VTuberのタレント化&マルチプラットフォーム化が進んだ1年と、その先にあるものーー有識者たちによる座談会企画(前編)

VTuber、2022年の現在地を考える座談会(前編)

YouTube&Twitch以外のプラットフォームの発展が意味するもの

ゆがみん:つぎは僕が挙げた「多様なプラットフォームを跨いだ活動」について話したいんですが、ちょうど座談会がスタートするタイミングで「VTuberが2万人突破」というニュースが公開されていました。YouTubeやTwitchといった有名動画サイトだけでなく、いまではIRIAM、SHOWROOM、17LIVEでもVTuber・Vライバーが活動するようになっていますが、界隈のファンの方々ーーもっと言えばここに集まった3人は、そういったYouTubeやTwitch以外のプラットフォームも見ているのかな?と思ったのですが、どうですか?。

草野:ぼくはYouTubeとTwitchでの配信や動画を見るので精一杯ですね。IRIAMなどでの配信ってアーカイブは残らないんですよね?

ゆがみん:残らないんですよね。

森山:僕はVTuberではないイレギュラーな見方になるんですけど、REALITYでは夜職の女性が配信をしているのを多く見かける印象があるんです。そういった点から、自分にとってIRIAMで活動しているVTuberは「VTuberには興味はないけども、顔を出したくないから結局そうなっている」という人が少なくないのかなと。

たまごまご:それって「アバター化」という点でかなり成功しているのでは?

森山:その通りだと思います。

草野:配信者が増えたこともあり、やはりYouTubeやTwitchの配信だけで精一杯な視聴者が多いんでしょうね……。好きなVTuberが生配信していれば見に行くものの、終わりが見えないと途中で抜けることもありますし。あとは切り抜きを見て、面白かったらアーカイブ化されている本編配信を確認したり。

森山:自分も同じですね。

たまごまご:去年から今年にかけては「切り抜き動画」が特に注目された1年だったなと思うし、VTuberやストリーマーのようなプレイヤー側も切り抜き動画を見ているような状況にまで成長しましたよね。

ゆがみん:「あの切り抜き、見た?」といった会話が当たり前のようにされていますからね。

たまごまご:そう。なので「切り抜きありきの文化圏」にファンが沢山いるとして、そこで選ばれることができなければ、もはや外国の出来事のようになってしまう。

森山:IRIAM、 SHOWROOM、17LIVEで活動をスタートしても、YouTubeに後から参入してくるという流れもありますよね。「プラットフォームごとにポイントを稼いで賞金をゲットする!」みたいな形式もありますけど、うまくいかなければ手元のお金が厳しくなって、YouTubeに行くか、辞めてしまうかといったことになってしまう。

――17LIVEやIRIAMといったプラットフォームは、システムの運営・設計思想を考えれば「良い意味でメガインフルエンサーが生まれない」ような構造になっていると思います。YouTubeやTwitchは一定数の登録者が集まらないと使用できない機能がたくさんあったり、収益化の申請も通らないということもありますが、これらのプラットフォームでは20人ほどのファン数だったとしても、それぞれのロイヤリティが高ければしっかりと収益が得られるようになっていて「小さな経済圏」が形成されやすい。

 そのため、大量の視聴者を獲得することは、プライズを獲得するためのイベントで勝つことを目指すのでなければ、そこまで必要ではないのかなと思います。参加している方も、本業の合間に活動しているようなプレイヤーが少なくないので、良い意味でエンゲージメントに固執しないところもあるのかなと。

森山:なるほど、ご指摘ありがとうございます。

ゆがみん:リスナー側からすれば小さいコミュニティだと、強い結束力が生まれますし、タレント化・インフルエンサー化して「遠くに行かない」というメリットもありますよね。

たまごまご:それも大きいですよね。イベントで勝つといえば、IRIAMでは雑誌のコンプティークとのコラボイベントを毎月開催していて、1位の方が見開きページで掲載されますよね。ああいった形に残るものがあると、本人やファンにとっても嬉しいだろうなと思います。

草野:そこにも関わりますが、VTuberではない顔出しの配信者……ふつうの配信者を「ライバー」と名付けて集めるライバー事務所も多いですよね。大きなところだとベガプロモーション、321.inc、Nextwave、Licoreなどが該当しますが、これらの事務所に所属するタレントはIRIAMや17LIVEで活動していたりもするので、こういったタレントさんたちと同じ目線で「VTuber」が受容されつつあるのかなと感じた一年でもありました。

たまごまご:VTuberファンの視点からすると、ここまで「VTuber」という語と存在が当たり前に扱われるくらいまで広がったのはすごい浸透力だなと思いつつ、その一方でVTuberと普通の配信者の境界線もすっかり溶けてきたなあとも思います。

草野:「VTuberが2万人達成しました!」というニュースもありましたが、彼らのような存在から人気のYouTuberやTiktokerまで、配信者・ストリーマー・YouTuberまで含めたら、VTuberの人数は相対的にみればまだまだ少ないんだなと思います。

ゆがみん:単純に配信者・配信をするひとが増えた、というのも感じますね。ストリーマーとして100人ほど視聴者を集めているけども、「Live2Dで動けるアバターがあればいいよねー」なんて話をされる方もいるくらいですし。

森山:逆に「VTuberになれる!」的なオーディションだと、最初から素顔で配信している方もいますね。そのときに見ていた方がその後も見続けたとしたら、素顔もアニメルックのほうも知っているわけで、なんだか凄い時代になったなと思ったりします。

たまごまご:クラウドファンディングでお金を集めてLive 2Dや3Dモデルを作りたい!という流れも昔から続いていますし、それも含めると改めて色んな層に届いているなと実感します。

草野:ここまでのお話をギュッとまとめると、インフルエンサーからお小遣い稼ぎのレベルまで「VTuberになる」「Live 2Dを使う」ということが広まったーーある種「ポップ化」といっても良いレベルになったと。

森山:ポップになりすぎてるくらいですよ(笑)。数年前じゃホントに考えられないですね。

たまごまご:IRIAMなどで配信している方がYouTubeなどでアーカイブ動画があがるようになったりすれば良いですよね。ぼくは見てみたいですよ、どんな配信をしているのか気になりますから。

【後編へ続く】

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