曲、と言われると難しいのですが、今回のEPに入っている「カエデ」はその感覚に近いですね。こんなド直球なバラードを作れるようになるとは思っていなかったので。

ーー音楽の聴き方についても伺いたいのですが、プライベートではどういうシチュエーションで「音楽を聴こう」となることが多いんですか?

藤井:家では楽曲制作をする部屋にPreSonusの『Eris』というスピーカーがあるのと、リビングにはJBLのBluetoothで繋げられるスピーカーがあって。リビングか制作部屋かで、音楽を聴くときの集中の仕方は全然違うんです。リビングではソファに寝そべりながら、ストリーミングサービスで自分が作ったプレイリストを全曲シャッフルで流したりして、「この曲いいな」と思ったものをチェックしておいて。制作部屋で曲を作るときにヘッドホンで改めて聴いて「こういう要素があるから良いと思ったんだな」と再確認しています。

ーー制作に向かう際やリファレンスを聴く際など、没入して聴くとき「ここは重視して聴く」と決めているポイントはありますか。

藤井:たとえば、いまの編成だとシンセサイザーの音をパソコン上で作って曲に加えたりすることも多いので、シンセの音色がいいなと思うときは、どういう音が鳴っているのかを集中して聴きますね。あとは、どういう手数でどういうビートが組まれているのかを聴いたり、ライブでパーカッションが参加することもあるので、タンバリンやトライアングルが楽曲をキュっと締めるためにどういう風に活きているのかを研究したり……。

ーーなるほど。リズムだけじゃなくシンセやパーカッションなど、ウワモノのアレンジに近い部分も集中して聴いているんですね。編曲については外部のアレンジャーに委ねていた時期もあったかと思うのですが、現在はどういった形なのでしょうか?

藤井:基本的にはまず自分がPC上でベーシックのリズム周りを組んで、そこにウワモノを足して完結するときもあれば、そこからアレンジャーの方にお願いすることもあります。ドラムのフィルなどはドラゲが全然違う形にしたりもするんですけど、基本的な流れはそういう感じですね。

まずは最高品質の音を体験できる『HI-X65』を試してもらった

ーー今回、藤井さんにはAustrian Audioのヘッドホンを体験してもらいました。オーストリアのウイーンを拠点とするAustrian Audioは、AKGに在籍していたスタッフを中心に創業された会社で、伝統的なAKGらしさをベースに、デザインや音響面では2022年現在のリスナーやテクノロジーにあわせた挑戦を続けています。試してもらった製品は『HI-X65』『HI-X60』『Hi-X25BT』『HI-X15』の4種類でしたが、どれが一番お気に入りでしたか?

藤井:僕、普段はスタジオ定番のヘッドフォンを使っているのですが、じつは開放型のヘッドホンを使ったことがこれまでなくて。今回『HI-X65』を試してみて、分離の感じがこれまで聴いてきたヘッドホンと全然違っていて……。すごく感動しました。ちょうど自分たちの新しいEP(『Dear DECADE,』)のMIXをしていた時期だったので、作品に収録する楽曲を4つのヘッドホンで聴いてみたり、今年のアルバムの中ですごく好きだった宇多田ヒカルさんの『BADモード』を聴いたのですが、歌の低音の成分がすごく近くにいるように感じられて、純粋に気持ちよかったですし、モニターにも採用しようと思います。

ーーオーバーイヤーモニターヘッドホンである『HI-X65』は、開放型のために設計されたドライバーを搭載していて、全高調波歪み(THD)値も0.1%未満という数値を記録するなど、低音がすごくよく聴こえる製品なんですよね。それこそ現在のOmoinotakeの基盤になっているブラックミュージックとの相性も良さそうです。

藤井:たしかに! あと、ピアノを中心に聴いていると、コードの一番上のトップノートまでクリアに聴こえてきたことにも感動しました。ピアノの一番上がどういう動きをしているかは、曲作りのうえでもカウンターメロディーのパートとして大事にしているので、そこがしっかり聴こえてくれると、作り手としては楽曲に込めた意図がちゃんと伝わってくれるように思えます。

ーートップノートや低音も含め、『HI-X65』の音はミックスチェックの際に日々重視している部分とばっちり合いますか?

藤井:そうですね。ただ、フラットに聴くという意味では、密閉型で綺麗にまとまっている『HI-X60』も良いなと思いました。クセがそんなにないので、モニターとしてはこっちでもチェックしたいなと。

続いて試聴したのは『HI-X60』。密閉型で音漏れも少ない一台。

ーー『HI-X60』は密閉型ということもあって音漏れも少ないですし、ボーカル録りにも適していると思います。ヒンジと弓はオールメタル製で、長持ちもするらしいですよ。

藤井:やっぱり長く使いたいですもんね。あと、長時間使えるような着け心地もいいなと思いました。

ーーちなみに、Bluetoothに対応している密閉型の『Hi-X25BT』はいかがでした?

藤井:普段はBluetoothヘッドホンで音楽をあまり聴かないのですが、ロー感もしっかりありましたし、思っていた数倍気持ち良かったですね。

『Hi-X25BT』はBluetoothで使える高音質のヘッドホンだ。

ーー『Hi-X25BT』はBluetoothでもアナログでも使えますし、充電しながらも使えるので利用用途としては幅広く使えるんです。

藤井:それはありがたいですね。あと、そもそもの話かもしれませんが、Bluetoothヘッドホンってこんなに便利なのだと気付かされました(笑)。

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