アラサー世代を夢中にさせた『ロックマンエグゼ』の魅力  『アドバンスドコレクション』発表を機に振り返る

改めて振り返る『ロックマンエグゼ』の魅力

奥深く、それでいて親しみやすかった『ロックマンエグゼ』

 「エグゼ」と「ロックマン」との最大の違いは、アクションからRPGへと遊び方が変わった”ことである。仕掛けや雑魚キャラをはねのけてステージ攻略に挑む従来シリーズと異なり、「エグゼ」は3(縦)×6(横)のマス目で区切られたバトルフィールドが主戦場となる。プレイヤーは雑魚キャラ(インターネットウイルス)やボス(ネットナビ)と対戦する際、特殊能力を付与する「バトルチップ」を選択し、フィールドに降り立ったロックマンへデータを転送。送られたチップデータを電脳空間のロックマンが受け取り、腕に備えた「ロックバスター」と並用しながら攻撃を仕掛け、相手の体力を削りきった時点で勝利が確定する。

 「カードバトルの戦略性とアクションの楽しさが融合した」とカプコン公式サイトにある通り、バトルチップの組み合わせ&属性間の相性等も考慮して戦う、それまでの「ロックマン」シリーズの本質を共有しながらも、テイストの異なる遊び方が提示された。とりわけ大きく盛り上がったのが対戦プレイで、互いの思考とフォルダ(カードゲームのデッキに相当)を読み合ってバトルチップを使い分ける緊張感と高揚感は随一であり、実際にカプコンが運営する公式大会(サバイバルネットバトル等)も「エグゼ」シリーズ初期の段階から大いに盛り上がっていた。インディーゲーム事情に明るい方なら、同シリーズに影響を受けたクリエイター陣による作品『One Step From Eden』の存在もご存知ではないだろうか。

 戦略的な駆け引きが楽しめるゲームシステムのほかにも、筆者としては”世界観が馴染みやすかった”点も見逃せない。「エグゼ」シリーズではネットワーク技術が普及して便利な反面、電脳空間で違法行為に走る不届き者がはびこっており、『ロックマンエグゼ』序盤でも、主人公宅の電子レンジに犯罪集団のネットナビ「ファイアーマン」が侵入、暴走事故を誘発している。”良心あるロボットが各地に赴いて暴走ロボットを食い止める”従来シリーズとは対照的に、”悪事を働くネットナビによって日常空間に影が忍び寄る”という「エグゼ」シリーズは、作中で生じた異変がどこか自分ごととして捉えやすかったのかもしれない。

 また、小学5年生ながらもウイルスバスティングを得意とし、相棒のロックマンと一緒に様々な事件に立ち向かい、おまけに運動神経も抜群、可愛い幼なじみ「桜井メイル」にも慕われる光熱斗は非常に羨ましい……もとい、同年代の頼れるヒーローでもあった。彼とロックマンが織りなす友情のみならず、子供から大人まで巻き込んで繰り広げられる重層的なストーリーは、「エグゼ」シリーズが内包する際立った魅力と言えるだろう。

ロックマンエグゼ 第1話「プラグイン!ロックマン!」【公式アニメch アニメログ】

 『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』が発表され、16年近い時を越えてファンを沸かせた「エグゼ」シリーズ。テレビアニメ版や公式コミカライズ、関連玩具(PET・ロックマンキューブ)等々、語りたい話題がまだまだ尽きないものの、冗長になりかねないため今回は割愛させていただく。今はひとまず、シリーズ全体の続報に期待を寄せながら2023年の発売を心待ちにしておこう。

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