8人が歌い踊り、あらゆる「持ち色」を出し尽くしたーーにじさんじ『FANTASIA』振替公演初日レポート
「みんなで揃って活動することが多かったから、『文化祭』のコンセプトのように一緒に良いものを作ろうという気持ちになれた」
「1度延期を挟んだことで、より長く一緒に活動ができたので、それまで関わりの無い人もいたけども仲良くなれた」
アンコールを迎え、最終曲の手前という最後のMC。「ライブを振り返ってどうでしたか?」という樋口楓からの質問に、このように振り返ったメンバーもいた。その前後にも同じように、「この8人が揃って努力したことで産み出せるもの」について言及したメンバーがいた。
それは端的にいえば、「一体感」という言葉に置き換えられるだろう。その「一体感」は、この日のライブでは良いテンポ感や疾走していくような躍動感となり、見るものを魅了した。
2022年9月30日に開催された『にじさんじフェス2022』 ナイトステージにあたる『「FANTASIA」〈振替公演〉』の初日は、翌日から2日間に渡って開催される『にじさんじフェス2022』の前夜祭というポジションであると同時に、本来は1月22日・23日に開催される予定であった同名ライブの振替公演イベントとしてセッティングされたのだ。
公演中止という旨が発表されたこともあり、1月22日の初日に出演予定であった月ノ美兎、樋口楓、笹木咲、椎名唯華、戌亥とこ、夜見れな、相羽ういは、白雪巴の8人はいちど集まって配信もしている。
お絵描き伝言ゲームを笑ってプレイしたり、個人練習・リハーサルの裏話も含めた雑談で笑って話す8人。「リベンジが開催されるかは白紙状態」ということもあり、悔しさを心に秘めつつ会話しているのが伺える。
本当であれば、この時点で気づくべきだったのだ。この8人が、ファンや視聴者らが想像するよりも固い結束を結ぶほどに、「FANTASIA」に向けた猛練習をこなしていたのだと。
にじさんじにおける「ライブイベント」といえば、出演者当人の意向が強く反映されるということもあって、「やりたい曲を歌える場所」という印象がリスナーやファンにとっても強いであろう。
だが、この日の『FANTASIA』初日のライブを見終わり、ふっと我に返ってセットリストを見返したとき、なんとも言えないコンセプチュアルな印象を受ける方もいるはずだ。
/#FANTASIA_Day1 振替公演
【 ー セットリスト公開 ー 】
\本日の公演は無事終演いたしました。
ご覧いただいた皆様、ありがとうございました!明日は「にじフェス2022 Day1」開幕!!
▼ネット配信視聴チケット購入https://t.co/ew9NLIpTKi
※10月13日23:59まで販売#にじフェス2022_前夜祭 pic.twitter.com/FbkLkia2oZ— にじさんじ公式🌈🕒 (@nijisanji_app) September 30, 2022
セットリスト
1.Virtual to LIVE/全員
2.シンデレラ/笹木咲
3.Shocking Party/、樋口楓、相羽ういは、白雪巴
4.エライエライエライ!/椎名唯華、夜見れな
5.サクラあっぱれーしょん/月ノ美兎
6.イロドレ・ファッショニスタ!/樋口楓
7.アオノショウドウ/月ノ美兎、夜見れな、白雪巴
8.Mela!/戌亥とこ
9.トキヲ・ファンカ/戌亥とこ、白雪巴
10.虎視眈々/樋口楓、戌亥とこ
11.キミペディア/笹木咲、椎名唯華
12.強引 ni マイ Yeah~/月ノ美兎、樋口楓、笹木咲、椎名唯華
13.ヨワネハキ/椎名唯華
14.命ばっかり/月ノ美兎、樋口楓
15.ここで息をして/白雪巴
16.どりーみんチュチュ/相羽ういは、夜見れな
17.チクタク・Magica る・アイドルタイム!/夜見れな
18.ビバハピ/笹木咲、相羽ういは、戌亥とこ
19.CONVERSATION FANCY/相羽ういは、夜見れな、戌亥とこ、白雪巴
20.PUNCH☆MIND☆HAPPINESS/月ノ美兎、笹木咲、椎名唯華
アンコール
1.Hurrah!!/全員
2.Wonder NeverLand/全員
ボカロ曲、アイドルグループやアイドルアニメから届けてきたアイドルソングを中心にし、ベースとドラムが引っ張るグルーヴィな「ここで息をして」「ヨワネハキ」「Mela!」といった楽曲も備えたセットリストである。
樋口楓、戌亥とこ、白雪巴が出演するということは、少なくとも1曲か2曲は落ち着いたクールな楽曲やしっとりとしたスローテンポな曲がなかに挟まるかもしれない……そんな予想を裏切るように、明るい曲調かつグルーヴィな楽曲がズラっと揃い、ライブは終始テンポ良く進むことになった。
『FANTASIA』初日に出演した女性陣8人は、事前に話し合わせて選曲を揃えたのか? と思えるほどにリズミカルかつアップテンポな楽曲が揃え、ダンスに次ぐダンスでステージ上から溢れんばかりの躍動感を表現し、見る者すべてをアっといわせた。
本編は笹木咲、椎名唯華、月ノ美兎による「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」で終わったのだが、「次の曲を待とう」と観客が身構えていると照明が暗転して本編が終了。観客から少なからず驚きの声があがったのが印象的で、まさに「虚を突かれた」といった面持ちであったろう。
つまり、始まりから終わりまであまりにもテンポの良いステージングで「目を釘付けにしていた」「心を鷲掴みにしていた」ということ。それほどの完成度を誇るライブであったのだ。「好きな曲を出しあって好きに歌う」だけでは到達し得ない、ある種のコンセプチュアルさが浮き彫りとなった見事なステージであった。
先にも挙げた8人コラボ配信のなかでも、「ダンスの練習をめちゃくちゃした」と話ている。とはいえ、だ。彼女らが魅せたステージは想像以上に「ダンス激振り」なライブであり、むしろ「ダンスしていない曲」はあったろうか?と思い出すのが難しいほどでもある。
ソロライブやライブイベントなどではダンスにそこまで積極的でなかった樋口楓と戌亥とこの2人も、この日のライブでは簡単な振り付けではなく、ビシッと踊る姿を見せてくれたのは印象的であった。
上記の配信内で相羽ういはが「楓さんが頑張って踊っているのを見て泣きそうだった」と指摘すると、ほかのメンバーも同調している。「踊っているのがイメージに無い」であろう樋口楓が、ここまで振り付けとダンスを熱心に踊るのかと驚いたファンは多いであろう。
ちなみに同時刻にライブを同時視聴を配信していた星川サラとアルス・アルマルは、「Shocking Party」を披露した際に「楓さんがダンスしてる!?」と驚いていた。星川は「楓さん、アイドルステップができないって言ってたから、教えてあげたんだよね」と裏側を語っていたことも印象的だ。
そんな彼女にとっての今回のライブは印象的な変化であり、挑戦でもあったはず。親しい後輩らにとってもどれほどに意外かつ衝撃的だったか。
改めて考えてみれば、相羽ういは、夜見れな、月ノ美兎の3人はそれぞれバーチャルアイドル/アイドルマジシャンと自分を称しているし、さくゆいこと笹木と椎名の2人もいる。特に椎名はこれまでのライブイベントなどで側転している姿などをみせ、「踊れる」実力をみせていたわけで、この面々で「踊らない」という選択を取るほうが難しい。