YouTubeはクリエイターにどのように寄り添ってきたのか YouTube Japan担当者と振り返る15年間【前編】

YouTubeはクリエイターにどう寄り添ってきた?【前編】

コミュニティが成熟していくなかで生じた、コラボの加速&バーチャルクリエイターの隆盛

ーー特に最近、グループYouTuberを中心にコラボをうまく使っているクリエイターが増えてきている印象があります。

イネス:我々も、クリエイターさんに対しては、常にコラボの有用性について話していますし、例えば、コムドットさんやヘラヘラ三銃士さんといったクリエイターさんは、コラボをうまく取り入れて成長していった成功事例だと考えています。コラボが盛んになっている要因は、やはりコミュニティが成熟してきたのが大きいですね。第一世代から始まり、時代が進むごとに第二世代、第三世代と受け継がれてきた歴史を経ているからこそ、クリエイター同士が交流や情報交換をする土壌が整ってきて、縦横の繋がりが作れるようになりました。トップクリエイターも、初めのうちは自身の成長に手一杯だったのが、だんだんと後輩の育成や社会的な還元に目を向け、YouTube市場全体を考えてくださるようになったのも、とてもいい影響を与えていると思っています。

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ーーヒカキンさんやはじめしゃちょーさんなどのトップクリエイター自らが、早くからYouTuberの地位向上を目指して活動していますね。例えばeスポーツ・プロゲーマーというシーンでも、社会的な地位を確立するための努力が続いていますが、トップYouTuberの取り組みは事例としてとても参考になるのではと。

イネス:人間のパーセプションを変えるには、どうしても時間がかかってしまいます。繰り返し正しいことをする、社会的なイメージや地位を意識しながら行動する。このような意識を持っているクリエイターさんも増えてきていると感じています。

ーー最近のYouTubeクリエイターの動向を追っていると、コラボを積極的にやるのも、切磋琢磨しながら、シーン全体で上を目指していこう、という一体感があるようにも見えます。

イネス:そうですね。クリエイターコミュニティが成熟してくるにつれ、クリエイター自身の意識も変容してきていると考えています。海外と比べて、特にアジアの方はシャイな部分もあると思うのですが、時間とともにコミュニティが成熟し、クリエイターが同じような認識を持ち始めたことで、コラボが活性化してきたのでは捉えています。

ーー海外と比較したとき、日本のYouTubeクリエイターはどんな特徴を持っているのでしょうか。

イネス:やはりシャイな方が多いかもしれませんね(笑)。私自身、2012年から現職に就いてクリエイターさんと向き合うようになったのですが、そのころは日本国内のユーザーに焦点を置いたコンテンツを作るクリエイターさんがほとんどでした。最近でいうと、ジャンルによっては最初からグローバルを視野に入れたコンテンツを生み出しているクリエイターさんも登場してきていますが、そのきっかけになったのは韓国のK-POPや日本のアニメなど、アジアの文化がグローバルに知れ渡ってきたのが要因になっていると考えています。

 現に、バーチャルクリエイターという日本で生まれた独自の文化が海を越えて世界中で認知されるようになっていて、これは日本らしい「アニメのキャラクター」や「顔バレ・身バレしたくない」という要素などが“クリエイティブ”だと評価されたことで、一気に知名度が上がったわけです。今では海外にバーチャルクリエイターのコミュニティや会社が生まれたりしているので、今後このようなグローバルを視野に入れて活躍するようなクリエイターさんが出てくるのを期待しています。

ーーバーチャルクリエイターについては、日本の会社は先行者利益を取っている・取れていくという認識でしょうか?

イネス:バーチャルクリエイターというカルチャーについては、日本は間違いなく優位だと思います。バーチャルクリエイターは単にアニメ的なキャラクターで“中の人”が話すだけではなく、日本で培われたさまざまなものが複合したアートだと思うんです。そこには、コミュニティを動かす力だったり、ファンをエンゲージしていくためのノウハウだったりが存在しているわけで、日本を代表するようなにじさんじさんやホロライブさんのような事務所が何年も蓄積した知見は、そう簡単に外部の企業やクリエイターが真似できるようなものではないだろうと。日本のバーチャルクリエイターの中には、海外進出に向けて頑張っている方も多いので、そういった観点では日本発のバーチャルクリエイターという文化が世界的にもっと広がっていき、「日本といえばバーチャルクリエイター」と言われるようになってほしいなという願望があります。

ーーバーチャルクリエイターの隆盛には、日本独自のアイドルカルチャーも影響していそうですね。

イネス:そうですね。バーチャルクリエイターのファンは熱狂的なコミュニティを形成していて、結束力も高い。日本はファンダムが強い独特の国で、アイドルの推し活文化がその最たる例ですが、自分の手で応援しているアイドルやクリエイターを押し上げたいとする気持ちを強く持っているんです。今後も間違いなくバーチャルクリエイターは伸びていくと予測しています。

【後編に続く】

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