場所にとらわれない映像制作フローが実現 富士フイルム・RED Digital Cinema・Camera to Cloud統合の意義

場所にとらわれない映像制作を実現するAdobe

 コロナ禍によってワークフローを大きく変えなければならなかったクリエイターは数多くいるが、なかでも打撃を受けたのが映像撮影・編集の現場だろう。

 撮影した素材は一旦物理メディアに保存してからPCなどのデバイスに転送しなければならないし、高品質で大容量のデータはオンラインにアップロードするのも大変で、業界によっては物理メディアのまま郵送・配送する必要があった。

 そのため、コロナ禍においては会社所属のクリエイターが自社に届いたものをわざわざ会社に取りに行ったり、配送トラブルに巻き込まれたりと、本来発生しないタスクに混乱させられることもしばしば。

 とはいえ、自宅での編集環境がある程度構築されてきた現在、コロナ禍が明けてもリモートで編集はしたいが、上記の面倒は避けたい……というクリエイターも少なくないだろう。

 そんななか、Adobeが映像向けクラウドサービス「Frame.io」のアップデートとして、富士フイルムとRED製カメラからのデータの直接アップロードに対応したと発表した。簡単にいえば、物理メディアを介さずに写真/映像データをクラウドから取得して編集作業に移ることができるということだ。

 これはFrame.ioの「Camera to Cloud」を活用し、2社のカメラに同機能を組み込むことで実現したもの。REDは『V-Raptor』と『V-Raptor XL』でにおいて、カメラから直接8K REDCODE RAWファイルをクラウドにアップロードできるようになる。富士フイルムの『X-H2S』は、RAWを含む静止画だけでなく、ProResやプロキシ動画ファイルのアップロードに対応。写真や動画を遠隔地のチームに送ってデータをレタッチするといったリモートのワークフローが実現する。

 また、Frame.ioはProResファイルを直接再生できるため、他の形式へのトランスコード工程を経ずにこれらのファイルを高品質な状態で表示・共有するだけでなく、編集まですることが可能に。フレーム単位で正確なProResプロキシで8K RAWを撮影した後に8K RAWを高速でアップロードし、次の工程に渡すことができるようになった。

 撮影直後にRAW映像が瞬時にバックアップされ、すぐに誰でも確認できる状態になり、ダウンロードや物理メディア配送の手配が不要になるというのは、映像業界においては大革命といってもいいだろう。

 オンラインでの編集については、ネットワークの問題など課題は少し残るところではある。現時点で8Kを扱うには高帯域幅のネットワークへ接続する必要があるなど、近年肥大化するファイルサイズに対して、インフラが対応しきれていないような部分もある。とはいえ、こういった機能が出てくるということは、いずれ8KやRAWファイルがクラウドで編集できる未来に期待してもいいだろう。

 こうしたアップデートはクリエイターも場所的・物理的制約からますます解放され、都会と地方、国内と海外を気にせず仕事ができたりと、さらに自由な働き方ができる第一歩になるだろう。、世界中のクリエイターにこれまで巡ってこなかったチャンスが訪れることにも繋がるはずだ。そういった観点からも、今回の発表は非常に意義のあるものだったように思う。

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