2年ぶりに完全復活する『E3』リアル開催のテーマは“見本市からの脱却”?

『E3』リアル開催のテーマは“見本市からの脱却”?

『E3』に求められる“時代に合った進化”とは

 ゲームイベントのリアル開催をめぐっては、世界三大ゲームショウの一角『東京ゲームショウ』も話題を集めた。

 『E3』同様、2020年よりオンラインでの開催にとどまっていた同イベントも、2022年についてはリアル開催を復活。同年9月の『東京ゲームショウ2022』では、4日間の日程で約14万人の来場者を集めた。もうひとつの世界三大ゲームショウ『gamescom』もまた、2022年には3年ぶりにリアルでの開催を復活させている。ゲームイベントにも少しずつコロナ禍以前の活気が戻ってきている現状だ。

 一方で、ゲームの分野ではここ数年、メーカー発の新作情報番組の配信が慣例となりつつある。任天堂の『Nintendo Direct』、ソニーの『State of Play』、Microsoftの『Xbox Games Showcase』などはもちろんのこと、最近では各ソフトウェアメーカーも公式YouTubeチャンネルなどから熱心に新作情報を発信。フリークたちが最速かつ容易に情報を得る機会が生まれている。

 先に紹介した『東京ゲームショウ2022』においても、多くの新情報は、現地での発信ではなく、開催にあわせて配信となった各メーカーの番組でまとめて発表された。こうした状況を踏まえ、「ゲームイベントをリアル開催する意味はないのではないか」という意見も散見されている。

 私は以前執筆した『東京ゲームショウ2022』のレポートのなかで、「ゲームイベントをリアル開催する意義は、場の共有とセレンディピティにある」と述べた。しかしながらこれは、参加する選択の取れるイベント、つまり東京ゲームショウのような比較的身近なイベントにのみ当てはまる論理であり、かねてからオンラインで情報を得るのが当たり前だった『E3』『gamescom』には通用しないものと言えるだろう。

 はたして海外ゲームイベントのリアル開催は、日本のフリークたちにとって無関係な出来事なのだろうか。

 私はそうではないと考える。なぜなら、ゲームのマーケットは国ごとに独立したものではなく、シームレスにつながったものであるからだ。日本のフリークたちが東京ゲームショウに熱狂するのと同様に、『E3』『gamescom』でも現地に足を運ぶフリークたちが存在し、それぞれに熱狂する。イベントが盛り上がることで、業界全体が潤い、結果的に私たちも別の形でサービスを受け取ることにつながるのだ。

 もしすべてのゲームイベントがこの世からなくなったら。きっとゲーム業界は大幅にシュリンクするに違いない。コロナ禍での巣ごもり消費が追い風となったゲーム分野の正念場は、新たなスタートを切ったこれからと言っても過言ではない。

 そのうえで『E3』に求められるのは、時代に合った進化だ。形式張った見本市からの脱却、情報リークへの対応などはその一例である。前者について、『E3 2023』では、開催4日間のうちの2日をコンシューマーに開放するという。ビジネス色の強かった従来の立ち位置からの変化を期しているとも受け取れる変更だ。

 2022年の完全中止を経て、『E3 2023』は華々しい復活を遂げられるか。開催まで約9か月。さらなる続報を待ちたい。

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