“おバカ人狼”こと『Feign』はどんなゲーム? 流行を機に振り返る、人狼系派生作品の歴史
“ある人狼ゲーム”がトレンド化の気配を見せている。そのタイトルの名は『Feign』。“おバカ人狼”の愛称で親しまれているPCゲームだ。
当初は同タイトルは独特の気軽さ・ゆるさなどから、ほかのゲームを遊んだあとの二次会的な役割で親しまれてきた。が、昨今、著名なゲーム番組や、配信者などにメインコンテンツとして取り上げられ、注目度が増しているという。
『Feign』とは、いったいどのようなゲームなのか。同タイトルのブレイクを入り口に、人狼ゲームのおおまかな歴史、主要な人狼系派生作品をまとめていく。
気軽さと、ゆるさと、少しの複雑さ。“おバカ人狼”の名で親しまれる『Feign』とは?
『Feign(フェイン)』は、トルコの独立系スタジオ・Teneke Kafalar Studiosが開発・発売する人狼ゲームだ。プレイヤーは、「イノセント(村人)」「インポスター(狼)」「ニュートラル(中立)」の3陣営にわかれ、それぞれの勝利条件を満たすべく、議論・推理を進めていく。
一般的な人狼ゲームと異なるのは、すべてのイノセント・インポスターに個別に役職が割り振られる点、ニュートラルにも役職別に異なった勝利条件が与えられる点だ。このことが「簡素なビジュアル×人狼」という至って普通のゲームデザインを持つ同タイトルに、独自の遊び心をもたらしている。
また、イノセントに一定確率で現れる特別な役職「バカ」も『Feign』独自の要素だ。同職は与えられた能力を正しく行使できず、そもそも実行できなかったり、実行できても誤った結果になってしまうという、ちょっとかわいそうなロール。本人も自分が「バカ」であることがわからないため、ほかのプレイヤーとの意見交換を通じて、ほかに「バカ」がいるのか、それとも自分が「バカ」なのか、はたまたこのゲームに「バカ」は存在しない(複数存在する)のかを見定めていく必要がある。
人狼ゲームはこれまで、「村人vs狼」というシンプルな対立構図によって幅広いプレイヤーに受け入れられてきた。そうしたゲーム性が浸透しているからこそ、今日では少し複雑さを増したシステムが求められつつあるのだろう。「バカ」の存在は、同ジャンルのタイトルに等しく横たわるプレイヤー間の軋轢をマイルドにする役割も担っている。内包する気軽さとゆるさ、独自の遊び心によって支持を広げているタイトル、それが『Feign』である。
定期的に訪れる人狼系派生作品のトレンド。主要3作品をあらためて紹介
テーブルゲームにルーツを持つ人狼は現代に至る長い歴史のなかで、カード化、デジタル化などを経て、すっかり定番のゲームカテゴリのひとつに数えられるようになった。同ゲームが浸透する世界中の地域では、「村に紛れ込み、村人を騙る狼を暴き出す」という基本ルールを根幹に、枝葉の部分にさまざまなアレンジを加え、さらに魅力的なゲームへと変化してきた経緯がある。その過程に、「スマートフォンへの移植」という分岐点があったのは間違いない。日本国内では、『人狼 ジャッジメント』や『人狼殺』などのスマホタイトルが登場し、流行した。
その一方で、一定の浸透を果たしてからは、別ジャンルとの融合によっても存在感を示している。さまざまな派生作品のトレンド化なしで、人狼ゲームの歴史を語ることはできないだろう。『Feign』が「(どちらかといえば)オーソドックスな進化を果たした人狼ゲーム」であることを踏まえたうえで、本稿ではあえてムーブメントを巻き起こしてきた派生作品たちにスポットを当てる。
アクションとの融合で、バレても大丈夫なスタイルを確立。『Project Winter』の特異なゲーム性
最初に紹介するのは、「雪山人狼」の別名で知られる『Project Winter』だ。2019年5月、Steam向けにリリースされた同タイトルは、人狼ゲームにサバイバルアクションを融合させたゲーム性が話題となり、PCプラットフォームのみでの提供(当時)でありながら、一躍トレンドのタイトルとなった。2021年には満を持して、家庭用ゲーム機(PS4/Nintendo Switch/Xbox)へと移植。再び話題を集めたことは記憶に新しいはずだ。
『Project Winter』のゲーム性における新しさは、言葉によるやりとりのみで勝利が決まらない点にある。本来「狼を突き止めること」が目的だった人狼ゲームにおいて、自身が狼であると発覚してもプレイヤーのアクションスキルによって結果がどちらにも転ぶ可能性があることは、新しい同ジャンルの楽しみ方を見せてくれた。実際に手に取ったプレイヤーのなかには、人狼ゲームに興味があるものの、言葉によるやりとりのハードルが高く、なかなか挑戦できずにいた層もいただろう。その意味において、『Project Winter』は人狼ゲームの可能性を広げた作品だったと言えるのではないだろうか。
「人狼×アドベンチャー」で異色のゲーム体験を提供する『グノーシア』
人狼系の派生作品を扱うならば、『グノーシア』も紹介しておかなくてはならない。同タイトルは2019年、PlayStation Vita向けにリリースされたシングルプレイ専用のアドベンチャーゲーム。シナリオやゲームシステムに人狼的要素を盛り込み、その斬新なプレイ感が人狼ゲームのファンだけでなく、幅広い層に評価された。2020年にはNintendo Switchに、2022年にはSteamにも移植されている。
『Project Winter』が「人狼ゲーム(メイン)+アクション(サブ)」という構図の作品だとすると、『グノーシア』は「アドベンチャーゲーム(メイン)+人狼ゲーム(サブ)」の構図を持つ作品だと言えるだろう。そのため、人によっては、人狼系の派生作品とすることに抵抗を感じるかもしれない。同様の構図を持つ作品には2015年、スマートフォン向けにリリースされた『レイジングループ』があるが、設定にのみ人狼の要素を取り込んだ同作と比較すると、人狼的選択によって膨大な枝分かれが存在する『グノーシア』は、「より人狼ゲームの色が濃いアドベンチャー」に分類できる。同タイトルの登場と成功により、人狼ゲームはさらに裾野を広げていった面もあるに違いない。