放送コードギリギリのお笑い男女コンビ「ニッキューナナ」がTikTok、YouTubeで人気の理由
退屈な日常に刺激が欲しい人に「ニッキューナナ」というお笑い芸人をおすすめしたい。マセキ芸能社所属の峯シンジとこっちゃん選手からなる男女コンビで、YouTubeやTikTokで若者を中心に人気を博している。
ニッキューナナの特徴を一言で言えば「振り切った下ネタ」。下ネタを扱うコンビは数あるが、男女コンビでそれのみに特化している芸人はニッキューナナをおいて他にはいないだろう。その実力は確かなものでABEMAの人気番組「シモネタGP2021」で準優勝という成績を残すなど単に物珍しいだけのコンビではない。YouTubeチャンネルにアップされている動画タイトルを見てもらうと分かるようにその9割に「伏せ字」が入っている。外した瞬間に一発でアカウント停止待ったなし、それほどまでに徹底的に下ネタにこだわるコンビなのだ。
下ネタというのはウケた時の爆発力はとんでもないものがあるが、一歩間違えれば観ている人間に強烈な不快感を与えかねない諸刃の剣だ。2018年放送された『ゴッドタン』(テレビ東京系)の企画「この若手知ってんのか!?」出演時は「今の時代に真っ向から逆らうセクハラコント」と評され、劇団ひとりやおぎやはぎなどのMC陣が引いてしまうほどエグみのあるネタを披露していたのだが、今のニッキューナナはエロと面白さを見事に両立させその諸刃の剣を完璧に使いこなしていた。ギリギリを突く着眼点と表現力は、若手芸人の中でもトップクラスだと言える。
コント「『あなたの一番心に残るA◎はなんですか』っていう番組」では番組MCに扮したこっちゃん選手と若手俳優に扮した峯シンジが、まるで『NHKスペシャル』『クローズアップ現代』『SWITCHインタビュー 達人達』のような雰囲気を醸し出しながらただひたすら成人向けビデオの話するというネタなのだが、アナウンサーを意識した腹式呼吸での発声で淡々と内容を深堀りするこっちゃん選手と、まるで名作映画の演技論を語っているかのような真面目なトーンで語る峯シンジの謎のリアリティがよりギャップを生み出している。
中でも個人的に一番の名作だと思うのがコント「持ってたA○のタイトル読み上げさせる妻」だ。夫(峯シンジ)の留守中に成人向けビデオを発見した妻(こっちゃん選手)が夫を詰めていくネタなのだが、男としてのプライドが一番崩壊する方法をチョイスしながら夫を詰めていくこっちゃん選手のキレ演技と、恥ずかしさと申し訳無さが絶妙にミックスした表情でタイトルを読み上げる峯シンジの表情、そして「タイトルが異常に長くて恥ずかしい」「観ていることがパートナーにバレるのは浮気ではないが後ろめたさはある」というギリギリのラインを攻めた着眼点のあるあるは秀逸の一言に尽きる。このように一つひとつのネタが、くだらなさと完成度の両方を兼ね備えたとんでもないクオリティでもって成立しているのだ。