バリキャリ女子が“結婚したくない男”を落とせない理由 『結婚してとうるさくて』で描かれるアラサーの受難
結婚に謎の焦りを抱く女性と、結婚に謎の嫌悪を抱く男性。この溝は永遠に埋まらないのだろうか。29歳、結婚したくなさすぎるけど、恋愛っぽいことは続けていたいゆるふわ系男子・知也(栁俊太郎)を取り巻く恋模様を描くABEMAの『結婚してとうるさくて』。
第2話に登場したのは、1話登場の「家庭的な女」とは真逆ともいえる「バリキャリ女子」。女性の結婚したい気持ちに、キャリアなんて関係ない。でもなぜ、自ら稼ぎキャリアを追求する女性も「結婚して」とうるさく考えてしまうのだろうか。
周りから持たれるイメージや重圧との戦いは、自立した女性の宿命
弁護士とインフルエンサーの二足のわらじで、自立したバリキャリ女子として活躍している梨沙子(山本千尋)。広告系クリエイターでそれなりに弁の立つ知也を目の前にしても、引けを取らない会話力と頭の回転力。結婚など追求しなくても、1人で強く生きていけそうにも見える。
しかし、梨沙子が戦っているのはその”1人でも強く生きていけそう”というイメ―ジそのものなのかもしれない。1人で乗るタクシーの中で「なんで30過ぎると、結婚してないだけで人間的に欠陥ありそうに見えちゃうんだろう。ただ選択的に結婚を選んでこなかっただけなのに」とひとり愚痴をこぼす。キャリアがあり頭も良く、自分で稼ぐことができるからこそ「そのくせ、なんで結婚できないの?」という周りからの重圧も重くのしかかる。
社会人としてある程度働き続けていれば、マナーの範囲で身なりも整えるようになるし、初対面の人と話すのだって得意になっていく。もしかしたら梨沙子も、特に「キャリアを追求したい」と思っているわけではないのかもしれないが、キャリアなんて年齢とともに積み重なっていくもの。いつのまにか周りから「バリキャリ」なんて呼ばれるようになるのだ。
ただ生きていただけなのに。それなりにきれいに、それなりに大人っぽく、それなりに働いているだけで、なんとなくついてきてしまうバリキャリ女子の称号。もうすでに結婚して子育てをする女友達からも「キラキラ働いていてすごいよね」なんて言われたりしたことがある社会人女性も、少なくないのではないだろうか。バリキャリ女子とは、周りから勝手に”なんでも持っているくせに、なぜか結婚できない痛い女”といういらないイメージまでセットで持たれる、難しい肩書なのである。
一方で、早めに結婚した女友達と比べれば自分の働き方に自信だってついてくる。自分ひとりで生きていけないわけじゃないと思うからこそ、家庭的な女性と比べて素直になれない部分もあるのが、梨沙子のような自立した女性のつらいところだ。
1話で登場した家庭的な女・まりえと比べると、知也とのデート中も「スマート風」を装ってしまう梨沙子。心の中には「でもやっぱり結婚したい」という女性らしいいじらしさも持っているのに、知也の前ではあくまで強がって、傷ついていないふり。だからこそこういう女性はたまに、恋愛ではコミュニケーション方法を間違えることもある。