『Weekly Virtual News』(2022年3月14日号)
メタバースの話題に事欠かない中で、不意に現れた鳩羽つぐ――目の前にあるものは「事業」か「存在」か
VR空間で撮影した写真を対象としたアワード『VR写真大賞2022』の結果が発表された。昨年に続きの開催となるこのアワードは、VR文化を一般に向けて発信することを目的としている。今年のテーマは「アフターコロナ」で、実に1600点を超える作品が投稿された。
受賞作品を発表するだけでなく、展示会場も「VRChat」にて公開された(※1)。参加作品がおよそ全て展示された光景は壮観だ。そして、会場のキャパシティから写真の掲載枚数を決めるのではなく、写真の掲載枚数から会場を構築できるのは、メタバースならではの強みだろう。協賛の日本赤十字社の出展も興味深いので、興味のある方はぜひ訪れてみてほしい。
アバターと同様に、人気のワールド制作者も一定数いる。3月12日には、「VRChat」の人気ワールド制作者・Fins氏の最新作「District Roboto」が公開された(※2)。人類が姿を消し、ロボットと猫だけが暮らすという設定の街は、退廃感を醸しつつも、どこか穏やかだ。ワールド内にはNPCのロボットたちもいるが、それぞれに個性があり、どこか愛嬌も感じさせる。細部まで作り込まれ、住人の存在も感じさせる空間は魅力的だ。
コトブキヤ、と聞けばフィギュアやプラモデルを連想する人もいるだろうが、昨今ではアバター向け3Dモデルの制作に取り組んでいる。3月10日に発売された「サバンナストリート ワイルドキャットコーデ」は、同社のハイエンドアバターブランドの第1弾商品となる。筆者も「VRChat」にて使ってみたが、豊富なギミックと造形美には舌を巻いた。コトブキヤ以外にも、法人制作のアバター向け3Dモデルの制作事例は着実に増えており、個人クリエイターとともにアバター市場を賑わせていくだろう。
アバターの繰り手もまた重要な存在だと思わされるイベントがあった。3月12日に「VRChat」にて開催された3Dモデルのファッションショー『Virtual Collection』だ。現実のファッションショーさながらにランウェイを歩くアバターたちは、動きだけでチャームポイントが余すことなく引き出されていた。「アバターの魅力を身体で表現する」という技能は、魅力的なアバターの発信に欠かせないものとなるだろう。そして、これほどのイベントが有志開催である点に、UGC文化の底力も感じさせる。
株式会社HIKKYは、JR東日本とともに、秋葉原駅をモチーフにしたメタバース「Virtual AKIBA World」を発表した。同社の独自開発バーチャル空間プラットフォーム「Vket Cloud」に展開するため、「VRChat」にて開催されてきた「バーチャルマーケット」と異なり、スマートフォンからでもアクセスできる点が特徴だ。アクセスが手軽なので、多くの人が訪れうる「メタバース・ステーション」は、新たなビジネスを作り出す場になり得るだろう。「Virtual AKIBA World」は、3月25日にオープン予定だ。
ホロライブを運営するカバー株式会社は、昨今はホロライブのメタバースプロジェクト『ホロアース』を発表し、メタバースへの注力も始めている。3月11日には、この「ホロアース」の検証テストが告知された。今回のテストではシンプルなロビー機能が用意され、負荷検証などが行われる。「ホロアース」はまだ方向性が不明瞭だが、バーチャルタレントを軸としたメタバースは、既存のメタバースとはまた異なる客層を作り出すだろう。
さて、ここまでの流れを切るような質問をひとつ投げかけてみよう。
あなたは、鳩羽つぐをご存知だろうか?