イスラエル、「空からの脅威」を消し去るレーザー兵器を開発

イスラエルがレーザー兵器を開発

 20年にわたる研究と実験の末、イスラエルの防衛当局は、飛行中のロケット弾、迫撃砲弾、ドローン、対戦車ミサイルを迎撃できる高出力レーザー兵器「アイアンビーム」の実用的なプロトタイプが完成したと発表した。

 イスラエル南部の砂漠で最近行われた一連の実射テストで、このレーザー兵器はロケット弾、迫撃砲弾、ドローンを破壊し、スクリーンでその様子を見ていた関係者からスタンディングオベーションを受けた。

 従来の小型の誘導ミサイルを発射し、飛来物を迎撃するシステムに対し、新兵器は飛来物の特定の場所にレーザー光線を照射し、破壊するまで加熱する。

 このシステムの開発に携わった専門家によると、現場で完全に使用できるようになるにはまだ数年かかり、完成したとしても最初は激しいロケットの飛来からイスラエルを守るには限界があるかもしれないと警告している。

 レバノンのシーア派イスラム主義の政治組織「ヒズボラ」が開発しているという精密誘導ミサイルに対して有効かどうかについては言及されていない。

 レーザー兵器の探求には、失敗と挫折の歴史があった。

 1983年、米国のロナルド・レーガン大統領は、レーザー技術を含む核弾道ミサイルを撃墜する方法を見つけるために、『スターウォーズ』と揶揄される戦略的防衛構想(Strategic Defense Initiative)を立てた。2000億ドル以上を費やしたが、ほとんど成果がなかったため、この計画は1993年に中止された。

 研究は他の計画で続けられた。1990年代後半、イスラエルと米国は、飛行中のロケットを破壊することを目的とした高エネルギー・レーザー・システムの実験的製作を試みた。「ノーチラス」として知られるこの計画は、システムの大きさと性能の低さのため、2005年に中止になった。

 イスラエル政府関係者は、アイアンビームの主な利点にコストを挙げている。展開済みの防空システム「アイアンドーム」の迎撃にかかる費用が1発数万ドルであるのに対し、アイアンビームは1発約3.5ドルだ。

 しかし、開発者たちは、レーザー兵器の効果は天候に左右されやすいと指摘する。レーザー光線は霞や曇りの状態では効果を発揮しない。イスラエルは雲の上の脅威を迎撃できる空中高出力レーザーの開発に取り組んでいるが、開発には何年もかかると考えられる。

 宇宙とミサイルの専門家で、米国の超党派組織Missile Defense Advocacy Alliance(ミサイル防衛擁護同盟)の上級研究員であるタル・インバーは、複数の脅威に弱い点も指摘する。複数の迎撃ミサイルを同時に発射してそれぞれがターゲットを見つけることができるアイアンドームとは異なり、アイアンビームは1つのターゲットに集中してから別のターゲットに集中する。そのため、複数の脅威に備えるには多くのシステムの配備を要する。

 実用化には、まだまだ課題が残るようだ。

(画像=Twitterより)

〈Source〉
https://www.nytimes.com/2022/06/03/world/middleeast/israel-laser-rockets.html

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