人狼系アドベンチャー『Among Us』はなぜヒット? 2020年を代表するインディーゲームの“カジュアルさ”に潜む中毒性

『Among Us』なぜ今年のヒット作に?

 リリースから2年近くが経った今年、大ブレイクを果たしたインディーゲームがある。宇宙船を舞台にした人狼系アドベンチャー『Among Us』だ。同タイトルは2020年中頃より全世界で注目を集め始め、プレイヤーの口コミやYouTuberの配信などを契機に話題の作品となっていった。9月には同時接続数150万人の快挙を成し遂げている。

 『Among Us』の魅力とは、いったいどのような点にあるのだろうか。本稿では、2020年を代表するインディーゲームがシーンに受け入れられた理由へと迫っていく。

“乗組員 vs 人に化けた怪物” 宇宙船を舞台にした人狼系アドベンチャー『Among Us』

Among Us Steam Release Trailer

 『Among Us(アマングアス)』は、4~10人のプレイヤーが宇宙船のクルーとなり、自船の修理タスクの完遂、あるいは敵対者の全追放を目指す“人狼系”アドベンチャーだ。

 『人狼』とは、チームに潜む裏切り者の捜索と処刑を目的としたテーブルゲームのこと。そこから派生して、同様の特性を持つタイトルを指す1ジャンルとしても扱われる。『Among Us』では、クルーの中に「Impostor(インポスター)」と呼ばれる邪魔者が紛れ込んでおり、正常な乗組員(Crewmate:クルーメイト)たちは彼らの妨害を掻い潜りながら、目的の達成を狙っていく。一方でImpostor側は、酸素の遮断やメルトダウンといった致命的なエラーの誘発、またはクルー殺害によるPP(パワープレイの略。正常なメンバーを自陣営以下の人数とすること)でマッチに勝利できる。両陣営が駆け引きを繰り返しながら、求められる行動を積み重ねていくゲーム。それが『Among Us』だ。

カジュアルなゲーム性に潜む『Among Us』の中毒性

 『Among Us』の魅力を考えるとき、必ず触れておかなければならないのが人狼系ゲームが持つ普遍のおもしろさについてだ。

 先述のとおり、もともとテーブルゲームの1タイトルだった『人狼』は、心理戦をテーマにしたゲーム性と、プレイするごとに変わる予想できない展開の楽しさなどにより、あっという間にジャンルとして確立され、トレンドの一角を担うほどの地位を築き上げた。誰もが扱える「言葉」をツールとするため、ゲームの操作が苦手でもプレイしやすく、ボイスチャットやテキストチャットといったインターフェースや枝葉の設計の違いで、また新しい駆け引きが生まれることも醍醐味となっている。

 しかしながら、オリジナルのテーブルゲームでは、細かなルールや定石を覚えなければ、そのおもしろさを満喫できず、ゆえに『人狼』に対して、敷居の高さや苦手意識を感じている人も少なくない。特有の難しさが数少ない欠点となっているのだ。

 『Among Us』はカジュアルなゲーム性により、この問題点を解決する。人狼系ゲームが持つおもしろさを維持した上で、ネックとなっていた難しさをとことん排除している点が同タイトルが支持される理由に違いない。

 たとえば、修理タスクはクリア方法が感覚的にわかるよう設計されており、1つにかかる時間も数秒程度と短い。Impostor側による殺害もワンタッチでおこなえるため、どんなプレイヤーにも特別な技術が求められることはないだろう。

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