人狼ゲーム『Among Us』はなぜ人気タイトルに？　開発者「あくまでも新要素はオプション」

　「Amang US」は集団の中に紛れ込んだ裏切り者をディスカッションで見つけ出す、いわゆる「人狼ゲーム」の一種である。舞台は宇宙船、プレイヤーは宇宙船の乗組員＝クルーであるが、このなかには数名の裏切り者＝インポスターが紛れている。インポスターの目的はクルーの殺害であり、船内でトラブルを起こし暗躍する。クルーはインポスターの仕組むトラブルを解決しながら、ボイスチャットによる議論フェイズを経て裏切り者を探していく。

　シンプルなルールと手軽さが魅力であり、ゲーム配信なども多く行われているゲームだが、同作はどのようにして人気作の仲間入りを果たしたのか？今作の開発秘話や人気になるまでの過程を、YouTubeに投稿された動画「The Making of Among Us」のなかで開発会社「Innersloth」のメンバーが振り返っている。

　「Innnersloth」を立ち上げたMarcus Bromander氏によれば、『Among Us』のアイデアは映画『遊星からの物体X』から産まれたという。生物に擬態する能力を持った宇宙生物が南極大陸に飛来、大陸に閉じ込められた12人の観測隊の1人に成り代わってしまう。誰が人間で誰が宇宙生物かわからないという状況下で、隊員たちは疑心暗鬼に陥るというSFホラー映画だ。

　ゲームのルールは「Assasin」というゲームを参考にしたとのことだ。これはアメリカの大学生の間で流行したゲームで、照明を落として暗くした家の中を歩き回り、プレイヤーを暗殺して回るアサシン役を見つけ出すのが目的だ。暗殺されたプレイヤーはその場で死んだ振りを続け、生存者が死体を発見すると全員が集まって会議が開かれる。

　プログラムを担当したForest Willard氏は、「Assasinは楽しいゲームなんだけど、場所を用意するのが大変だったり、家の構造がゲームに向いていないとつまらなかったり、遊ぶ準備が大変なんだよね」と語り、それを手軽に出来るようにしようと考えたことが『Among Us』誕生のきっかけだったとのことだ。

　『Among Us』の人気に火が着いたのは、当時100人ほどにしか知られていなかった同作を9万人のチャンネル登録者数を持つYouTuberが紹介した頃からだ。その効果は絶大で、プレイヤーの総数は1万人ほど増えたとのこと。そこからブラジルの人気YouTuber「Godenot」（チャンネル登録者数393万人）が『Among Us』の実況プレイを配信したことで更に広まった。

　Innerslothのメンバーは『Among Us』の主要なアップデートを終えたのち、「そろそろ次のゲームを作ろうか」と考えていたそうだが、彼らの思惑に反して『Among Us』は盛り上がり続けた。Twitchで約870万人のフォロワー数を誇る最大手配信者「Sodapoppin」が同作をプレイするなど、ゲーム実況者の間で一大ブームとなり、多くの配信者や動画投稿者がこぞって『Among Us』をプレイするようになったのだ。

　その後2020年の11月には月間アクティブプレイヤー数が5億人に達するなど記録的な人気に至る。この頃にはInnnerslothのメンバーも「これは次のゲームを作ろうなどと言ってる場合ではない」と方針を転換することにしたそうだ。

　現在の『Among Us』ではクルーに新たなロールが実装されており、生存者の確認が行える「科学者」や、死亡後に生存しているクルーをインポスターの魔の手から護衛することが可能な「守護天使」、別のプレイヤーに擬態することが可能なインポスターである「シェイプシフター」などが追加され、より多様な人狼ゲームを楽しめるようにになっている。

　こうしたアップデートについてBromander氏は「新しい要素はどんどん追加したいけど、初期のシンプルなAmong Usが好きな人をないがしろにしたくはないんだ。だから、あくまでも新要素はオプションとして用意している」と語り、プレイヤーに寄り添う姿勢を崩さない。

　小さな規模だったInnerslothの面々は、大ヒットを経ても根っこでは変わらぬままだ。『Among Us』で得た知名度や資金を振るえば、大きなプロジェクトを動かすことも可能だが、彼らはあくまでも謙虚な姿勢でゲーム開発に向き合っている。こうした姿勢がゲームのアップデートにも現れ、『Among Us』を一過性のブームから定番ゲームに仲間入りさせたのであろう。Innerslothの次回作はもちろん、今後の『Among Us』のアップデートも楽しみにしたい。

〈Source〉 https://www.youtube.com/watch?v=IEBtB-WXaIY